同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか


このサイトには「書評」というタグがあるものの、ほとんど使ったことがないです。なんかさぁ、偉そうに上から講釈たれるみたいじゃないですか。この言葉。偉くもないのに。せめて「読書感想文(小学校低学年あるいは同等の知能レベル)」くらいにしとけばよかったと後悔するものの…長すぎるわな。

今回のネタはこちら。

わざわざ日本から送ってきてくれた人がいるのよ。この本を。しかもブルジョワジーしか使わないとされるEMS(国際スピード郵便)で。これはもうさっさと読んでここに感想を書くしかないでしょう…というお話。

とはいえここ数日、仕事ほかがとんでもなく忙しく、本をゆっくり読むような時間は取れないなあ…とか思ってたのよ。ところが奇跡は起こった。あと1時間で勤務時間が終わろうという時に

ぼんっ

という音とともにパソコンのディスプレイほかが一気に落ちた。10年前の3月を境にテレビほかから全く見なくなった不遇のキャラ、でんこちゃんが脳内に突然復活して私に告げた。

「じゃん。停電です」

数分待ったが復帰しない。どうもうちだけじゃなくご近所みんなそうらしい(それどころか村全体はもとより近隣の町や村まで巻き込まれた大規模停電だった)。ノートパソコンはバッテリーで起動しているが、スマホの基地局までやられたらしくネットも繋がらない。

やーめたっ。本読もうっと。

こうして21世紀も20年以上も経ったのに数時間に渡り停電が起こるという素晴らしきドイツのイナカのおかげでゆっくり本を読み始めることができました。幸か不幸かこの停電、1時間後に復帰したものの直後に二度目の停電。その後また1時間ほど復帰しなかったので、私は完全に読書モードに入って一気に読むことができましたとさ。

共著者の一人佐藤直樹氏は友人です。…いや、そんなことを書いたら「お前なんか知らん」と怒られそうなので、そうね…知人です。その流れでこの本もはるばるドイツに届けていただけたわけですが、まず本を手にとった瞬間に違和感を感じた。ほら、見てよ。

同じ違和感を感じていただけるでしょうか。ほら、新書判の本って、地味でしょ。岩波新書とかがわかりやすいと思うけど、単色または2色の地味なカバーにタイトルと著者名が書いてあるだけ…みたいなイメージが私の中にあるわけよ。なのに、この本ときたら、鴻上尚史氏と佐藤直樹氏が難しそうな顔をしてででんと写っており、そこに黄色で

(前略)新型コロナが炙り出した世間という名の「闇」に迫る

ときたもんだ。写真はともかくこの手の煽り文って帯にするんじゃ…ん?帯?と思ってみると

これは新しい。表紙の80%くらいが帯に覆われていたわ。超特大の帯を外すと見慣れた地味な新書本が出てきたわ。すごいな。このインパクトは。

…と、Wordの用紙一枚と半分を中身に入る前に埋めてしまうという中身を読まずに読書感想文を書こうとする小学生も裸足の荒業を繰り出してしまいましたが続けます。

著者の鴻上尚史氏の名前は一応存じ上げていた。どこかのサイトなり雑誌なりで(Aeraだっけ)人生相談をされていて、その文章が結構好きだったりする。ただ、その程度の知識しかない。これを機会に著作を漁ってみようと思っている。

他方佐藤直樹氏は九州工業大学名誉教授とかいうどう考えても勝手に友人を名乗ることははばかられるような肩書をお持ちで世間学という学問の神様と言っていいと思う。なので、「世間という名の闇に迫る」にはこの人をおいて右に出る人は多分いない(弊社調べ)。そんな御仁が鴻上尚史氏と本を書いたらすごいことになるに違いない…と期待しながら読み始めた。

本は全編に渡って対談方式。対談を大幅加筆したのかそもそも本当にこのご時世に対談したのかは知らん。とにもかくにも対談方式なので読みやすいことは請け合い。

佐藤直樹氏の発言については氏の別の著書「目くじら社会の人間関係 (講談社+α新書)」「なぜ日本人はとりあえず謝るのか 『ゆるし』と『はずし』の世間論 (PHP新書)」などを過去に読んだことがあるので論旨となる部分はすでに知っている。とはいえ、現在のコロナ禍の世相からの新しい視点は興味深い。例えばなぜコロナ感染者に世間が謝罪を求めるか…とか、自粛警察の話とか、他県ナンバーの車を排斥する話とか。最近聞いた話が次々と出てくる。

何よりもこの本が今までの氏の他の著作と異なるところは、鴻上尚史氏と対談したことで、氏の主張が学者ではない別の言葉で語られていること。例えば「贈与・互酬の関係」(佐藤氏)は「贈り物は大切」(鴻上氏)、「呪術性のルール」「神秘性」とより平易な言葉で言い換えられていて、わかりやすいだけでなくより説得力を持つ。

個人的に読みながら首が赤べこになったのは、自粛警察が「自分が絶対に正しいという意識」(佐藤氏P128)のもとに行われているというくだり。なんか知らんけど、最近「確かにあんたの言ってることは正しいかもしれないけどそれは違うんじゃないの」って思うことが多いのよね。特にネット上では。

今までなあなあで済ませていた部分にいちいち噛み付くやつが出てくる(しかもそれが正しい意見だと信じて疑ってない)から、たまに帰省した時に見るテレビでも「あとでスタッフがおいしくいただきました」だの「個人の感想であり効果・効能を示すものではありません。」だのしょうもない注釈がうるさい。こうして遊びの部分を潰して息苦しくしていることに気がついてない。むしろ、極端な意見に「いいね!」がついで喜んでいる節すらある。

この本の素晴らしいところは、このような現状を嘆き倒して終わるのではなく、私達ができる処方箋を本の最後に出してくれていることだと思う。ネタバレを避けるために詳しくは書きませんが、(今私たちが感じている)「息苦しさは、あなたに責任があるのではない」(佐藤氏P175)と明確に書かれている。そして、その原因が何なのかはこの本の中にはっきり書かれている。…まあ、書籍の表題そのもののことなんですけどね。

停電の数時間のうちにすっと読めてすっきりできた一冊でした。ご興味のある方はぜひどうぞ。

おまけ 鴻上尚史氏のTwitter

佐藤直樹氏のTwitter