【13歳のダブリン留学】(2)語学学校を探す

前回までのあらすじとして、13歳の少年の夏休みの語学留学の手配を安易に引き受けたら夏休みのはずがなぜか来月の3月になり(序章)、航空券の手配に一苦労をした(第1話)…というところまでお話をしました。


再びおさらいです。前回の日記で語学学校に留学するために解決しなければならないのは3つの問題だとお話しました。つまり


(1)航空券の確保
(2)語学学校の確保
(3)ホストファミリーの確保


まあ、通常語学学校に申し込みをすればホストファミリーの確保も同時に終わるわけですが、私の場合、まずホストファミリーを確保、それから航空券を確保したわけです。ということは、残るは語学学校の確保。


まあぶっちゃけこれは難しいはずがない。うちの同居人ひでかすはなんてったって元語学学校勤務。ひでかすの元勤務先に押し込んでしまえば一件落着。なので、この問題はすぐに解決する…はずだった。


…はずだったのよ。件のひでかすの元勤務先の語学学校の校長先生からメールをいただくまでは。


校長:「非常に申し訳ないですが、13歳はあまりに若すぎます。通常の(16歳以上の)大人のコースに受け入れることはできません」


ただ、これだけではひでかすのメンツが丸つぶれと思ったかどうかは定かではないが…


校長:「なので、1対1の個人授業なら割引価格で受け入れることができます」


ふーむ。


ひでかすいわく、校長の言い分はごもっともとのこと。13歳の少年を通常のコースに受け入れたらほかの大人の生徒から苦情が来る可能性があるらしい。ご意見しごくごもっともながら、思わぬところで躓いてしまったことも事実。


まあ、最悪個人授業でもいいだろう。だけどさ、語学学校の醍醐味ってさ、授業を通じていろんな国の生徒と仲良くなることじゃあないだろうか。ぶっちゃけ1対1の授業だけなら日本で駅前留学するのとあまり話の次元は変わらない気がする。


以降、私の調査が始まる。語学学校にメールを送ったり、電話で問い合わせをするが、どこの学校も16歳以下のジュニアのコースは夏休みの期間、つまり7-8月しか開設してないとのこと。電話で断られたほうはまだ良かったが、メールに関してはほとんどすべての学校がなしのつぶて。まあ、いい加減王国アイルランドではいつものこととはいえ、あんまりだよ。


そんな中、市中心部にあるAlphaという語学学校から断りのメールが届く。断っているのは事実なんだけど、メールを書いた人が「ホントにゴメンね」という思いを持っていることが言葉の端々に伝わってくる。この語学学校の質は知らんが、少なくともこの担当者には好感を持った。そこで私は返事を書く。


私:「お返事ホントにありがとう。これはあなたの職務でも裁量でもないことは十分承知してるけど、なにか思いつくことがあればなんでも教えてください。心底困っているのです」


溺れるものはわら人形もつかむ(意味不明)とはまさにこのこと。こっちも必死。すると、ほどなくこの担当者から返事が来た。


私:「もしかしたらもうそうしてるかもしれないけど、MEIに連絡してみるってどう?」


MEIとはアイルランドの認可された語学学校の業界団体。なるほどなあ、これは思いつかなかったよ。というわけで、ここにメールを書く。


半日もしないうちに、二つの異なる語学学校から受け入れる旨のメールが来た。どうもMEIがめぼしい語学学校に私のメールを転送したらしい。ひとつは市中心部のそれで、もうひとつは郊外のBray。個人的にはBrayという町は好きだが、町の西に住むホストファミリーからあまりに遠すぎる。なので市中心部のそれにする。


この語学学校、名前を明かしてもいいんだけど、彼の留学が終わるまでは念のために名前を伏せておこうと思うのであしからず。今現在、16歳以下の語学学校の受け入れ先がなくて困っているという方が万一いらっしゃったら個別に対応しますので作者までご連絡ください…っているわけないか。


ここの担当者のメールはかなり詳細に至るまで書いてあって、なにやら彼の留学期間の3週間のうち、第2週にはドイツ人の少年少女のグループが来て、第3週にはスペイン人の少年少女のグループが来るそうな。このグループに私の友人のコドモを混ぜてくれるそうな。午前の授業はともかく、午後の課外授業に至るまで。それで授業料は3週間で500ユーロでいいって。うーん、どう考えても午後の課外活動は「ほかのグループに混ぜちゃうから金はいいや」っていうのが伝わってくる。これは私にとって渡りに船、乗らない理由はない話。


かくして、私はある日の昼下がり、空港に行く道すがら、この語学学校に授業料を払いに行く。受付はおそらく生徒のインターンを受け入れているのであろうスペイン人。すごく性格のよさそうな女の子。彼女に案内されて職員室へ。


で、セールスの担当の女性と学校見学をして再び職員室に戻る。入学金および授業料、3週間分のバス・電車の乗車券を購入。お願いしておいた通り、入学許可証は出来上がっておりそれをゲット。肩の荷が下りた。


それからなぜか私のことをいたく気に入ってくれたらしく、ついと長無駄話に突入。なぜ日本人の生徒は必ず「日本人の生徒は何人か」と聞いてくるのかとか、こちらの身の上話までいろいろ話す。


そういえばそうだった。十数年前、私がダブリンを語学留学の場所に選んだのは、アイルランドに憧れたわけでもアイリッシュミュージックに興味を持ったわけでもなく、なんとなく、「なんとなく日本人が少なそうな場所」というイメージを持ってダブリンを選んだことは事実。今にして思えばなんでそんなことにこだわったのかがさっぱりわからない。日本人が多かろうと少なかろうと要するに自分のやる気にかかっていると思うのだが。ちなみに、この学校、200人超の生徒がいる中で、現在の日本人は一人だけだそうな。意外なほど少ない。


で、前日にこの語学学校のホムペを見ていたのだが、シロート目に見て垢抜けないというか、無骨というか、あまりいい印象を受けない。ウェブディベロッパーのひでかすいわく、「検索エンジン対策はよくできている」とのこと。そんなことを調子に乗ってついとほざいてしまう。すると、内線でウェブ担当者が呼ばれる。


あっちゃー。


私、にわかITヘルプデスク担当者として、ネットワークやウィンドウズ全般にある程度詳しくなった。だけど、ウェブに関してはずぶのシロート。だけど、私だって伊達や酔狂でアイルランドに10年も住んでません。知ってること、ひでかすから聞きかじったこと、あらゆる知識とハッタリを総動員してなんとか話を合わせる。そうこうしているうちにもう空港に向かわないとヒコーキに乗り遅れるという状況になり慌てて退散。


とりあえず、この話はここで中断。以下、13歳の少年が実際にアイルランドについたところで話は再開。