【平成最後の日本帰省4】日豊線の超絶電車と宗太郎駅


【作者謹告】今回のお話、50枚ほどの大量の写真があります。その中には私が撮影した以外の写真・動画が含まれます。それらには撮影者が明記されてますが、その撮影者様、もしくは私も著作権は放棄しておりませんので、無断転載等はお控えください。

 

大分の実家に到着。11月の三連休でした。


突然ですが、去年のイノトランスのお話、ご記憶の方はいらっしゃいますでしょうか。この時に出てきた水戸さん、草野さん、赤塚さんという謎の友人が登場したのですが、すっかり意気投合したお三方は私が九州にいる間に東京近郊からわざわざ遊びに来てくれると言う。

 

ところが、動き始めるのが遅かった。いや、ベルリンに着いてから帰りのヒコーキを探す水戸さんとしては1ヶ月以上前に九州行きの航空券を探すのは早かったかも知れない。でも、11月の三連休となると世間的には出遅れ感満載だったのよね。

 

まず、航空券がもう割引なしの片道4万円とかの法外な話にならない値段だった。さらに、別府のお宿が通常の2倍どころか3倍以上の値段となっている。というわけで、妻子持ちの草野さんが無念の不参加宣言。水戸さんは成田からのジェットスターで、赤塚さんはなぜか宮崎空港にやってくると言う。こうして、ドタバタの二日間が始まった。

 

11月24日土曜日。04:00 大分県某所

 

このドタバタの二日間はとんでもない早朝から始まった。この日の最初の目的地は大分県の最南端佐伯。なんちゃってな対面通行の高速道路が開通したおかげでだいぶ早く着くようになったがそれでも県中北部のうちからは1時間以上かかる。

 

05:45佐伯市某所

 

佐伯駅近くの某所で私の友人の高萩さんと合流。佐伯近辺に住むこの悪友に本日のガイド兼運転手をお願いしておいた。高萩さんの車に乗り換えて向かったのは佐伯駅。

 

06:00佐伯駅

 

 

まだ夜明け前で真っ暗な佐伯駅にて降ろしてもらう。1時間後に別の場所でのお迎えを頼んでおく。

 

 

乗車券を購入…しようとしたのだが、たった一つしかない券売機の前で、前のおじさんたちがあーでもないこーでもないとやっている。数分後にようやく私の番が来て乗車券を購入。

 

 

そして、その乗車券を持って改札に行くと、今度はさっきのおじさんが再びあーでもないこーでもないと改札で揉めている。

駅員さん:「今度の延岡行きは特急じゃありませんから特急料金はお返ししますね」

 

…と言いながら返金を受けていた。

 

調べてみると、この区間の運賃は1110円。特急料金は1340円。特急料金が返金されるなら、かかる費用は半分以下になる。

 

この区間、駅間が長い(この区間の駅数は10。ちなみに営業キロが全く同じ東海道線の上野から辻堂までの駅数は9)、単線で入れ違いが発生する、線形が悪いのでスピードが出ないなどあって、実は特急でも各駅停車でも所要時間はほとんど変わらない。特急だと1時間程度で各駅停車だとその10分増し程度。そのわずか10分の短縮のために特急料金1340円というのは、言葉を選ばず有り体に言えばぼったくり。時給換算で8000円とかどこの弁護士やねん…という話になる。

 

上り下りにかかわらずすべての列車が、跨線橋を渡らなくていい1番線からの発車というのには好感を持てます。

 

その筋(ってどの筋だ)に詳しいお方なら、もう私がどこに行こうとしているかおわかりですよね。そう、宗太郎駅に向かっているのです(まあ、表題に書いてあるんだけどさ)。

 

まあ、ここをお読みのお方のそのほとんどはその筋とは無縁の方でしょうし、私だってさほど詳しいわけじゃないので説明をば。

 

九州の東海岸を縦断し、北九州と鹿児島を結ぶ日豊本線の大分と宮崎県境、イナカすぎるんです。長距離移動の客を狙ってか、特急こそ上下線とも1時間に一度ほどの運行がされているのですが、各駅停車はあまりにイナカ過ぎて利用客がおらず、2018年の3月のダイヤ改正まで一日3便あった各駅停車の運行が1.5便(上り2便、下り1便)にまで削減されてしまったのです。その結果、朝の6時18分発の始発かつ終電の延岡行き各駅停車(しかも車両は特急型)なる意味不明な列車が誕生してしまったわけ。たぶん…というか間違いなく日本一早い終電だと思う。そして、運行本数から言えば、日本一の秘境駅だと思う。

 

しかも。です。この「始発かつ終電」がすごい。2018年3月のダイヤ改正までは電化区間なのに1両のディーゼル車両が走っていたのですが、一日1.5往復ではこの車両を配置しておく価値すらなくなったのか、なんと、間合い運用の特急型の車両で普通列車を運行するという暴挙に。

 

…というすごい列車がありますぜ…というのを赤塚さんが九州に来る誘い文句にしたのです。私の悪巧みは、赤塚さんの心に響いたらしく、はるばる九州まで来てくださるという。ただ、航空券の都合で宮崎から宗太郎駅をめざすことに。

 

宗太郎駅は秘境駅で、なにせ一日1.5往復しかないんだから、訪問は実に困難です。ちょっと順序は前後するけどここで宗太郎駅の時刻表にはい注目―。

 

スクショはNavitimeよりお借りしております。

 

うわー、下りはホントに一日1本しかないよというのが確かに大問題。さて、この駅に鉄道でたどり着こうとしたら、そして、下車しようとしたらどうします?

 

まず、下りは一日1本しかないんだから、下車したら最後、次の下り電車などないので詰みます。上りは早朝の列車を降りたらもう夜まで次はない…と、一見訪問不能に思えるのですが、延岡から上りに乗って、15分ほど滞在して延岡に戻る…という芸当は可能です。この15分の接続を利用して私はちょっとしたいたずらをすることに。

 

赤塚さんには「ごめん、朝早くて早起きできる自信がないからちょっと遅めに車で宗太郎駅までお迎えに行きます。午前7時とか目安で」とちょっと遅くなるものの車でお迎えに行くと約束。
高萩さんに佐伯駅まで送ってもらい、そのまま宗太郎駅まで向かってもらう。

おそらく下り列車を撮り鉄していると思われる赤塚さんの前にさっそうと列車から降り立つ(実際してた。後述)。

「あ、気が変わったから電車で来ちゃいました」

赤塚さんに「え?ここからどうやって脱出するんですか」とツッコまれる。

首尾よく高萩さん登場。

 

…うん。我ながら完璧な計画。そんな計画を胸に列車に乗り込みます。

 

 

舞台は戻って早朝6時過ぎの佐伯駅のホーム。どう見てもつばめ型の特急列車が入線してます。787型車両。私がまだ大分に住んでいた頃(つまり90年台初頭)にさっそうとJR九州に登場した花形車両でした。思えばそれから25年も経っているので、いい加減くたびれ果てた車両になってますが、それでも特急。これが午前6時18分発、日豊本線下り、本日の始発かつ終電の各駅停車延岡行きです。

 

奥に見えるのがグリーン車。

 

こちらが乗った瞬間の写真。デッキには立ち席スペースがあるという優雅な設計。振り返って撮影されたのが次の写真。

 

 

ちなみに4両編成ですが、使用されるのは最前部の車両のみ。あとの3両は「締め切り」。利用できません。このように一両目と二両目の間には「立入禁止」の表示が。今気がついたんですが、このプラスチック製の鎖を支えるフックと言い、立入禁止の表示といい、百均でのやっつけ仕事感満載のような。全部で税込み324円でできました…のような。何の根拠もない勝手な私見です。

 

 

で、最前部の車両は、半分がなんとグリーン車。なので、こんな片田舎に普通グリーン車が走っているのです。もう、乗るしかないでしょ?ちなみに、逆の上り方向(延岡から佐伯)行きの2便の普通列車も同様に特急型車両での運行なのだが、進行方向最前部の車両のみの開放になり、グリーン車部分は閉鎖されている。つまり、大分県内で普通グリーン車に乗る唯一の機会がこの列車…ということになる。というか、この電車以外に九州内で普通グリーン車の運行ってあるんですかね。

 

普通車にはさっきの特急料金の払い戻しを受けたおじさんを含め数名のお客さんが乗っていたものの、まあ当たり前といえば当たり前、好き好んでグリーン料金を払うアホタレなどいるはずもなく私だけの貸し切り。

 

 

グリーン車は1-2の座席配置で普通車よりさらにゆったりしています。

 

出発前に気になっていたこと。乗車時に明らかに剛の者(その筋の人)と思われる人が車外で運転手さんと思しき方と立ち話されてまして。この区間の制限速度がなんだかんだと「おい、一般ピーポーはそんなこと聞かんだろ」ってことをいろいろ質問している。

 

 

途中駅の直見駅を出たところでグリーン車にお客さんがやってきた。えっ?こんな途中駅からどんな酔狂さんが…と思ったら、さっき佐伯駅で運転手さんに話しかけていた剛の者。何してんだ?この人は。

 

その謎は車掌さんが来て解けた。

私:「宗太郎までのグリーン券お願いします」

車掌:「770円です」

そして、剛の者。

剛の者:「直見からなら延岡まで50キロ以内なのでグリーン券が770円なんですよね(以下あーでもないこーでもない省略)」

 

 

なるほど。あとで調べてよく理解した。佐伯から延岡駅までだと営業キロが50キロを超える(58.4キロ)からグリーン券が980円になるのに対し、ここ直見駅から利用すれば50キロに収まるから210円安くなるのね。ごめん。自分のことを棚に上げてもいいなら正直に言わせてくれ。

 

うざいっ。せこいっ。思えば、特急料金の代わりにグリーン料金を払ってもまだこちらのほうが安い…というかなり乗り得な電車なんだから210円くらいJRの九州にお布施しろっ。紅の豚のマネをして「電車は静かに乗るもんだ」とでも言いたくなりました。言うまでもなくこれらはすべて私の心の中に収めておきました。

 

【別角度から】赤塚さん撮影の「特急」としての787型車両

 

こちら、赤塚さんが撮影された、「ひゅうが」として運行された同じ車両です。

 

赤塚さん撮影。宮崎空港駅にて。なんかさ、写真の質が私のと天と地ほどの差がありますが…ほら、アレですよ。これはコンパクトデジカメとミラーレス一眼カメラの違いで、決して撮る人のセンスの問題じゃないんだってば。

 

赤塚さん撮影。普通車。確かにアコモはくたびれてますが、逆に薄型のヒコーキのシートを見慣れた今となってはこんな重厚なシートが良く見えますね。シートピッチも広いし。グリーン車いらないじゃん…。

 

赤塚さん撮影。私が立ち入ることのできなかった中間車にはこんな半個室まであるらしいです。

 

06:55 宗太郎駅

 

そう、静かに車窓からの夜明けを眺めていると30分ほどで宗太郎に到着。赤塚さん来てるかなと思いながらホームを見ると…この誰もいないはずの秘境駅に赤塚さんを含めて4人もいるし。しかも、あれ、そのうちの一人は高萩さんだし。もう着いたんかいっ。

 

 

赤塚さん撮影の宗太郎駅に到着する始発兼終電の普通列車。

 

 

客が乗降するドアのところは嵩上げされていないのに、車掌さんのお立ち台の部分は嵩上げされている謎仕様の駅。2018年3月のダイヤ改正まではこの部分から乗客も乗降していたのだが、この特急での運用…となった現在、変人以外の利用のないこの駅のホームの嵩上げなど必要ない…と判断されたんじゃないかと勝手に推理。そもそも乗客の利用を考えているならこんなダイヤは組まない。

 

勝手な妄想ですが、この状況が続くなら、この駅そのものが廃止される時が来るかも知れない。そうなると、この区間は特急電車のみの運行…となる日も来るかも。むしろそうなると、青春18きっぷ利用者はこの区間の特急を「特例」として利用できてむしろ喜ばれるかも。なにせ、大分から宮崎に18きっぷで向かおうとすると、この早朝の電車に乗らざるを得ない…つまり佐伯に一泊せざるを得ないという完全に18キッパー泣かせの区間になってますので。

 

宗太郎駅にいた4人のうち二人は明らかに剛の者でして、そう、朝の延岡からの上り列車でここにやってきて、15分ほど秘境駅を堪能して延岡に戻ろうというわけ。うん。正解だよ。この駅で15分以上やることなどない。

 

なお、残りの二人は、赤塚さんと高萩さん。つまりは私の友人。…とどのつまり、一般客などいない。はっきり言っちゃっていいなら、例えば眠い目をこすり7時前の早朝の電車で逆方向の佐伯方向に向かったら、その日にはもう帰って来られない。こんな電車誰が使うねん。

 

ちなみに赤塚さんと高萩さんは、私経由でSNSでのつながりはあるのだが、直接の面識はない。…はずなのだが、私が到着する前にすっかり仲良くなってしまっている。

 

高萩さんいわく、宗太郎駅に到着してみると、朝の7時前だというのに秘境駅に延岡方面からやってきて折返しを狙う剛の者が3人もいる。だが、会ったことはおろか、写真すら見たことのないはずの赤塚さんに「赤塚さんですよね」と迷わず話しかけたらしい。そしてあっという間に仲良くなったと。…私のいたずら計画を完全に潰してくれてありがとう。

 

ともあれ、上下線合わせて一日3本しかない列車のうち2本が午前7時を待たずして通過してしまい、山奥の駅には静寂が戻ってきた。

 

ええっと、ほんの数行上で「この駅で15分以上やることなどない」と書きましたが、発言は撤回せざるを得ません。というのも写真のタイムスタンプを見ると、この駅に1時間も滞在してます。何をしていたかって…赤塚さんの気が済むまで滞在してました。…だって地元民の高萩さんはもちろん、私ですら前にこの駅に来たことありますから。まあ、なんだかんだ言いつつ、私も楽しんでましたけどね。

 

なんというか、他人の目から見た風景って、自分から見たのとは違うんですよね。自分ひとりだったら完全に放置するようなことも、友人が注目してみていると、「ああ、こんなものがあったんだ」と改めて気がつかされるわけです。

 

そんなこんなの駅のあれこれ。ここから写真多数です。ここまでで宗太郎駅に興味のわかなかった方はもう流しちゃっていいと思います。

 

 

駅には古びた跨線橋があります。バリアフリー?なにそれ状態ですがこの利用実績ならたぶん問題にもならないのでしょう。

 

 

跨線橋の上からの撮影も可能。…ただ、上下線合わせて1時間に2本しか電車は来ないけどね。なお、たまーに貨物の運用があると地元民の高萩さんは言ってましたけど。

 

 

跨線橋より宗太郎地区を一望する。家は…さあ、十数軒といったところか。写真右上に見えるのが国道10号線。写真上方向が延岡方向。

 

 

振り返って跨線橋より1番線、佐伯方向ホームを望む。昔は駅舎があったらしい。そういう思いで見ると…

 

赤塚さん撮影。

 

この運賃箱があったところって、駅員さんが出改札をしていたところじゃないのかな…という気がする。この駅に駅員さんがいた時代があったとは現在からはなかなか想像できないのですが、どうなんでしょう。それにしてもこの運賃箱、きっぷを持っていなかったら現金を入れてもいいんですよね。入れる人がいるのか謎ですが。

 

 

 

 

 

寂しい時刻表が掲示されているのは…

 

 

…便所の外壁です。「便所」です。「お手洗い」とか「トイレ」とかじゃないんです。

 

 

…だってそう書いてますから。

 

 

便所マニアの方のために、別角度(ホーム側)よりもう一枚。なお、「便所マニア」なる人が実在するかどうかは確認してませんし、知りたくないです。

 

赤塚さん撮影。

 

便所と改札ラッチ。跨線橋を渡らない佐伯方面への1番乗り場にすらゆるいながらも階段があります。ホントにバリアフリーとは無縁の駅です。

 

 

一つ上の写真中央に写っていた2番乗り場(延岡方面)の待合室(って言えるのかな)を見てみましょう。

 

赤塚さん撮影。私が宗太郎駅に到着する前に撮影されたのでまだ暗いですね。

 

 

ベンチの上には誰が置いたか小石が並べられています。

 

 

この箱の中には旅のノートなどが入ってます。

 

 

法面工事でも生き残ったらしい謎の池。

 

 

 

斜め方向から見たこの写真のほうがはるかに解りやすいかも。このように、法面をコンクリートに固める時に消えてしまってしかるべきだった池がうまく生き残ってます。

 

 

再び反対側の1番乗り場(佐伯方面)に目を向けると、一般客には関係ないと思われる謎の建物が。

 

 

位置的には「便所」の向こう…佐伯方です。

 

 

謎の建物の入口。あ、右上になにか書いてある。

 

 

「宗太郎 通信配線室」らしいです。何かしら、信号関係の設備でしょうか。

 

 

件の通信室とは関係ないのでしょうが、電話ボックスが未だに存在。たぶん使えると思います。こんな電話ボックスを見ると、「ひぐらしのく頃に」を思い出します(わからない人はスルーでいいです)。

 

赤塚さん撮影。

 

2番乗り場(延岡方)の駅名標。新型のに取り替えられたのに、各駅にあるイラストが入ってない。ちなみに「いちたな」はすでに宮崎県。県境を超えます。

 

赤塚さん撮影。

 

ご参考までに。こちら延岡駅。駅名の下にイラストが入ってます。JR九州の各駅、あとで出てくる小さな駅にもこのイラストは描かれているのに宗太郎駅「だけ」にはこれがありません。

 

 

こちら、反対側1番乗り場の駅名標。やっぱりイラストがない。画竜点睛を欠く…ってこんな時に使っていいんですかね。

 

 

2018年3月のダイヤ改正前後に設置されたに違いない表示。

 

 

 

赤塚さん撮影。

 

上の写真を引いた位置から。

 

 

ただ、上の表示は何を目的にしているのか謎。というのも…。

 

 

…乗車位置は別に表示されているのです。

 

 

宗太郎駅到着時に車内から(ドアが開いているところ)。停止位置は正しいようです。