イースターファイヤーや兵どもが夢のあと


イースターがもうすぐ終わり、明日からまた仕事…しかももう問題山積なことがわかりきっていてとっても憂鬱な連休最後の月曜日の夜。たまには更新しておこう。

2年ぶりにイースターがやってきました。…いや、これじゃすごく不適切な表現だな。去年も一昨年もイースターはやってきた。だけどやれロックダウンだ何だで人に会うわけでもなく静かに過ごしたのです。

が、徐々にコロナ関係の規制が緩和され、ついにはマスクの着用義務もなくなり、ついに今年はイースターファイヤーが村外れで実に2年ぶりに焚かれたと。コロナ前も行かないことのほうが多かったんですが、2年ぶりともなるとなんとなく様子を見たくなり、行ってきました。

まずその話の前にマスクの話。3月の半ばでドイツの国単位でのマスクの着用義務はなくなったのですが、州独自の規制として今月の頭まで延長されました。んで、2週間ほど前にその規制が撤廃されたのですが、ここでややこしいことになった。つまり、州単位での一斉の規制はなくなったものの、マスクの着用は店独自などで義務とすることは可能。かくして、うちの近所のスーパーの入口にも

未だに入店時マスク使用義務のお知らせが。当然店独自ルールね。

こうなるともうどうなるかは想像つきますよね。日本でも何度もニュースになったマスクをしていない客と店とのバトルが勃発。ただ、お客が神ではないこの国では「嫌なら出ていっておくれ」と店の側が強く出られるのでそれで話は収まるようですが。

そんな規制が完全になくなったとはいえない状態で迎えたイースター。イースターサンデーのイースターファイヤーはどうなったのか。

その前にイースターファイヤーってなんぞや…ってところから始めないとだめですよね。なんか日本語で良い説明はないかなと探したらあったあった。というわけで、興味のおありの方はドイツニュースダイジェストというサイトの記事を読んできてくださいな。

(ドイツニュースダイジェストより転載)

北ドイツや中部ドイツでは、夜にイースターファイヤーを燃やす。集めた小枝をできるだけ高く積み上げて火をつけるのだが、てっぺんに藁でできた魔女の人形を飾るところも。火の周りでは市民が集い、ビールやホットワイン、バーベキューなどを愉しんで憩いの場となる。悪霊から守る意味や、灰によって肥沃な土地になるようにとの願いも込められているとか。翌日まで徹夜する地方もある。

(転載ここまで)

上のサイトでは土曜日のイベントとされていますがおらが村では日曜日です。この近所の村でも土曜日だったり日曜日だったりするらしいですが、おらが村では日曜日なのでそれを基準に勝手に話を進めます。

ほかは知らぬがおらが村でのイースターファイヤーが始まるのは日曜日の午後7時。かなり大きな火を焚くので村外れの広い場所でやることになる。この場所まで村の外れから1キロほどの道のり。しかもうちは村の反対側の外れだからさらに村を横断することになるので徒歩だと30分近くかかる。7歳の姪っ子を含め大人数でだらだら移動。

村外れのさらには畑の外れにある現地につくと、まだ午後7時の開始時刻前なのに人が集まってます。おらが村にこんなに人がいたのね…と驚くレベル。ただね、お前が引きこもりだからだろ…と言われれば返す言葉もないのですが、見知った人がほとんどいない。あるいは村に家族を連れて帰省している人が様子見にやってきているとか真相は不明。多くの人はすでにビール片手にいい感じになっている。屋外ということもありマスクをしていた人はゼロ。Nil。Null。2年以上にわたったコロナの収束(少なくとも「収束の始まり」)をついに肌で感じました。

それはともあれこちらが火をつける前のイースターファイヤーです。左端の方に人が写っているのでその人と比較されるとこれがいかにでかいかおわかりいただけるかと。なんか日本の夏のキャンプファイヤーとの大きさの違いを感じていただけるかと。そういえば小学校でやったキャンプファイヤーでは古タイヤ燃やしてたな。今じゃダイオキシンがどうこうと大問題になること必定。80年代という昭和の終わりの九州の片田舎でのお話です。

ちなみに引用元によれば「てっぺんに藁でできた魔女の人形を飾るところも」あるらしいですが、おらが村にはそのようなものはありませんでした。日本的に言えば五穀豊穣を願う火なんでしょうね。

もひとつちなみにこれらの木はイースター前に各家などを回って集められたものも含まれています。かくして家の庭木の処理にも一役買っています。なにせ庭で勝手に火をつけることのできない国ですから。

(後ほど撮影したので時系列的にはおかしいですが、細かいことは気にすんな)

村の消防団の消防車も待機中。こんなところで仕事をするよりもう博物館に展示されるべき車ですね。実は村の消防団の重大な任務は万一の際の消火はもちろんですが、ビールなどの飲み物の販売、さらにはバーベキュー担当です。消防車の中にはビールほかが満載。きっといざという時にはビールで消火するのでしょう(ない)。

ちなみに消防車はもう一台来てまして、もう一台はとある目的の人たちを村までピストン輸送しています。さてここでクエッションです。消防車でピストン輸送されるのは一体どんな人たちなのでしょうか。

ヒントですか?行き先は村の消防団の詰所です。詰所にある設備を使うためですね。あとは2段上の文章にもキーワードがありますね。

どなたかスーパーひとしくん人形で挑戦される人がいるかは疑問ですが、引っ張っても仕方ないので答えです。

答え:トイレへのピストン輸送

(参考画像。このイースターファイヤーの場所にあったわけではありません)

推定数百人の人が集まっているのに簡易トイレの用意がないんですよ。なので、差し迫った事情のある人はビールの売店で消防団の人に申し出るという羞恥プレイが必須となります。しかもですよ。このピストン輸送は女性限定!男はといえば、ほら、薄暗くなってきたし、そのへんに藪はいくらでも…。うん、みなまで書くのは勘弁してやろう。もうこうなると公衆衛生はコロナ以前の問題よね。

そのピストン輸送をお願いする羞恥プレイが本来の目的ではなく、本来その場所はビール他を買う場所です。ちなみに330ml入の地元ビールは€1.5と割と良心価格でこのどインフレの中でも3年前の価格を維持。問題は…冷蔵庫などに入ってなかったビールはややぬるい。冷蔵庫などが普及していなかった頃の昭和のお父さんたちはこんな温度のビールをありがたく飲んでいたんだろうなぁと三丁目の夕日の時代を期せずして偲ぶことができます。

そんなアホなことを言っていると、いつの間にか午後7時を回っており、いつの間にか火がついてます。日本なら「只今よりキャンプファイヤーに火をつけます」なんてアナウンスがありそうですが、こちらでは静かに気がつくと火がついている。…ってか煙がよりによって私達のいる場所めがけてやってきているんですが。めっちゃ煙たいんですがっ。とりあえず身の安全を確保するため退避します。

避難した反対側より撮影。

♪もーえろよもえろーよー

…って歌ってる場合じゃない。日本の基準ではこれはもはや火事です。もちろん充分な距離は取ってあるのだろうけど、後ろのトイレ藪に燃え移ったらもはや山火事確定です。それでなくても温暖化の影響か雨が少なく森が乾いているんだから。

こうして生ぬるいビールを飲み、有料のバーベキューを楽しんでいると(ちなみにお昼ごはんをたっぷり頂いた私はバーベキューには手を出さず。こっちの人たちの胃袋は一体どうなっているのやら)日も暮れてまいりましていい感じになってきました。ここで7歳児のいる私たちはそろそろお開きということに。もっとも長くいたところでなにかイベントが起こるわけでもなくだらだら過ごすだけなのである意味いい引き際だと思いますが。

帰宅後気がついたこと。髪の毛その他がかなり煙たい。まあ、あれだけの煙を浴びれば当然の帰結ですが。

こちら翌日。イースターファイヤーや兵どもが夢のあと。未だに煙がくすぶっていましたが、消防団の方のご尽力があったのかゴミ一つ落ちてませんでした。