帰省直前:Dellとのバトル

7月の終わりのある日。重役室に呼ばれたかわいそうな私…と言ってもなにかをしでかしたとかいう話ではなく、コンピューターのサポートを頼まれたのね。


個人的にはそれほどには思っていないが、過去のここにはかけない「やんちゃ話」からこの重役を恐れている人は多い。まあ、恐れてなくても、気をつけるべき点は気をつけないと。重役なんだから、なんかしでかせば私の吹けば飛ぶくらいの首、簡単に飛んでしまうだろう。


で、重役が言うのだ。


重役:「そろそろ私のノートパソコン、新しいのにかえてくれる?」


かしこまりましたー。


めんどくさいことには、この重役さん、会社で使っている統一モデルはいやだと言う(理由:重役だから)。統一モデルの注文なら、Dellの業務用サイトからクリックひとつで注文できて、支払いはアカウントから後払い。簡単便利。だけど、統一モデルがいやだとなると、一度一般用のDellのサイトでマシンの設定をして、それを一度保存して、Dellに送って向こうから正式な見積もりをもらって、それに対してこちらから注文書を送るという、書くだけでも面倒な手続きを踏まなければならない。


Dellのサイトに行って、グラフィックカードあたりに個人的な趣味も多分に入ったマシンを作って、それをDellの担当者に送る。


普通なら、数時間のうちに見積もりが届くのだが、来ない。私も忙しかったので1週間くらい放置。が、いくらなんでもと思って催促してみるとようやく見積もりが届きましたよ。なぜか価格が200ユーロくらい上がった間違った見積もりが。


文句を言うと担当者氏、


担当者:「えへっ、まちがっちゃった。正しいのすぐ送るね」


お願いしますよー。いつものことですが。


Dellの担当者の「すぐに」はいつなのか、私には想像がつきません。またもや1週間ほど放置。


さらに催促のメールを送ると、


担当者:「最初のメールなくしちゃった。えへっ。もう1回送って」


…ナメとる。こいつ。すぐにメールを送りなおす。ところがまた返事がない。さらに今回は、催促のメールにも無視。しかも2回ほど。


あんまりな仕打ちに怒った私は、一度使ってみたかった言葉を使ってみました。


That’s disgraceful!


Disgraceful。不誠実だという意味なんですけど、なぜかアイルランド人がよく使いたがる言葉のような気がします。ひでかすに言わせると女性的な言葉らしいが。さあ、この言葉を使ったメールにどう反応するのか。


返事が高速で来ました。


担当者:「ごめんなさい。でもあなたからのメールを待ってるの」


お前なあ、確かに電子メールは到着が保障されないものだ。だからってメールが来てないとかのこーゆー下手なウソってどうよ。ただし、Disgracefulという言葉には、アイルランド人はどうも敏感に反応するんじゃないかという気がした。あくまで仮説ですが。


さっそく10日ほど前に送ったメールを再送。その時点で木曜日の夕方。翌日は年休でドイツへ(茂吉シリーズの最新版の話のその日です)。この日は珍しくロンドン経由でドイツに向かっていた私は、ダブリンやロンドンの空港からメールを送る。空港で仕事をする人になっちゃったのね。私…。


最後の極めつけ。


私:「一番最初のメールで言ったとおり、この注文は来週の金曜日までに到着していないと困ります。いかなる手段を使ってでも来週の金曜日までに配達してください」


これ、メールを書きながら本人が「無理」とわかって書いてあります。古きよき時代、Dellの工場はアイルランド西部のLimerickにありました。そこからの配達だったらあるいは間に合ったかもしれない。だけど、ポーランドから注文から5営業日で新しいコンピューターを送ってもらうなんて単純に無理。それがわかってなぜ私はこんなメールを送った理由は


ざけんな


という意思表示です。もちろん、重役との約束があったので、向こうが覚えていようといまいと、約束はできるだけ果たしたかったのよねん。かっこつけたことを言わせてもらえば、それが責任ってもんでしょ。


ところが、ここから事態は急転直下、意外な方向に向かいます。


火曜日に、Dellから「工場より出荷しました」というメールが突然届く。のみならず、木曜日の朝に、しっかりノートパソコンが届いた。


Dell、やればできるんじゃねえか。


そうして、ほかの仕事の合間にこのマシンの徹底を済ませて、金曜日の午後3時半、つまり、日本行きのための休暇まであと30分という状態で、ノートパソコンを届けるべく重役室へ。4時の定時に終わらないと、髪を切る予約に間に合わない。かくして、重役室の前にいる秘書さんに


私:「今、重役さん、在室かな」
秘書:「在室だけど今、来客があるからダメですね」
私:「何時ならいいですかね?」
秘書:「4時以降なら」


…髪きりにいきたかったのに…ってホリデー前に定時に帰ろうという考えが甘いのかも。


そして、午後4時きっかしに重役室へ。


私:「お約束をしてました、ノートパソコン、お持ちしました」


すると重役は


重役:「ああ、今忙しいの。月曜日から出張だから。2週間後に持ってきて頂戴」


…俺らのあの苦労はいったいなんだったんですか。


脱力のまま日本帰省記に続く。