【ドバイ出張記20】だんだん見えてきた。ドバイの素顔

日曜日。なんか日曜日にフツーに仕事に行くというのが感覚的にありえないのだが、そんな私の違和感をよそに会社はフツーに始まる。


毎朝11時に売店にオロナミンCを買いに行っていたのだが、3日目の木曜日には何も言わないうちからオロナミンCが出てくるようになった。


この日のお昼ご飯。そうそう、会社の食堂というか売店、インド人経営の会社らしく、毎日インド風の料理。ちなみに値段はAED12(250円)とお買い得。


お昼ごはん写真集。


退社後、ホテルの近所に住んでいるというフィリピン人の同僚がアパートに招待してくれた。わーい、ここに住んでいる人がどんな暮らしをしてるかつぶさに見られるぞっと嬉々としてついて行く。


この同僚の家賃は月にAED1000(2万円ちょい)と意外と安い。ドバイという場所柄もっと高いかと思っていた…という私はとことん甘かった。


同僚が向かったのは表通りに面した7階建てのアパートの5階。築2-30年以上経っているのか、お世辞にもきれいとは言えない。扉の向こうには荷物が山のように積んであるリビングと、廊下のような台所、そして、2つの寝室。ここに、12人のフィリピン人が住んでいるらしい(さすがにネット上に写真を載せるのは自重します)。


えっ?


どこから話し始めたらいいのやら。まずね、ドバイという街、クリーク(入り江)のあちら側とこちら側で完全に分かれてしまっているのだ。ブルジュ・ハリーファ(Burj Khalifa)やドバイモールにエミレーツモールという観光地が目白押しとなっている新しく開発された地域と、昔からある地区は、それこそ別の国のように分かれてしまっている。


ドバイの街の8割だかの人間は外国人。で、その中でも恵まれた外国人は、新しく開発された側の空にそびえるアパートの一室を借りて、優雅に暮らし、あまり恵まれていない外国人は、昔からある側でお世辞にも豊かとは言えない生活をしている。


そう思うと、免税のはずなのに、ヨーロッパとほとんど値段の変わらないドバイモールと靴下4足200円のホテルの脇の格安店の価格差も納得できる気がする。


この日の「庶民の」夕飯。1本5AED(100円)なり。


さらに、近所の店でこんなもんを買ってきた。


…なりきりアラブセット。


いや、これ買うのにちょっと躊躇がなかったとは言わない。観光客がこんなもんを買ったら地元の人は気を悪くするんじゃないだろうかという思いがなかったわけじゃないのよ。だけど、そんなのはまさに杞憂だった。これ選んでたら、店員さんが嬉々としてやってきて商品説明してくれたもん(もっとも、その店員さんはフィリピン人だったというオチはあるのだが)。しかも、ドバイの空港に堂々とおみやげとして売られてたし。


人それぞれ好みの違いなどはあるのだろうけど、私は町のこっち側に泊まってよかったと思っている。


そして、翌朝月曜日。ホテルの車寄せにタクシーが待機していない。さて、どうしたもんかと思ってたら、ドアボーイが「もしあちらのタクシーでよければ」と指差した先にあったのは行灯(天井のサイン)のついてない車。中の運転手さんは「だいじょうぶです。メーター式ですよ」とメーターを指差す。時間もないことだし、乗る。


運転手さん、えらく英語が流暢なのだ。聞けばスリランカ人で最近までアメリカ大使館に勤めていたのだが、「諸事情により」大使館を辞めてタクシーの運転手さんになったらしい。このことは家族も知らないんだそうな…って、勝手に行間を読ませてもらうとそれって何らかの理由でアメリカ大使館をクビになったってことじゃないの?


まあ、そんな下衆の勘ぐりはいいとして、この運転手さん、非常にいい運転をしまして、気持ちよく会社に到着…したのだが…なぜか料金は通常の1.5倍。それでもAED45(1000円しないくらい)のセコい話なのだが。

種明かしをすると(翌日わかったこと)、このタクシーVIPタクシーというらしい。基本流しはやらないでホテルや会社などからの送迎をするらしい。そして、運賃は倍するとか(私の場合は1.5倍だったんだけどね)。


そうだ、この運転手さんに興味深いことを教えてもらったんだった。ドバイのタクシーは15000台。そのうち、日産と韓国の現代自動車が約2000台づつ、そして、残りはトヨタなんだそうな。確かに私が見た感じの実感とも一致する。ともあれ、ドバイのタクシーのほとんどは日本車といっても間違いではない。それだけ日本車が信頼されているということはやはり日本人としては嬉しいことだと思う。


この日のお昼休みは、会社の重役連中のランチに招待される。近所のゴルフコースのレストラン。ナイフとフォークでのお食事。ここで、重役連中と雑談をしたのだが、そりゃあもう驚いた。話が通じないのだ。まず、冗談のつもりで「あーここは(スプーンじゃなく)ナイフとフォークで食事できるんですね」といったら通じない。どうもナイフとフォークが出てこないような安い食堂で食事をしたことがないらしいのだ。そして、私がDeira地区のホテルに滞在しているというと目を丸くして「なんでそんなとこに泊まってるの」と聞いてくる。まともなお店もないし、レストランだってないじゃないかと。


そう、ここは、街も人も金持ち地区と庶民地区に完全に分けられてしまっているらしいのだ。金持ち側の人に言わせると、4足10AED(200円)の靴下はまともな店のまともな商品とは冗談にも言えず、ドバイモールなどのモールこそがまともな店らしいのだ。


いや、ダブリンだってね、金持ち居住区と庶民居住区ってある。だけどね、街中は「こっちは金持ちエリア」みたいな分かれ方はしてない(それほど街の規模が大きくないというのは確実にあるけど)。なんだかドバイというある意味異常な街が少し見えてきた気がした。私に言わせりゃ、飾りっけのない下町のほうが断然好きなんだけどね。