ドイツ式結婚行進曲2,013(5=了)披露宴そして後日談

(作者謹告:今日のは普段の2日分の分量があります。分けようかとも思いましたが、あまり引き延ばすのもどうかと思い一気に行きます。ごゆっくりどうぞ。)


さすがドイツ人と褒めるべきか、午後6時からと言ってあるのに、午後5時半を過ぎた頃からお客さんがやってくる。6時を過ぎた頃には確実に(諸事情により土壇場で不参加を表明した人を除き)全員が集まる。まあ、ドイツ人に限らず結婚式ならフツー遅れないか…。

(はい、前回の写真の使い回しです。文句言わない。)


人がゆるゆる集まってきた時に撮影した写真。人が集まって場が温まると、一生懸命飾りつけをした甲斐もあってか、意外なほどいい感じになった。

(来場のお客さんの記念撮影。このフレーム持たせて撮るのをよく見る)


それにしても来る人の格好もまちまち。男性の場合、もちろんネクタイ姿がいちおうお約束なんだろうけど、下手したらジーンズ姿で来てるひともいるし、ネクタイをしていても、スーツを日頃着慣れていない人は明らかにわかる。ヘタしたら、ネクタイのしてるのにチノパン履いてたりとか。スーツでもなんか七五三みたいなんだもん。まあ、毎日スーツ姿で出勤してるくせに着こなしていない私がどーこーいうのも笑止なのだが。


久しぶりに会う友人と話をしていたら、会場のあちこちから、「シーッ(静かに)」という声が聞こえてくる。何事かと思うと、新婦の父が壇上に立っている。壇上にスポットライトがないので、暗い。むしろ、自分の席のほうが良かったような。

(ステージ上であいさつするおとーちゃん。これでも写真を目一杯明るくしたんです。ホントに真っ暗だった)。


父:「本日はお運びいだきありがとうございます。ごゆっくりお楽しみください」


…ぼそぼそと喋ったので定かではないが、そんな感じの決まりきったあいさつをしたらしい。面白くもなんともないのだが、反面、私の彼女と二人で、「おとんは絶対あいさつなんかしないよね」と言い合っていたからあいさつをしたという事実に二人で顔を見合わせる。


それが午後6時ちょい過ぎ。以降午後7時まで完全放置(日本ではありえないですよね)。午後7時なると、新郎が係の人と二言三言話を交わす。するとゆるゆると立ち上がり、またぼそぼそと


新郎:「本日はお運びいただきありがとうございます。ビュッフェ形式の食事の用意が出来ましたのでご利用ください」


…また面白くもなんともないあいさつ。なんか日本で売ってそうな「決定版、心に残る3分間スピーチ」とかいう本でもこの二人に贈ってやろうか(日本語読めないけど)。


実はこの新郎の気の利かないあいさつ、あとあと問題になる。しばらくして、もっとも気のおけない友人が私の彼女のところに来てぷりぷり怒っているのだ。何かと思って聞いてみると、


友人:「ちょっとー、さっきのあいさつ何よ。フツー友人のいろんな努力に対してひとことお礼を言うもんじゃないの」


自分で言ってりゃ世話ねえやと思ったが、いや待て、言ってること自体は非常に正しい。昨日は仕事を休み、今日だって昼前から会場の設営に来てくれた友人に対してお礼を言うのは礼儀だと思う。


間に挟まれて困ったのが私の彼女。私に


彼女:「どうしよう」
私:「どーもこーもねーべ。ちゃんと(新郎新婦に)伝えなよ」
彼女:「でも、お祝いの席に水をさすことになりそうだし」
私:「あとあとまで尾を引くよりいいと思うけどね。俺なら言うね」


すると、彼女、姉のところに行き、二言三言。新婦さん、立派でした。あとでちゃんとフォローを入れるあいさつをしてました。結果としては言ってよかったということに。まあ、この夫婦の今後の関係が見て取れる結果になったなあと思う。


話を戻します。こちらが噂のビュッフェ。


冷たいものと暖かいものの別れており、冷たいものは事前に潜入してきれいに撮影出来た。


…が、暖かいものはその場で撮ったのであまりきれいではない。


それにしても、まあ、なんというか


肉肉肉


このビュッフェにみんな何回もおかわりに行くわけよ。あんたらさあ、そんだけ食ってりゃそりゃぶくb(ドイツ関係機関によると思われる通信妨害につき聞き取れず)。


私は、最初は魚で、2回めにちょっと肉を食べて満腹。


今、改めて写真を見なおして思うんだけどさあ、このビュッフェ、よくも悪くも鉄板だわ。どのパーティーに出てもこうだろうという感じのビュッフェ。味は個人的には可も無く不可も無く…というか、いつものビュッフェの味だったけど、他の人には好評だった。「手作りで美味しかった」って。いやいや

(右下の物体。よーするにインスタント麺です。これがサラダ…。)


なにこのインスタント麺のサラダとか(これをサラダと臆面もなく言うところがある意味感嘆に値すると思う)


絶対に冷凍としか思えない人参とか…手作りなんですかね。


などと重箱の隅をつつくのはたいがいにして、話を続ける。先は長いんだから。


ところで、さっきの写真の一枚にとんでもないものが写りこんでいたことに気がつきました?

(別角度より。うん。ウナギだわ。)


ウナギ。


これね、新婦のとーちゃんに言われるまで気がついてなかった。見に行くと、あるよ、うなぎ。しかもぜんぜん売れてない。


どうもドイツ人にとってもうなぎはキワモノ、もっと言ってしまえばややゲテモノの種類に分類されるらしい。だとすれば、この席にたった一尾だとはいえ、うなぎがあったことは驚きに値すると思う。食べてみた。脂が乗っていて実に美味でありました。新婦のおとんとふたりですっかり意気投合した脇で私の彼女が微妙な顔をして見ていた。彼女いわく、「よくそんな脂っこいものを食べられるね」と。


そのあと、友人がパワーポイントを駆使して作ったスライドショーが上映される。二人の趣味だとかそんなのと、ありがちな子供の頃からの写真を使った成長記。悪く言えばありがちだけど、よく言えば、これはお約束ネタ。よく出来ていた。


さらにしばらくして、私の彼女が主催で「ゲーム」が行われる。これがまあ、さすがドイツ人というべきか再びお約束ネタ。以下、情景を想像してくだされ。ってか、おそらく日本の結婚式でも、似たようなことしてるんじゃないかな。


まず、ステージに椅子を背中合わせに2つ置きます。そこに新論新婦を(当然背中合わせに)座らせます。そして、二人に各々赤と青の2枚のカードをもたせます。これで準備完了。


で、ゲームの運営(私の彼女)が、30問くらいの質問を次々としていくわけ。で、赤は新婦、青は新郎を表して…


運営:「お酒が強いのは(新郎新婦のどっち)?」
運営:「掃除をするのは(新郎新婦のどっち)?」


などと聞いていくわけ。たまに、新婚さんいらっしゃいの桂三枝が大喜びしそうな下衆なネタも含めて二人の意見の不一致があったりすると会場がわっと沸くの。まあ、他愛もないゲームですな。


この結婚式には司会者というものがいない。新婦の父がぼそぼそと開会の辞を述べ(これすらない場合がある気がする)、新郎が「食事の用意ができました」と言い、新婦がちょっとマシなスピーチをした以外は誰も全体に向けて話しかけてない。今までの経験からすると、おしゃべり好きの人が、ワイングラスをちんちんとたたいて短いスピーチをする場合もあるけど、それすらなかった。こうなったら俺様がスピーチをしてやろうかとすら思ったが、ドイツ語に自信がないので自重した。


そのかわり…というと変かもしれないけど、私の彼女が別のゲームを仕切った。そう、どうも彼女はゲーム担当だったらしい。そのゲームとは


椅子取りゲーム。


私が最後に椅子取りゲームをしたの…たぶん幼稚園のときとかだぞ。これを大の大人が真剣に興じている姿はなかなかの圧巻だった。


そのあともひたすらにだらだらとだべったり踊ったりで時間が過ぎてゆく。日付が変わるころから子連れの家族などが帰り始める。1時ごろになると、残っているのは気のおけない友人などばかりになる。この頃になると、もう残っている人は(車を運転する人を除き)完全にへべれけ。…なのに、無駄に酒を頼んで乾杯を繰り返している。コドモのころの私なら、「このヨッパーめ」と顔をしかめたに違いないが、今ではその一員になってしまっているんだから、タチが悪いというかアホだというか。


結局私が解放されたのは午前3時。と言っても、まだ私の彼女ほか友人関係は残っていたが、私にはもう無理。帰ります。


翌日。昼ごろにのそのそとけだるそうに起きてきた家族全員(と私)。そこにあるものを見て私は絶句した。


夕べのご飯の残りの山(写真がないのが残念です)。


もって帰ってきたんかい。


はい、まあ、おいしくいただきましたよ。ただ、この山をそのあとどう処理したかはダブリンに逃げ帰った私は知らない。知りたくもない。


で、まあ、そのあと新郎新婦がご祝儀とかお祝いの品とかの整理を始めた。この「お祝いの品」にはい注目。


なんか知らんけど、お札が折り紙として折られてませんか?

(これはご祝儀の「貯金箱」。2ユーロ硬貨だけでン百ユーロ入っていた。)


そして、ご祝儀。これ、「お祝いの品」を渡した人がさらに現金を渡したりとか、あるいはお祝いの品を渡してない人が現金だけ渡すとか、まあ、いろいろみたい。で、さあ、バラしていいのか知らんけど、中身もいろいろなのよ。ン百ユーロも入ってる人がいたかと思えば、私が絶句した人では、10ユーロ(1300円)しか包んでない人もいた。


1300円ですよ?日本の常識からは考えられない金額です。まあ、きれいごとを書けばさあ、本当に仲のいい友人で来てくれただけで嬉しいんだ、ご祝儀なんかいらないんだ…とかいうことだってあるだろう。だけど、あえて日本の常識を持ち出せば、結婚式に包む金額、1万円が最低の線で、それも事と次第によってはいかがなものかと思われることもあるような。そんなわけで、私の感覚からすれば、10ユーロは常識の範囲外。なのに、この新郎新婦、別に気に障った様子もなく…


新郎:「XXさんは10ユーロ」
新婦:「10ユーロね。_〆(・ω・` )カキカキ 」


とやっている。あとで私の彼女に聞いたら、


彼女:「ああXXさんは今仕事なくて大変だし、いいんじゃない?」


とこちらも気にしていない様子。この「アレバダスの法則」で恥ずかしくないっていいなと密かに思った。とりあえず、なんだかんだで、温かい結婚式だったので私は良かったと思う。セーブして食べたつもりだったのに2キロ太って帰ったのはショックだったが(数日で元に戻りました)。ご両人、いつまでもお幸せに。そして、こんなところで勝手にネタにして…すまん。