BrayのCliff Walkに行ってみた


土曜日の朝。ダブリン市内某所で伸び切った髪を切ってもらっていた私。洗髪台の天井に備え付けられていた天窓から見える空は青かった。

 

そうだ 海 行こう

 

私は、すっきりした髪とともにさっそうと駆け出した。海へと。

 

…なんてぜんぜん決まってないんですよ。散髪料金49ユーロをクレジットカードで払おうとしたらクレジットカード会社より拒否される。

 

私に言わせると、クレジットカードの利用を拒否されることほどカッコ悪いことはない。こと行きつけの店では。いや、行きつけじゃない店だと「何こいつ盗んだカードでも使おうとしてるんじゃないの」とでも疑われるのがオチだろうから同様にカッコ悪い。

 

いきなりそれた話をさらに逸らして恐縮なんですが、学生の頃バイト先の某家電量販店で、外国人観光客のクレジットカードがよく拒否されてた。今にして思えば、海外でのカード利用が止められていたのに気がついてなかったとかいうオチなんだろうけど、お客様としては不愉快に違いない。

 

なので、その度に無駄と知りつつ(決定が覆された試しはただの一度もなかった)オーソリセンターとやらに電話してたんだけど、当時これってAuthorisation Centreの略だということに気がつかず、クレカを拒否されてOh Sorry Centreだと誤解していた。私がアホなことを疑う余地はないが、なんでも略すな日本人…と逆ギレしておきます。

 

とりあえず、話を戻します。

 

そうだ、俺、クールになれ。落ち着け。

 

私:「じゃあ、現金で」

 

…と思ったら、財布の中にたった50ユーロの持ち合わせがなかった。いい大人の財布の中に6000円ちょっとの持ち合わせがないという事実。情けないの一言に尽きるわ。

 

結局日頃は使ってないキャッシュカードのデビットカード機能を使い事なきを得たのだが、実は思い当たるフシはあった。数日前にSASがっすのスカンジナビア航空サイトで航空券を予約しようとしたときにカードの利用が拒否されたのだ。またSASがっすのスカンジナビア航空のお戯れ…くらいに思って大して気にもとめていなかったのだが、どうもSASがっすのスカンジナビア航空さんは無罪らしい。

 

外に出るなりクレジットカード裏に書かれたカスタマーサービスセンターに電話。土曜日の朝、「週末はお休みです」とか自動音声で言いやがったらぶん殴ってやろうと思っていたが果たして電話はオペレーターにつながった。もちろん、「XXの方は1を…」というあのくそ自動音声ガイダンスに数分つきあうハメにはなったのだが。

 

カスタマーサービスからセキュリティセンターに転送される。

 

本人確認のあと…

 

「ああ、Snigel様ですね。4月10日にカードの利用を一時停止させていただきました。その旨、お客様のケータイ、087124567にテキストメッセージを送らせていただきましたが」

 

…アホめが、一桁抜けてんじゃねえか。アイルランドのケータイの番号は10桁なんだから気づけよ。こんなだからこの日記でさんざんBank of Idiotとか言われるんだよ。もっとも、カードが止められていることに数日気がつかない私のほうが斜め上のアホだが。

 

「不正利用を疑われるカードのご利用がありましたのでご利用を停止させていただきました」

 

またかよ。過去に何度かあったなあ。今度は何よ。

 

「オンラインのゲームサイトにて9.99ユーロのご利用が…」

 

あ、それ、私です。

 

なるほど。ゲームサイトなんかでカードを使ったから止められたのね。まあ、その姿勢そのものは間違ってない気がする。ただ、止めたら持ち主に連絡してよ。

 

そののち、最近のカード利用の確認後に晴れてカードの利用が再び認められる。数分後にBoots(薬局)でカードを使ってみたら問題なく使えた。

 

こうしてクレジットカードを取り戻した私は、海へ。なんかいきなり躓いたなあ。

 

時刻表の確認すらせずにPearse駅に向かったところ、1時間に1本しかないGreystones行きのDART(近郊列車)に乗り遅れる。エスカレーターでホーム階に到着した時にはまだ電車はホームにいたのだから、飾り荷物をふり捨てて走り出せばあるいは間に合ったかもしれない。まあ、別に急ぐ旅じゃない…と負け惜しみ。

 

この車両、なんと日本の東急車輌製造(当時)製。あまり日本の電車っぽい顔をしてないですよね。

 

このダブリン湾に沿って走る近郊列車DART(Dublin Area Rapid Transit)は現在土曜日の朝は15分おきの運行らしい。15分後にやってきた次のBray行きは8両の長大編成。…私の知る頃のDARTは4両編成だったんですけどね。

 

DARTに揺られて南に40分。この電車の終点、そして、私の目的地でもあるBrayに到着。行政区分ではすでにダブリンではなくウィックロー。この時間の移動でもちょっとした旅気分になる。

 

電車の車内で気がついてはいた。

 

 

どんより。

 

 

Bray駅に降り立ってみると、霧雨。さっきの青空はどこに行っちゃったんでしょうね。

 

青空は諦めるにしても、海風も強い。最近買い替えた耳を完全に覆うヘッドフォン。これ、耳あて代わりになるわ。というわけで出発。

 

 

Brayというのは、ちょっとした海沿いシーサイドリゾート…の趣がありまして、夏に遊泳ができる(ただしほぼ寒中水泳レベル)海岸があり、小さな水族館やカフェなどが立ち並んでます。

 

 

霧雨は程なくやんだとは言え、気温10度という肌寒い中でも海岸を散歩している酔狂なアホタレがけっこういるんですよね…とダブリン市内からやってきた最莫迦がなんか言ってますけど。

 

私の目的は、次のGreystones駅まで歩くこと。この7キロほどの道のりが、なんちゅーか、ダブリン近郊でお手軽にアイルランドの自然を楽しめるCliff Walk(英語の公式サイトへのリンクです)と呼ばれる道…なのよね。ちなみに、Bray駅からGreystones駅までを考えるとおそらく10キロ近い道のりです。

 

写真中央にBray Headが見える…はずなんです。

 

BrayにはBray Headという丘があるのですが、丘はモヤの向こうに霞んでました。寄っていこうかという思いもあったのですがやめました。

 

 

Brayの海岸の終わりに到着。ここがCliff Walkの出発地点。時刻は1145。出発。

 

 

一つ上の写真からも見て取れるように、出発するとちょっとだけ登ります。…と言っても大した上りじゃないです。基本的にこの道に大きな上り下りはないです。

 

 

最初の1キロ程度は軽自動車なら入ってこられそうな道幅の舗装がされており歩きやすいです(注:途中にゲートもあり車での進入は不可能です)。

 

 

が、それは最初だけ。踏み固められているとはいえ、未舗装路に入ります。

 

 

未舗装路とはいえ、落石防護柵も設置されており、管理はされている模様。確認はしてませんが、おそらく事故があってこうなったのではないかと邪推(一時期このCliff Walkは閉鎖されていたこともあったように記憶)。

 

 

落書きがいささか興を削いでいますが、いいでしょ。天気が良ければもっと良かったろうな。

 

 

線路もCliff Walkも海と崖の間にへばりついているのでずっと並行します。鉄路はトンネルに出たり入ったりを繰り返します。日本だったら長大なトンネル1本を突いて終わりだろうなあ…。景色をとるか安全を取るか…。

 

 

1時間に1本の電車が通過しました(私が乗り遅れた1時間後の電車)。Brayよりダブリン市内は複線ですが、Brayより南は単線です。Greystonesまで電化されたのもこの20年とかの話で、私が知る頃はDARTはすべてBrayで折り返しでした。

 

 

上の写真のトンネルの真上までやってきました。振り向いて撮影すると…あれ、廃隧道があるじゃん。写真中央あたりにあるトンネルが現在利用されているトンネルで、海沿いに短そうなトンネルが写ってます。一部愛好家なら行きそうですが、崖を降りなければいけないし、何より線路を渡らないといけないので、合法的にあそこまでたどり着くのは難しそう。それより、フツーに貫通しているのが確認できるから、マニアさん的にもあまり美味しい物件とは言えない気がする。

 

 

道はどころどころぬかるんでます。なので、「歩きやすく、かつ、汚れてもいい」という靴で来る必要があると思います。Greystonesのゴール直前で留学生っぽいアジア人の女性がさっそうと汚れ一つない真っ白なスニーカーを履いてすれ違うのを見て、「ああ、あんた数分以内にきっと後悔するよ」と思いました。

 

 

ちょうど道半ば辺りに階段があるのですが、このあたりが標高最高点になる模様。と言っても海抜60メートルとか。最初のちょっとした上りを除けばほとんど上り下りをした記憶がない。

 

かくして、道半ばを過ぎてもう引き返すことができない(できなくはないだろうけどめどい)距離に来たときにやってきたのがこれ。

 

 

…どないせいというねん。

 

ゴム長靴でも履いてるならともかく、私のジョギングシューズでは確実に水没するわ。

 

でもよく見ると、右の方に先人が高巻きをしてやり過ごしたあとがある。お、さすがだ俺様。この道で行こう。

 

高巻きの先にあったのはぬかるみ。

 

…余計タチが悪かった。結論としましては、ここに来るには汚れてもいい靴で来るべし…これに尽きるようです。ちなみに正解は正規の道の端っこをキャットウォークよろしく歩くことのようです。

 

こうしてまだ新しいと言っても良い靴を汚し、洗濯物を増やしつつ先へ進みます。

 

天気が良ければGreystonesの街がきれいに見えたはずです。

 

この先はまあ足元が悪いことを除けば消化試合の体となってきまして、

 

 

菜の花畑の中を抜け

 

 

真新しいGreystonesの住宅地に出てきました。少なくとも以前私が来た時(たぶん10年以上前)にはこんなものはなかったです。

 

この時点で午後1時30分。つまり、2時間近くかかりました。ちなみにGreystonesの駅は街の反対側の端なのでさら、10分ほど歩く必要があります。

 

 

よく頑張った俺…と自分を褒めつつ行く場所はもちろん決まってます。

 

 

あー、ビールが美味い。

 

 

そして、チキンバーガーなど食べてしまい、今日の運動分の倍以上のカロリーを摂取してしまったダメな大人は私です。

 

 

お帰りは、1時間に一度のDARTではなく、一日に数本しかない中距離列車に乗りました。この列車のGreystones駅への到着は5分ほど遅れ、ダブリン市内のPearse駅への到着は20分近く遅れたのですが原因は不明。なにせ、列車の中で完全に熟睡してましたので。Cliff Walkから見た風景を車窓からも楽しもうと思ってたのに。…昼間からビールなんて飲むもんじゃないです。はい。