暴走する「世間」で生きのびるためのお作法

「生きるのが辛い全日本人へ!悪いのは全部、世間です」


私が言ったんじゃないです。とある大学の教授さんが言ったんです。


そのとある大学の教授さんとは九州工業大学で刑事法学、現象学、世間学を教える佐藤直樹教授。実は、この方、私の友人だったりします。


前にも書いたかもしれないけど、人生ってなにがどーなるかわかったもんじゃありません。大学の授業、第二外国語としてドイツ語を履修する羽目になったのですが、このときは「ドイツ語なんて一生使う機会などあるわけねえ!」と馬鹿にして教室の一番後ろで寝てました。結果、ドイツ系の企業に勤め、彼女はドイツ人、もっと言えば今、この日記を書いているのはルフトハンザドイツ航空の機上と来たもんだ。


同じく大学時代には会計学が必修だった。こんなもん人生のなんの役に立つと思ってたら、ダブリンで苦労してようやく得た最初の仕事は会計のお仕事。そんな感じで人生ってホントに何が起こるかわからない。まさか大学教授の友人ができるとは夢にも思ってなかった。だから人生って面白いし、今もし辛いと思っていても明日はどーなるかわからない。だから自殺なんか考えるんじゃない…ってあれ、何の話だっけ?


とにもかくにもね、私のかけがえのない友人の佐藤直樹教授、いや、堅苦しいから以下佐藤センセが講談社から新書を出されたんですよ。


…はっきり言って私はハウツー本と呼ばれる本がでー嫌いです。例えば「競馬で1億円儲ける本」なんてあったら「おめえ、ホントに一億円稼いだんだな」って聞きたくなるし、「あなたの生き方を変える本」なんてあったら「うるせー、お前に指図される筋合いはねえよ」と怒り出す。そんな人なんですよ。なので、暴走する「世間」で生きのびるためのお作法…なんて言われると、あるいは作者が佐藤センセじゃなかったら「じゃかましいわい。てめーから『お作法』なんて習いとうはないわ」とあるいは思ったかもしれない。


だけど、この本はそーゆーくだらない(あーあー、言い切っちゃったよ)ハウツー本ではない。学者らしく世間ってものを冷静に分析している。が、本人を存じ上げている私からは何にも違和感はないんだけど、文章自体はおよそ大学教授という堅苦しい肩書き(この「肩書き」についても本文内で触れられています)からは想像もつかないくらいホントに平易でわかりやすい。そして、「世間」ってもんを分析した上で、各章の終わりで「提案」をしているが、それは決してお仕着せがましかったりするものではない。


佐藤センセいわく、「世間」「社会」は違うもんらしい。そもそも私の住むヨーロッパにも「世間」はあったらしいのだが、800年ほど前のキリスト教の支配のときに否定されて「社会」に変わったんだそーな。


ん?世間と社会は何が違うんだって?世間は「本質的にいえば、三人以上の関係において存在する共同幻想、つまり複数の人間が持つ共同観念で」(本文19ページ)社会は「バラバラの個人から成り立っていて、個人の結びつきが法律で定められているような人間関係」(本文17ページ)なんだそーな。ホントに平たく言えば、社会ってのは「きまり」がつなぐ関係で、世間ってのは形のないもの…なんだと思う。私が佐藤センセの主張を正しく理解できていれば…という前提ですが。


なんかまだよーわからんという方、例えば、ケータイにメールが届いたらすぐに返事をしなければと思う。これって「きまり」じゃないですよね。だけどそう思ってしまうことは世間の呪縛らしいです…ええと、まだわからんという方、はい、私の説明のしかたが下手です。1000円でお釣りが来るような新書ですのでぜひ買ってみてください(結論はそこかい)。