決戦の水曜日。結婚記念日報告。


8月某日。4回目の結婚記念日を迎えました。ちょっと自慢していいですか。

今年は忘れませんでした。

昭和の時代に3年目の浮気というどうしようもない曲がヒットしましたが、浮気だか不倫だか知りませんが、そんなことができるような金も容姿も私にはありませんが、しっかり忘れることはできちゃったと。去年のお話。実に愛溢れるお話です。

そのことを大いに反省させられた私は今年はちゃんと覚えてました。

まあ覚えていたところでできることといえば、外食くらい。こんな時の食事は、(イナカ基準での広い範囲の)近所で唯一の小洒落たレストランと二人の中で相場が決まっているのですが、ここ、前回訪問時にちょっと塩対応をされたというか。

別に大した話じゃないんですよ。このレストラン、たいがいの場合「キッチンからのごあいさつ」などと言いつつ突き出しのような小皿がオマケ(=日本のお通しと違って料金に含まれている)に出てくるのですが、前回は出てこなかった。周りの他のテーブルは出てきてたのに。

純粋に忘れてただけじゃないの?じゃあ文句言えばいいじゃない…ということになりそうだけど、そもそもがメニューにないいわば厚意でいただく「オマケ」なのでそれに文句を言うというのも違和感があるし、文句を言う前に注文したものが出てきてしまうという問題もあり。

ついでに言えば、お隣のテーブルがオーナーの知り合いとかなんかだったらしくやたらサービスを受けているのだ。平たくいえば、そちらの歓待に忙しく私たちは昼間の星よろしく忘れ去られてしまってもやもやした…というお話。そんなことが最近あったので、ここでの食事は「一回休み」という結論に。

ほんじゃあどうするよってことになったのだが…ドイツのイナカのこと、どこもかしこもお財布に優しいお店ばかりだが、反面ぱっとしないよねえ。とりあえず、あまり遠くない村にあるギリシア料理店を予約。嫁が電話した。数分後…。

「ホントに大丈夫なのかしら。なんか適当にあしらわれた感じ。名前を書けたのかしら」

嫁がたまに冗談顔で文句を言うことは、私達の姓。選択肢としては、ダンナ(私)の、嫁のあるいは併記(Sato-Müllerみたいな感じ)…という方法。ただし、正式に併記にする場合、日本の裁判所での改名手続き的なものが必要で、「勝手に」併記してる人もいるとか。この辺はよく調べてないのでわからない。というのも、

「そういえば苗字どうする?」

「え?あなたのでよくない?」

という感じの軽いノリで深く考えることなく私の苗字にしてしまったのだ。別に私には深いこだわりはなかったので嫁の苗字でも良かったのだが。…とか書くと親に殴られそうなので、そうですね…自分の苗字を捨ててすら、嫁と結婚したかったんです。うん。こう訂正しておこう。

こうやって決めて以来、銀行に保険会社にといろんなところに改名のお知らせをし続ける羽目になることで、嫁はしばらく安易な決定を後悔させられることになる。

そして、困るのは電話予約。嫁の名前は私の名前くらいよくある名前なのだが、電話で何かを予約しようとすると、ほぼ100%の確率で相手が凍るらしいのだ。そりゃそうだ、逆の立場で想像してほしい。あなたが日本で電話受けをしていたとして相手と普通に日本語で会話をしていて…

「…かしこまりました。水曜日の午後7時に2名様でのご予約ですね。お名前をいただけますか」

「シュナイダーです」

…なんか下手をすると「おちょくっとんのか」ってなりそうですね。相手は日本人だと思ってたのになんでそんな欧米的な苗字が出てくるねん…って。ちょっと考えれば国際結婚したとかいろんな可能性はあるものの、一瞬でも「えっ?」ってなることはあり得ると思う。

日本語はある意味偉大です。こんな時、音で書けばいい。Schneiderの綴りがわからなくても「シュ ナ イ ダー さんですね…」とカタカナで予約帳に書いておけば問題にならない。だけど、こちらで「高橋です」と言ったら

「すいません。スペルを言っていただけますか」

となることは想像に難くない。

話が無駄に長くなりつつあるので戻すけど、とりあえず、そのひと手間が省かれたらしいのだ。

「水曜日、午後7時2名様ですね。はいはい」

みたいな感じで適当にあしらわれたらしいのだ。しかも相手はギリシア人だったのか定かではないが「あまりドイツ語が達者ではなかった」とのこと。…いやいや、それを俺に言うか…とは思ったものの、たしかに不安は残る。

こうして、決戦の水曜日はやってきた。

ふっと思った。

もしかして、レストランだけではまずくね?いや、プレゼントとか…いる?

気がつくのが遅すぎた。数日前なら熱帯雨林を漁るとか、ネット上で傾向と対策を練ることができたかもしれないが、当日はいくらなんでも無理。

かといって、イナカのこと。近所に小洒落たお店などない。行けるのは車で10分ほど走ったところにあるスーパーくらい。仕方ない。仕事をサボっていきましたよ…もとい、休憩時間に慌てて行きましたよ。

このスーパー、ありがたいことに花屋さんがテナント入居している。

「すいません。XXユーロで適当に花束作ってください」

「どのようなのがいいですか」

「そんな難しいこと聞かないでください。結婚記念日用のをあなたのセンスで作ってくださいっ」

花屋さん。あなたは正しい。どのような花か客に聞くべきだ。だけど、花の名前などバラとチューリップくらいしか知らない私にはそれはレベルの高すぎる難問なのだよ。あ、待て、ちょっと誇大な表現だった。ひまわりもわかるぞっ。

花屋さん、私の花への深い造詣を理解すると、じゃあ、これとこれはどう…みたいな感じで花束を作ってくれた。ついでにスーパーでちょっとお高い系のチョコレートを買い退散。別に悪いことをしているわけじゃないけど花を買うって気恥ずかしいわ。

テーブルの上がごちゃごちゃしている+写真のセンスが無いのはいつものこと。諦めてください。

私が戻って程なく嫁も仕事から戻ってくる。

私は心底安堵した。なぜならば帰宅した嫁の手には花とチョコレートが。

よかった。何も買ってなかったらやばかったわ。

ちなみに嫁はオマケにワインもくれましたが、一輪の花と花束では物量で私の勝ち。…というのは完全に身勝手な男の「でかけりゃいいんだろ」論理。嫁様は…

「この花、覚えてる?」

ときたもんだ。詳しくは書きませんが、なるほどねぇ、物量作戦は思い出作戦の前に完敗。とりあえず覚えていた私は危機を回避したと言っていいだろう。

もっと余計なことを書くと、どうも嫁は私とすれ違いで同じ花屋に寄ったらしい(まあ他に選択肢もないしね)。

その後、予約していたレストランに行きましたよ。

「こんばんはー。予約をしていた…ですが…」

オーナーの奥様と思しきたぶんギリシア人のおばさまは…

オーナーの奥様と思しきたぶんギリシア人のおばさまは不思議そうな顔をして、予約帳と私たちを見比べつつ…

「えっ?今日、予約なんて入ってないわよ」

…やっぱりな。テキトーなことしやがって。

「問題ないわよ。今日予約なんてないから、好きな席に座って」

…これだもんな。いい加減すぎる。

ギリシア料理、正直あんまり好きじゃないんですよね。ドイツで食べるギリシア料理がそうなだけかもしれませんが、とにかくとんでもない量の肉をどどんと食べされられるような印象が。

そんな中頼んだのはこれ。Gyros mit Metaxasosse

ギロピタのメタクサソース

…と、カタカナにしてもさーーっぱりわからない。というわけで、Gyrosをググると…

Gyrosの画像検索結果。

ほうほう。なにかパンか何かで巻いたものの写真が出てきたからこれならそんなに重くないなと。

ところが、出てきたものは

…想像していたものと全く違う。あとで、メタクサソースとやらをググるとなんか納得しましたが。とりあえず、日本のファミレスは、味はともかく写真でどんなもんが出てくるか想像できるという点だけで秀逸だわ。

まあ、…すごい量でした。食後にのんだウーゾをしてもまだ大変。

こうして、なんとか4回目の結婚記念日を乗り切ることができました。おしまい。

お知らせ:

結婚記念日のイラストはこちらのサイトよりお借りしました。