続:社長の椅子

熱波に襲われた先週の金曜日、仕事上でありえないミスをしでかしました。こりゃ暑さにやられたな…とか思ってたらやられたのは私だけではありませんでした。なんか尻の下で異音が。

5年間使った椅子が天に召された瞬間。

しばらく前から嫁がこの椅子に対して苦情を申し立ており、そろそろ買い替えしなきゃダメかな…ちょっとここ数ヶ月クレジットカードを使い過ぎてるからあんまりお金を使いたくないんだけどなとか思っていた矢先に見事に壊れてくれ、選択の余地はなくなった。やむなし。買おう。

合皮の座面や肘掛けがぼろぼろになり、剥げた表面が消しゴムのカスのように部屋に散乱。…そりゃ文句を言いたくなるのもわかる。

実はこの椅子、私の人生で壊した二脚目の椅子となる。

一脚目は会社にて。相当昔に勝手に倉庫からゴミに出される前の椅子を引っ張り出しました。なにせ、社長と同じ椅子でしたので。ちなみに今回のお話の表題は「続:社長の椅子」になってますが、なんと7年前の続きを書いてます。「正:社長の椅子」はこちらをご参照くださいませ。

ところが、こちらの初代社長の椅子を私は数年で見事に破壊してしまいました。肘掛けがぽきっと折れた。これに関しては悪いのは私。私にはとんでもない悪癖があるのです。すなわち

椅子の上にあぐらをかく。

同僚に何度か笑われました。私、そんなふうに座れないよって。確かに、体が大きいと椅子の上であぐらがかけない。だけどさ、日本人として普通の体型の私、楽にあぐらをかけちゃうし、楽なのよね。これを書いている今だってあぐらかいてるし。まあ、お行儀がよろしくないとかいうご意見はごもっともです。

とにもかくにも、椅子の上で行儀悪くあぐらをかくためには、まず、両手を肘掛けに置き、肘掛けに全体重をかけないといけない。この瞬間に肘掛けを下方向だけじゃなく横方向にも押していたらしく、その行為を繰り返すうちについにポキっと折れたと。折れたときに椅子から落ちたりしなかったことは運が良かったと思う。まあ、それ以降会社の椅子は社長の椅子からヒラの椅子に降格となったわけですが。

こりゃ困ったな…と思って何気なく折込広告を見ると、なんかあるぞ。

いや、別に値段にぼかし入れなくても良さそうだけど、あんまり生々しいお金の話をするのもえげつないかな…とか思ったり。

おお、社長の椅子。

売出し特価になってもそれでもいいお値段です。日本までの格安の片道航空運賃のお値段です。なんだけど、思ったわけ。私、寝ているときとご飯を食べているとき以外、ほぼこの椅子に座り続けてるんですよね。だったらすこしくらいいい椅子を買ってもいい…かなって。

まあ、問題点はあった。このチラシ、来週のやつで今日はまだ売り出し日前。…なんだけど、土曜日の午後、車で30分ほどの場所にある家具屋さんに出発―。

土曜だというのに、お客さんがほとんどいない家具屋。いや、IKEAでもなければ家具屋に人が溢れかえっているってあんまりないことかも。

事務用椅子のコーナー。思いがけず充実した品揃え。IKEAよりも種類は多い。ただ、見た瞬間に安そうだな、ダメそうだな…ってのが大半なので見かけほどの選択の余地がないのも事実。

おお、あった、社長の椅子。

広告に書いてあったとおり、この椅子、おデb…もとい、社長の貫禄が溢れる人でも問題なく座れるよう、なんと体重220キロの人まで支えられるらしい。これって地味にすごいよ。ほかの事務用椅子の耐重量は100キロだもん。ということは、肘掛けに体重をかけても平気なんじゃないだろうか…と期待。

その上で、こっちの椅子もちょっと気になったのだ。より普通の事務用椅子ながら座り心地も悪くないし、社長の椅子よりだいぶ安い。よし、これ以上は聞かないとわからない。店員さんに聞こう。

…って店員さん、どこー?

お客さんもいなければ店員さんもいないお店。

2階の売り場を無意味にほぼ1周して、INFOと書かれたカウンターにヒマそうに店員さんが2名くっちゃべっているのを発見。ちょいとちょいとこっちに来てくだせえ。椅子の売り場までご同行願い、ほかの椅子について聞いてみた。

店員:「ああ、こちらはいい商品ですよ。…ええっと…ドイツ製です」

と、POPに書いてあることを読み始める人。じゃあ、同じメーカーのこっちとこっちは何が違うの?

店員:「…ええっと、デザイン…ですかね」

申し訳ありませんでした。聞いた私がアホタレでした。いますよね。こういう手合の店員さん。有り体に言っていいなら、「俺でもできるわ」というレベルの人。もうこの時点で商品説明は諦めた。社長の椅子に的を絞ることに。この(社長の)椅子、在庫ありますかね?

例のInfoまで戻ると古い端末を操作し始める商品知識豊かな店員さん。いや、OS自体は古くないのだが、在庫確認のためのアプリはWindows3.1時代まで遡るのじゃないかというとんでもない古臭いインターフェイス。

店員:「ええ、一つだけ在庫がございます。これが売れてしまうと入荷まで6週間待ちとなります」

以下はもちろん口にしていないが脳内で一人で突っ込んだ。

待てこら。来週からの「広告の品」なのに在庫が一つしかない?じゃあなんですか。私がこれを仮に今買っていった場合、月曜日の朝に誰かがこの商品を買いに来たらいけしゃあしゃあと「品切れです。6週間待ちとなります」とほざくんかいっ。広告の品が月曜日の朝に欠品とか…ありえんぞ。

こんなことが起こるたびに、私は心のなかでアイルランドに謝罪している。アイルランド様、15年に渡りいい加減だなんだと言い続けてすまなかった。実はドイツもさして変わらないと感じることがあるわ。

ともあれ、話を現実世界に戻そう。ここからは実際に口にした部分。詳細は省くけど、チラシの先売りを(要するにフライングだけど来週の広告の品価格で売ってくれませんかねと)お願いしてみた。まあ、20年前に日本の小売業でバイトをしていた私、正直これは可能だということを経験上知っている。まあ、モノによっては断ってたけど、在庫から判断するにチラシ週間売上予想たった1の椅子ならチラシ価格で売ってくれるに違いないという勝算はあった。

最初はぶつぶつ言っていたけど、最終的にはチラシ価格で折れてくれた。

かくして、社長の椅子。お買い上げっ。また来月のクレジットカードの支払いが余裕で4桁越え確定。

店員:「それではこちらをお持ちの上、レジにてお会計をお済ませになり、レジにて発行されます引換証を建物裏の受け取り所までお持ちください。ありがとうございました」

なんだか引換証に件の使えない店員さんの名前が書いてある。もし、この店員さんに歩合制の売上があったら私は大いに不満です。ともあれ、15分後。商品受け取り所。

…お、重い。それもそのはず。たかが事務用椅子のくせに余裕の30キロ超え。

このあとうちに持って帰り、なんだかネジ穴の位置があってないのか組み立てに苦労しつつ組み立てて完成。

座ってみた。座面がやたらと柔らかいものの、肘掛けから肘掛けの距離が長い(=幅がやたら広い)のでちょっとしたヒコーキで言えばビジネスクラス的な優越感がある。…なんだけど、1週間使ってみて思ったのは、もしかしたら、より人間工学デザインに基づいていたと思われる、しかも社長の椅子より遥かに安かった別の椅子のほうが良かったかな…と。まあ、デザイナーさんの意思を無視して座面であぐらをかいている私に人間工学デザインがどうこうとかほざく資格はないんですけどね…。