ちょっと聞いてよ。おもいっきり生強盗

仲のいい同僚のお父さんが強盗被害に遭いました。ひでー話なんですよ。ちょいと聞いてくださいよ。


その方、もういい加減年金生活に入っていてもおかしくない60代後半のお父さん。本人曰く「不況で退職できん」とのこと。何度か家に遊びに行ったこともあるのでご本人も存じ上げているのですが、いかにもという感じのダブリンの下町のお父さんで気さくで陽気な方です。お父さんは数十年にわたりダブリンで個人タクシーの運転手さんをされてます。


基本、ダブリン中心部の夜はヨッパーなどを含めて治安が冗談にもいいとはいえない状態になるので、このお父さん、バスや鉄道が運行を終了した深夜時間帯は稼ぎがいいにもかかわらず安全を第一に考えて早朝5時から働き始めるんだそうな。


その日も朝の5時に運転開始。15分くらい流しで運転して、あまり治安のよくない地域で、ようやく最初の客を拾えたんだろうな。これまたあまり治安のよくない地域に向かってくれと。そこに到着すると二人組は強盗に豹変。金を出せとはいわれてものの、この二人組がこの日の最初の客(客じゃないのか。強盗か)、売上金などあるはずもなく。それでも財布の中の有り金全部差し出したらしいです。で、ここで話が終わりになればいいのにそうはならなかった。この莫迦強盗二人、差し出された金額が少ないことに腹を立てたかどうかは定かじゃないけど、お父さんの背中と手をぶっ刺しやがったの。


お父さん、そのままなんとか車を運転して最寄りの警察署へ。そこで、救急車等が呼ばれてようやく病院に担ぎ込まれた。ひどいと思いません?金出したのに刺されるなんて(もっとも強盗という犯罪そのものが卑劣な犯罪なんですけどね)。お父さん、全治一ヶ月の大怪我。特に切られた左手の指は、神経が戻るかどうか微妙なほど深く切られたそうな。


ちなみにこの事件、新聞には載りませんでした。あまり考えたくはありませんが、もしかすると新聞沙汰になるほどのことでもないダブリンでは「よくあること」なのかも知れません。


とはいえ、父親が刺された私の同僚は怒り心頭(そりゃそうだ)。だけどさあ、正直犯人が検挙されることはまずないだろうなあと思ってた。ところが、週末をはさんで数日後に、意外や意外、二人のうちの一人が検挙されたという知らせが。なんでも、犯行現場がばっちり街中の防犯カメラに映っていたそうな。ここは推理だけど、捜査員には見慣れた「常連」の犯行だったのではないかと。一人が捕まったことで、当然もう一人も早晩検挙されることになると思います。


そんなわけで、同僚が犯人検挙を喜んでいるかといえばそうでもなく


同僚:「犯人が捕まっても、怪我の治りが早くなるわけじゃないもんねえ」


…ごもっとも。こうやって考えると、犯罪被害者の怒りのやり場ってどこにもないですよね。


ちなみに刺されたお父さん、一時は心配された左手の指の麻痺もなんとか元に戻りそうです。私なら仕事をやめることも考えそうですが、お父さんはそれでも今日もまた同じようにハンドルを握ってダブリンのどこかでタクシーを運転されているはずです。


そんな怒り心頭だった同僚にほかの同僚が送ったプレゼント


ペン立て。


心臓にペンが刺せるのがポイント…って、こんなもん売ってるんですね。穏やかじゃない。