【週末日記】ふがふがとカフェでぺちゃくちゃ(下)

自分がダメな人間だと思う理由には事欠かないのですが、その中のひとつは最近出歩かなくなったこと。考えてみたらアイルランドが大好きな日本人が聞いたらなんてもったいないと私を殴るんじゃないかと思う。パブでのアイリッシュミュージックのセッション、スポーツの試合観戦その他休日に出来るいろんなことが「だりー」の一言で却下されてしまうのだ。


かくして、車でたった数分の近所にあるとってもいい店の存在もあえて無視してきた。いや、行ったことはあるし、そのよさも知っていた。だけど、わずか数分の距離が休みになると月ほども遠いのよね。


今日は友達が誘うので、この数分の壁を破って行ってきましたよ。その店に。店の名はAvoca。ええと、日本にお住まいでどんな店かわからんという方、近所の小ぢんまりした2階が衣料品で、1階が食料品というありがちなスーパーマーケットを思い浮かべておくんなせえ。で、2階に吹き抜けを設けてそれ以外の場所をカフェにします。


1階は、1/4づつ仕切ってとっても(アイルランド基準による)おしゃれなデリカウンター、キッチン用品などの生活雑貨、衣料品、さらには園芸用品などを集めた店という理解でいいです。こうかくとコンセプトのいまいちはっきりしないわけのわからん店のように聞こえますが、ほかの店で扱っていないような質のよいものや便利なものを扱っているので私は好きです。問題は値段が高いことなんですけど。

(ね?什器[展示用の棚]なんかもいい感じでしょ。)


キッチンコーナー。うわ、これあったら便利だわ。あ、ドイツの店で見かけたあの商品が置いてある、なにこれ、ほしー…とあっという間にすっかり店と存在が一体化してしまう私。さっきの「だりー」発言はどこに収めるのやら。気がつくとすでに約束の時刻になっている。私は待ち合わせの相手にSMS(テキストメッセージ)を送る。程なく返事が来た。


「今、レインコートを試しているの。数分待ってね(はあと)」


…同じ穴のムジナかよ。


数分後、彼女はキッチンコーナーにやってきた。で、私に衣料品のコーナーに来いという。どうやら気に入ったレインコートを見せたいらしい。


ふむ。ぱっと見レインコートっぽくなく、ひざまでの長さの薄手のコートのように見える。グレーで一軒地味に見えなくもないが、逆に言えば落ち着いた大人の印象。あら、これ、いいじゃん。値段は199ユーロ…たけー(俺には買えん)、え?このサイズはこれが最後?だったら買っちゃえば?


…焚きつけてしまった。だけど、最後の1点なら迷っているくらいなら買ったほうがいいと思う。ところが、日ごろから無駄遣いを自重しているらしく、クレジットカードを家に置いてきたそうな。偉いな。で、彼女、数分悩んだ挙句に件のレインコートをレジに持っていく。をいをい、金ないんじゃなかったのかよ。


「このコート、明日まで取り置きしておいて。お願い(はあと)」


店員さん、慣れた感じで受付票に記入する。そう、この取り置きってセール品でもない限りけっこう普通にやってくれるのよねん。実に便利なんだけど…だったらクレジットカードを家においてくる意味ないじゃん


かくして、上の階のカフェへ。ここがまたいいのよ。まずはね、店員さんがシアワセそうなのよ。どの人も友好的で楽しそうに仕事をしている。おそらく客層がいいからストレスも少ないのではないかと邪推。ホントはスコーンだけで済まそうと思っていたのだが、友人がお昼を食べるというので主体性のない私はそれに従うことにする。


そう。Avocaのスコーン。アイルランドに来たら騙されたと思って食べてみてください。ダブリン市内ならツーリストインフォメーションから30メートルくらいGrafton Streetに向かって歩いたところ(Googlemapにリンク)にあるから。ジャムやバターと一緒に出てくるので、立派なお昼ご飯になるくらいの量もあります。


私が頼んだのはダックのサラダ。これで1500円超はあんまりだと言えなくもないが、おいしい。友人はバーガーを頼む。バーガーは食べてないので保証はできないが、おいしかったらしく、添えもののpotato wedges(フライドポテトと訳していいのか?)もほくほくしておいしかった。ただし、ナイフとフォークを使わない限り口を全開にしても相当汚らしい食べ方になること必至なので、初めてのデートなどで食べることは避けたほうが無難。


昨日の日記に書いたとおり、私の矯正のリテーナーが壊れてワイヤーが固定されていない状態になっている。この状態で食べることは至難の業。あげくにしゃべることに夢中になっているので食べるスピードが牛より遅い。店員さんが何度も大丈夫ですかと聞きに来る。まあ、大丈夫だし、大丈夫じゃなかったとしても店の責任じゃないわな。


やめときゃいいのに、調子に乗ってデザートまで頼む。


私が食べたのはチョコレートケーキ。うわーん。また太った。


友人が頼んだのはアラスカなるもの。雪で作ったかまくらのように見えるメレンゲ風の外側の中はアイスクリーム。なんでも売り切れになるほどの人気商品らしい。


お会計を頼むと、こんなもんがきた。


The damage


被害額…とでも訳すのが適当でしょうか。好きだわー。こーゆー冗談。ちなみにThe damageはコーヒーを含めて50ユーロちょいでした。…どう考えても高いけど、その価値は確実にあると思う。


結局キッチンコーナーで迷いに迷って買った商品はこちら。


ジャガイモのマッシャー。…こんなもんが2000円もします。


んで、家で留守番をしていた同居人ひでかすに例のスコーンをお土産に買うが夕飯が別にあるということで翌日に食べることにする。


翌朝。


私がスコーンを朝食に食べようとすると、ひでかすは岩ノリとキムチでご飯を食べるという(それもけっこうすごい日韓融合の取り合わせのような気がするが)。私はどー考えてもスコーンのほうがおいしそうなのでスコーンを食べることに。結果、食卓はとんでもなくわけのわからん状態になった。


(手前のスコーンは私、奥の魚にのりの佃煮他はひでかす)


別に人が食ってるものに干渉はしない。だけど、キムチのにおいを感じつつ食べるスコーンって微妙なものがあったことも事実。


そして夕飯。前日見たビーフバーガーがすごくおいしそうだったので自作してみました。


矯正装置が壊れていることもあってどー考えてもかめるとは思えなかったので、オープンバーガーにしてみました。ほんでさー、こっちのバーガー分厚いのよ。日ごろは薄めのハンバーグを作るのでこんな分厚いバーガーに火が通るか不安だったのでそうとうゆっくり火を通したら大丈夫だった。

そして翌日。朝の8時半過ぎに矯正歯科に電話する。ここ、なんて訳したらいいのかな。5人くらいの先生が共同経営しているクリニックなのね。と言ってもそれぞれ別々の経営をしている。ただ、受付の電話と建物は共用している感じ。その共通の受付に電話すると…


留守番電話:「当クリニックの受付は午前8時半より…」


せんせー、午前8時半とっくに過ぎているんですけど。


再び9時過ぎに電話。共通の受付がコール10回くらいでようやく出た。


「XX先生ですね。はい、おつなぎ…あ、あそこは10時になるまで誰もいないわよ」


…じゃあ、10時以降にかけ直すわ。


10時半にもう一度かける。共通の受付からようやく私の先生の事務所に電話がつながる。


私:「…というわけなんで、何とかしてください」
受付:「わかりました。それでは今すぐ来てください。なんとか先生に見てもらうように時間を調整しますから」


…というのが私が期待していた展開。もちろん話はそうは進まない。


私:「…というわけなんで、何とかしてください」
受付:「そうですか。じゃあ、来週いらしてください


(絶句)


私:「ら、来週ですか?」
受付:「ええ、今、先生、夏休みなんです」


…おおおおおおおおーい、夏休みだったら、緊急時に代わりの先生とかいるもんじゃないのか。


私:「こんな状態で1週間過ごせというんですか。なんか、他に先生とかいないんですかね」
受付:「お困りなんですね。わかりました。では、来週の月曜日の朝一番にアポをお取りします」


これがアイルランドにおける最大の誠意らしいです。


というわけで1週間、おかしな状態で過ごすことになりましたとさ。ホントにこと医療関係においてはこの国は終わっていると思います。