Brexitの現場を見に行く。ベルファスト訪問記(前)


10月28日。ダブリンにいた私。この日のアイルランドは今年最後のバンクホリーデーでお休み。それに対して北アイルランドは平日。天気は寒いながらも快晴。これらの事実から導き出された結論は

そうだ ベルファスト 行こう

さて、最後に北アイルランドに行ったのはいつだっけか。ダブリンに住んでいたころたまに安いビールを買いに越境してNewryまで行っていた頃があるけどもう10年以上昔。ましてやベルファストなどいつ行ったのか全く記憶にない。よし。行くぞ。

そう思い立ったが吉日だったか凶日だったかは定かではないが、滞在先の最寄りのバス停から始発のバスで街へ。こんな祭日の朝のバスに乗ってくるアホなどおるまいと思いきや、バスはバス停ごとにお客を拾い見る間に満員に。挙げ句に運転手さんが

「バスが壊れたのでここで運転を打ち切ります。後続のバスにお乗り換えください」

後続のバスは別系統のバスが5分後に来たものの、満員の乗客が全員そのバスに乗れるはずもなく、結局私が乗れたのは15分後の3本目のバス。いきなり先行き不安。

街なかでバスを待ちつつお茶でも飲もうかとか思っていたのだが、想定外のトラブルのおかげで着いてみればベルファスト行きバスの発車時刻にほど近い。そのまま歩いてカスタムハウス前のバス停へ。

バス停前には10人も待っている人がいただろうか。結局20人もいなかったであろう、半分くらいの乗車率でベルファストへ。

今回選んだのはDublin Coachという会社の直行便。なんのことはない、前日この会社のバスでダブリン市内の滞在先に向かったときにベルファスト行きの広告が目に入ったというのが真相。この会社は毎時1本ベルファスト行きに直行便を出している。他にもAircoachという会社も毎時1本バスを出し、さらにはもともと国営のバスエーランもバスを出し、それから鉄道もあるという実に競争の激しい区間なのだ。

アイルランドでは四国のようなことが起こっている。つまり、20年ほど前は高速道路などほとんど整備されていなかったので都市間移動は鉄道が圧倒的に優位だったのだが、EUからのお金のおかげでの好景気などに湧き、あれよあれよという間に特にダブリンを起点とした放射状に高速道路が完備され、さらにそれ以外の地方でも高速道路が整備され、単線が中心の鉄道の優位性はまったく失われてしまった。

そう、ベルファストまでのバス。ダブリンを出るや、Dublin Corch社は文字通りのノンストップサービスで1時間50分でベルファストに着いてしまう(他社はダブリン空港に寄るなどの関係で2時間20分設定)。しかも、運賃は事前予約とか面倒なこと一切なしで€10ぽっきり(これは競合他社バスも同じ)。ダブリン空港から市西部のTallaghtに向かうバスのほうが高いとはこれいかに。東京から静岡にほぼ匹敵する160キロの距離で€10ですよ。まあ、東京から大阪までの夜行バスが4000円とかいう話ですからあまり驚かれないかもですが。

まあいいや。また話がどうでもいいところで長くなりつつある。話を進めよう。カスタムハウス前を定刻午前9時半に出たバスはそのままダブリン港トンネルに入り、M1(高速道路1号線)へ。

…というわけです。EUのシェンゲン加盟国同様国境なんてあってないようなものなのです。もしイギリスがEUを離脱するとこの国境をどうするのよ…という問題が発生するわけ。

誰も言い出さないのが驚きなのですが、この問題を簡単に解決する方法があるんです。それは

アイルランドもBrexitの道連れにして一緒にEUを離脱する。

こうすれば、EUの離れ小島のイギリス・アイルランドは仲良くEUから島流しになり面倒くさい国境問題などは一気に解決します。ところがアイルランドでこんなことを言い出す人は(私の知る限り)まったくいません。そりゃそうだ。ダブリンからベルファストまで高速道路が完備されたのも、電信柱が高いのもみーんなEUのおかげなんだから(注:個人の意見で意見には個人差がなんちゃらかんたら)。

今までイギリスの下で植民地としていじめ抜かれていたにも関わらず、EUという後ろ盾のおかげでイギリスに対等に、いや、下手したら数の力でイギリスの上からものを言える国になったアイルランド。誰もBrexitにトゥギャザーしようぜーなんて言うわけがない(注:意見には以下略)。

ダンダークを通り、北アイルランド最初の町Newryの渋滞を抜けると道はDual Carriageway(中央線のある二車線の道)となりここから一気に挽回を図り、さらにベルファスト近くになると高速道路に合流してさらにバスは加速、北アイルランドすげーーーーという感じだったのです。

ところが、20年経ってみると、まずダブリン市内は地下に掘られたトンネル(まあ、途中に出口のない5キロほどの山手トンネルと思ってくだせえ)で街を一気に抜け、そこからしばらく片側3車線の高速道路。ダブリン郊外を抜けると2車線になるものの渋滞知らずであれよあれよという間に国境を通過。

Newryも高速道路ではないもののバイパスになり、そこから昔からあるDual Carriagewayになるのですが、道路の整備状況の悪化が目に見えてわかります。Dual Carriagewayとかいうと響きはいいものの、高速道路と異なり道は平面交差してます(目の前を対向車線からの右折車が横切ったりする可能性があるということ)。何が言いたいって、EUのお金のおかげでダブリンからベルファストに向かうと道がだんだんひどくなる…という完全な逆転現象が起こっているのです。EU恐るべし。

おかしいなあ、ベルファストのお話は読み切りのはずだったのにえらく長くなってしまった。到着後の様子は次回に続く。