人材派遣紹介業の氷河期

この不況下、もちろんいろんな業者、業種が影響を受けていることは疑いの余地のないところですが、その中でもひときわ大きな影響を受けているのは、人材派遣、人材紹介業だと思います。


以下、日本にもなじみのある人材派遣という言葉を使うために「人材派遣紹介業」としますが、これ、日本のそれとはちょっと異なります。私が知る限り、日本での人材派遣業ってのは、労働者(人材)を派遣業者が登録しておいて、会社や工場などの求めに応じて適材適所な人材を一定期間派遣する…って感じですよね。


アイルランドにもそういうのはあるんですけど、それよりもより一般的なのは人材紹介。労働者(人材)を派遣業者が登録しておいて、会社や工場などの求めに応じて適材適所な人材を…ってとこまでは一緒なんだけど、適材適所な人材を紹介する…って感じなんですよ。ものすごーく平易に言えば、人材を「貸す」「売る」かの違い。


私もこの人材派遣紹介業者に二度ほど「売られ」ました。紹介手数料の相場はその人の給料の一か月分。つまり、月収400万円の仕事を紹介すれば、おおよそ33万円の収入です。怒られるかもしれませんが、こんなちょろい仕事がどこにある。履歴書を労働者から集めといて、企業の求めに応じて労働者に電話かけて企業に面接に行かせて採用されれば給料1か月分の手数料。企業は人がほしくてしょうがない。また人はよりよい条件を求めてコドモが飛び石遊びをするように転職を続ける。かくして、アイルランドがバブルのころにはそりゃーもうたくさんの人材派遣紹介業者がわが世の春を謳歌しておりました。


私が思いつく限り、労働者を探している企業側から見た人材派遣紹介業者を使用する価値は、問い合わせの電話の数が減る(直接広告を出さない)、人材がある程度ふるいにかけられてくる(人材派遣紹介業者だって手数料がほしいから採用されると思われる人材を紹介する)くらいでしょうか。不況になり、どっかコストカットすべえ…となると、この人材派遣紹介業者の利用はいの一番に削減対象になりそうです。実際、私の勤める某社、社員からの知人友人紹介方式に変更されました。ちなみに社員一人を紹介するといくらかのボーナスが入ります。


かくして、景気の波をもろにかぶるこの人材派遣紹介業、私を最初に売った老舗の人材派遣紹介業者がどーなったかというと…


(バスの中より撮影。見づらい写真で申し訳ありませぬ)


廃業。


人は切られる一方。失業率は12%になるとかならんとかいうとんでもない状況下、人材派遣紹介業者は一気に氷河時代に突入。生き残りをかけて、今までまったく取引のなかった業者から人事部への直通ではなく会社の代表電話にばんばん「人探してませんか」という電話がかかってくるらしい。で、電話じゃ埒があかんと思ったのか、最近じゃ人材派遣紹介業者の社員が飛び込みセールスに来る始末。

さて、ここでようやくなぜ私がこの話を始めたかが明かされます(って別にたいした理由じゃないけどさ)。私、自分の仕事の性質上、けっこう会社の中を歩き回ってるんですよ。で、当然会社の入り口の受付の前も通ります。たまーに、受付嬢が不在でタイミング悪くお客さんが来た…ってことがあるのよ。同僚の一部は知らん顔して通り過ぎるけど私にはそれができない。スーツ姿のお兄さんがいたので御用の向きを聞いてみると、人事部に話がしたいという。人材派遣紹介業者だとか。アポなし。すぐにピンと来た。セールスだ。


心優しい(自称)私は人事部に内線電話で聞いてあげましたよ。


人事部:「採用の予定はないからお引取り願って」


…だろうな。


かわいそうな人材派遣紹介業のお兄さん、こんなものを置いて行ってくれました。


人材派遣業者の宣伝セット(ハンガーにボールペンにストレスボール)。


このハンガーっていうシャレ、私は好きですけどね。


Candidates tailored to you
(テイラーメイドな人材を企業に=超意訳)


よく見るとこの会社、人材派遣紹介の最王手のひとつ。この会社ですらこんなどぶ板営業をして生き残りを図っているとなると、中小の派遣業者はいったいどーなってんでしょうか。