【2019日本帰省7】猫の楽園深島訪問記


長野から新幹線で羽田。そこから大分に飛び、実家へ。翌朝の4時すぎにはすでにでかけている元気すぎる私。今日は前から行こうと思っていた佐伯市の深島に行くのだ。

県の中部にある実家から県の一番南と言ってもいい佐伯市蒲江まで行くのは結構時間がかかる。いちおう名ばかりの高速道路はあるけど、ごめん、ドイツのこの辺のイナカでは一般道でも100キロで走れるんだわ。対面通行で70キロ制限の道を高速道路とか呼びたくないわっ。しかも金とるとか…ぶつぶつ。

深島へ行くフェリーはチャーターをすれば話は別だが一日に3本しかない。蒲江(本土)発が朝8時、正午、午後4時。最小の本数ながらわかりやすく使いやすい時刻設定。日帰りで行くためには当然朝8時か正午の便しか選択肢がなく、かつ、一日を有効利用しようとするともう午前8時の便一択になる。

佐伯市内でいつもの悪友高萩さんと合流しつつ朝8時のフェリーに間に合うために…と計算すると、どうしても実家を朝の5時前に出発しないといけなかった。前回は朝6時の一日一便しかない宗太郎越えの普通電車に乗るためにそれよりも早く自宅を出たなあ。どっちにしてもアホや。

ちなみにこの日は結局車を500キロも運転します。先は長いです。

そもそもなんで深島やねん、深島ってなんやねん…という素朴な疑問からお答えします。

なんかね、数年前から離島に行ってみたいというわけのわからん願望が頭の片隅にありまして、数年前も愛媛の猫島に行こうとして挫折した経験がある。そんな折につぶやいたーに流れてきたのがNHKワールドの放送。来年の1月にBSで再放送があるらしいので興味のある方はどぞ。

つぶやいたーはもともとマンガ家のアキヨシカズタカ先生がもとにあるのですが、12月6日現在Twitter社によって原因不明のアカウント凍結の刑に処されています。凍結自体がなにかの間違いだと思うので近いうちに凍結解除されると信じてそのまま貼っておきます。

件の放送をネット上で見てみたんですよ。いや、それ、偶然を装ってるけど仕込んでるでしょ…としか思えない(良くも悪くもNHKですし…)訪問先での出会いなどをニヤニヤしながら見ていたのですが、番組の後半で深島に訪問するのです。それを見て行ってみたくなったわけ。テレビに感化される一億総白痴の一人ですね。

ちなみに大分県内にある有人の離島ってたぶん10もないんじゃないかと思う。そのうちの一つの屋形島は深島に行く船が経由する。大入島は去年「クルージング」で眺めてみた。まあここは佐伯から近いしフェリーの本数も多いので割と気軽に行ける。

一番大きいのは国東半島の沖合にある姫島。ここは大分県内で唯一の「村」で島だけで一つの自治体を形成している大きな島。こどもの頃に一度行ったことがあるのだがほとんど記憶にないのでそのうち一度訪問してみたいと思っている。

話を戻します。件の深島なんですが、周囲は4キロ、面積はわずか1.1km2しかない小さな島。人口は19人(15人?=このお話の一番最後参照)で猫は約80匹。「部と北部の2つの島が中央の砂州で結ばれ、全体としてひょうたん形をしている。集落は島の中央のくびれた部分にある。」以上ほぼWikiの丸写しです。

当時話題だった商品。たしかに美味しかったけど騒ぐほどのものじゃなかったぞ。

朝の6時に佐伯市中心部に到着。朝ごはんを調達。大分県内で一番広い市らしい佐伯。佐伯市中心部から蒲江町まではおよそ30キロ、30分の道のりです。

朝7時過ぎの蒲江港。実に静か。

自分の無知さを恥じ入るばかりだが、このあたりの漁師さんって何時ごろ漁に出るのだろう。この時間って例えば漁から戻ってきたりとかでもっとにぎやかでもいい気がする。

(バス停にランドセルを背負った小学生が写ってますが、屋形島からやってきた船で通学しているのかもしれない)

そんな静かな漁港の中心にあるのが蒲江交通さん…って普通の民家にしか見えないわ。船はどこから出るねん

…ってこれかいっ。総トン数18トン、旅客定員50名、最大速力23ノットのえばあぐりいん

出港時刻10分前というのに誰も船を待ってない。いささか不安になるが、それでも出港時刻になると船員さんと思しき方と二人のおばあちゃんがやってきた。私たち・船長さんを含め5人で出港。

(たった5人しか乗ってないから「島民優先」もなにもないが、それでもいちおう優先じゃない席に座りました。もしかして今だったら中央席が「ソーシャルディスタンス」席とか書かれてるのかしらね)

船は10分後に屋形島に寄港。そこから船は一気に速度を上げ、定刻通り18分、つまり蒲江港から28分で深島に到着。けっこうなスピードを出してた気がした。

出港直後。蒲江湾内にて。

うっかり写真に撮りそこねたのだけど、船の中には深島のガイドと島でのお願いのようなことが書かれた紙が用意されていた。いわく、船の下船時には荷物の上げ下ろしを手伝ってほしいと。へいへい。非力ながら手伝いますよぉ。

深島到着前

フェリーの宿命と言っていいのか、窓ガラスは汚れている。ひたすらに一段高いところに座っている船長さんの背中を見て過ごした。

到着後、さて、荷物の上げ下ろしを手伝ったほうがいいのかしら…と同行の高萩さんと二人で顔を見合わせるが特に何をやっているふうでもなかったのでそのまま下船。

深島港から集落への道。♪きみのこころへつーづくー、ながいー一本道はー

ここが深島だ!

…って別に何ということはない風景ですな。大分県内の「本土」のほうでもこんなのどかな風景は見られる気がする。

おばあちゃんお二人について行くと…猫がいた。ちなみにこのおばあちゃんとは帰りの船でも一緒だった。その時にちょっとお話をしたのだが実は元島民さんらしく、お墓参りに来られたらしい。

お、またいたぞ。

私のへっぽこ写真で恐縮なのですが、よく見ると耳に切れ込みが入っているのが見て取れるでしょうか。実はこれ、避妊・去勢をしたという印らしく、通称「さくらねこ」と呼ばれているらしいです。で、この不妊手術が私達の訪問直前にボランティアさんたちの手で行われたらしい。

上のリンク先の記事を読んできてくださるとご理解いただけると思うのですが、私たちが訪問したのは2019年の11月。この不妊手術のちょうど2週間後だったらしい。

島の猫ほぼ全てに不妊手術をしたらしく、つまりこの猫の楽園はこの猫の代かぎりということになる。そうしないと天敵のいない島で猫が繁殖すると猫のくせにねずみ算で増えることは目に見えているわけで。それにしてもわずか3日で80匹の猫の不妊手術をしてしまうというのもすごい話。

深島は2つの島をつなげたようなひょうたん型をしています。で、その中心の平地の部分に漁港だの集落だのがすべて集まっている模様。

舗装された道どうしという意味ではおそらく島で唯一と思われる島の中心にある三叉路を左へ。特にやることがないので端から端まで歩いてみようという魂胆。

数軒の家の軒先をかすめ、少し坂を登り、森を抜けるとそこはもう行き止まり。行き止まりにあったのは廃校跡。見ての通り立派な校舎ながらすでに廃校(ではなかった。以下を参照)。

深島には19人の住人さんが住んでいらっしゃる(Wikiによる)のだが、うちコドモはふたり。そのふたりも就学前児童さんらしいのでそりゃこどもがいなければ廃校にもなる。さて、このふたりのこどもさんが小学生になる時はどうなるのか…お子さんの親の安部さん(後述)はお悩みらしい

調べてみるとこの学校、行政上では佐伯市立蒲江翔南小学校深島分校と呼ばれていて、Wikiを信じる限りは廃校ではなくあくまで「休校」扱いらしい。つまり、深島に生徒さんがいれば再開するという手はずにはならないのかな。この辺の事情はさっぱりわからないし、部外者が無責任に論評していいとも思えない。それでも日本国には子供に教育を受けさせる義務があるのだから、ここに通学できない小学生がいる限り、小学校は再開すべきな気がする。綺麗事・絵空事と言われたらそのとおりです。

…とのことなので、もちろん校舎内には入っていない。

分校が再開されることも考慮されているのか、校舎にはある程度の手が入っている気がするので廃墟とは言えない感じ。そういう思いで見ると、ふたつ上のパノラマ写真で見て取れるように校庭もきちんと草刈りされている。

外階段を登り(これは不法侵入にはならないよね)2階の様子も伺う。なんと贅沢な多目的室…というか、あれ、もしかするとここが体育館扱いになるのかな。

写り込んでいるのは廃校に棲む幽霊…ではなく私です。言うまでもなく。

ほうほうと見ていると下から見ていた高萩さんが言うのだ。

「上見て、上」

目線を上に上げると

冗談抜きでノミの心臓が口から飛び出していきそうになった。まったく気がついてなかった。見ての通りもはや文字通りのもぬけの殻ですが、もし蜂がまだいたら…実にシャレにならなかったです。驚く私を見てけたけた笑い転げる高萩さん。いい性格しとるばい。

こんなアホなことをしていると、釣り竿を持ったひとりのおいちゃん(大分方言:おじさん)に出会う。この小学校を抜けると釣りスポットがあるらしい。あれ?このおいちゃん今朝の船に乗ってなかったし、島民さんだったのかな?

小学校の先に道らしきものはなかったので(おいちゃんはどこにどうやって向かったのか謎)島の中心部に戻る。

先ほどあえてスルーしたのだけれど、島の中心部にうさぎ小屋のようなものがあり、中では元気に子猫が遊んでいる。それを外から眺める猫たち。

足元にじゃれついてくる友好的な猫さん。深島の猫は圧倒的に茶トラが多かった印象。高萩さんに茶トラが抱っこされているいい写真もあるのだが、もろに顔が写っているので載せられない。残念っ。

先程の三叉路を逆方向に進むと当然ひょうたん型の島の反対側に向かうことになる。

ここがおそらく島で一番栄えている場所。件の番組でもここを見たぞ。ここに猫さんが何頭かいればおそらくいい写真になったろうけど、現実は見てのとおり。それでも一頭写ってますけどね。深島食堂もここにある。

よくよく見ると、猫様はあちこちにいらっしゃる。

今度は港に戻り、島の反対側の端にある灯台へ。ちなみにさっきの通りをそのまま進んでも同じことになったらしいが。

港に向かう途中にある猫様の公衆トイレ。

こちらは人間の公衆トイレ。定期的に掃除をされている方がいらっしゃるのだろう。驚くほどきれいに保たれている。しかもウォシュレット付き。

港をすぎるとそこはすでに未舗装路。ただひたすらに進むのみ。

20分ほど小径以外には人の手の入ってなさそうな原生林(って言っていいよね)を進むと、突然きつい上りになる。えっちらおっちら登ると

どうしても灯台全体を撮ることができませんでした。

灯台に到着。

この灯台、崖地に建っているらしく何気なく下を見下ろしたら…ぞっとした。どこにも危険 落ちたら死ぬ!!とは書かれていなかったが、落ちたら確実に死ねます。下手したら白骨化するまで誰にも気がつかれないんじゃないかという気もする。

灯台を訪問後にその足で「メインストリート」にあるお昼ごはんの予約をしていた深島食堂へ。

ととちゃん。
ぶさかわとはこの猫のためにある…とか言ったらきっと引っかかれるな。
じじちゃんとダリア(まったく自信なし)
ととちゃんとめぐちゃん

まだお店は開いてなかったので近所のヤギさんや猫さんを眺めて過ごす。

この風景が見たかった。メインストリートが猫さんでいっぱいの写真。私には6頭見て取れます。

(追記)コメントで10匹だろ…という突っ込みいただきました。確かにそうです。6匹ってどこから出てきたんだ…と自分で突っ込みました。

深島食堂裏の(たぶん)深島食堂のプライベートビーチ。

こののち深島食堂へ。お昼ごはんをいただく。

気まぐれ定食(1000円)なり。やっぱり日本人的にはこんな幕の内弁当風にいろいろはいっているのは嬉しい。量もちょうどよかったし(ラーメン二郎を完食できるようなお方はあるいは不満があるかもしれない)。深島の特産品、深島みそのお味噌汁も大変美味しくいただきました。

行きの船で一緒だったおばあちゃんふたりもやって来られた。こちらは飛び込みで来られて予約をされていなかったので「簡単な」食事を出してもらっていた。食事は予約必須らしいですよ。

この時に出会ったのが、食堂の「おかみ」安部あづみさん。と言っても私は高萩さんと安部さんの「ガールズトーク」を眺めていただけですが。

深島を訪問することがある人は、否応なく安部さんのお世話になることになる。唯一の食堂も、深島みその制作体験も、これは未確認ながらおそらく宿泊も安部さんがやっていると思われる。猫のことを始め、島の将来のことを真剣に考えられている方。たぶん安部さんの目が黒いうちはこの島は大丈夫。

件の三叉路より深島みそ工場を望む。奥に進むと小学校。

そうそう。今回は島を短時間で見て回りたかったのでやらなかったけど、みそ制作体験ができるそうな。これは今度機会があればやってみたいと思っている。

というわけで、わずか4時間の滞在で12時半の船で蒲江に戻る。前述の通り帰りの船も行きと同じ面子…私達とお墓参りの元島民さんふたりと船長さんのみ。いらんお世話ながらこれじゃあ船も商売にはならないだろうなあ。

この日の話の続きは後半に続く。

おまけ。深島のあべさんのつぶやいたーはこちら。猫さんの支援もできます。支援をされると間違いなく喜ばれます。

おまけその2。一部の猫さんの名前のキャプションは深島食堂で購入した深島にゃんこ日めくりカレンダー(31日ひめくり)より推察。まったくの猫違いの可能性も絶大です。