ルフトハンザの凶器攻撃について(下)

前回の続きです。

一人でも並んでいる人の少ないところを選んだレーン、そこは実はまったくをもって間違いだった。最初から、列が進むのが遅いなあとは思ったけど、まあいいやと並ぶ。

自分がX線の検査を受け、なぜか係による手での再検査になった後、自分が致命的なを犯したことに気がついた(結論から言えばおそらく、ここがこの日の運命の分かれ目だったと思う)。荷物のX線の検査をしている別の係氏、とんでもないオタクか、新人かのどちらか。私のスーツケース、一度検査した後、今度は縦にしてX線の機械にに入れなおす。それでも気が済まなかったらしく、今度はさかさまにして入れなおし。私のスーツケース、ノートパソコン用の電源コードのほか、DVDが数枚、それにお土産のチョコレートが一箱、それに使い捨てのコンタクトレンズが数枚。どこにも怪しいものなどない。なのに、結局、別の係員によるカバンの開封検査に回される。この時点で出発時刻の10分前。玄人の奇跡の乗り換えの夢は潰えた。

よく見ると、この係氏、すべてのカバンを再検査にまわしている。おいおい、確かに安全は何にも優先される。少しでも疑いのある場合はその疑いを晴らすべきだ。だけどさあ、すべてのカバンを再検査にまわしてたら、時間がいくらあっても足りないでしょうが。

その時点で、すでに出発時刻の5分前。それからおおよそ5分かけて、ターミナル1のBからAに移動する数百メートルある地下の連絡通路(勝手に私は「マラソン通路」と呼んでいる)を走って搭乗口に行ったら、すでに閉まっているどころか、係りさえいない。はい。ダメー。

しょうがないから、サービスカウンターに行ったところ、次の3時間後の午後1時20分発のヒコーキの搭乗券を渡される。この係氏に「45分乗りかえって無理があるよねー」って水を向けたら「90分はほしいわよね」と言っておられた。あとで調べたところ、ダブリン発のヒコーキは15分遅れただけ。15分なんて、実際「遅れ」に入らない。なのに、乗換えができなくなるような接続を設定しているルフトハンザ。まあ、こんな短い時間でも乗り換えに挑戦できるようにしてくれていることを感謝すべきなんだろうなあ。

まだ出発まで3時間近くもあるので、ラウンジに行くことにした。考えてみたら、街まで電車で15分だから駆け足で買い物に行くような芸当もできるんだけど、まあ、そこまでする価値はないわな。フランクフルトなんて、大した町じゃないし。

このラウンジ、未だにインターネット接続が有料!おそらくだけど、ドイツの大手電話会社が、この街角のネット接続に強力な力を持っている印象を受ける。どこに行っても、この電話会社のアクセスポイントがあるんだけど、有料なのよねん。私が知る限り、ドイツ以外のどこの空港のラウンジもインターネットの接続は無料なのでそろそろ改善してほしいところ。

じゃあ、何しに行ったねんといわれると…

…新聞。

インターネットから急に退化しますけど、フランクフルトの空港では日本の新聞が手に入るのです。ってか、ヨーロッパのたいがいの地域では、この日本語の新聞、街角の新聞販売店とかで見かけるのよ。4から4.5ユーロと高いけど。…アイルランドを除いてね。そう、アイルランドは日本語の新聞の流通ルートから外されているという悲しい事実。これだけネットが発展したきょうび、紙に印刷された新聞なんていらんといえばいらんのだけど、でもなきゃないで寂しいものではある。

やることないから、ようやく見つけた窓際の席で朝日と読売と日経をくまなく読んで(どこのリストラ対象の社員だよ)、まだ時間が余ってるからシャワーまで浴びてシャワー室から出てみると…私の乗るヒコーキは30分遅れのお知らせ。なんだよ、わしが逃したヒコーキは定刻に運行して、次のは30分遅れかよ。

30分後、つまり本来の出発時刻…いや、本来の本来ならとっくに目的地に到着している時刻なのだが…にさあそろそろ搭乗口に行くべかとモニターを確認してみると、

ヒコーキ、キャンセルのお知らせ

脱力。

3時間待たせた挙句にキャンセルですか。ひどくないですか。

とりあえず、ラウンジ内のサービスデスクに行きましたよー。

係:「次の午後4時発のは、完全に満席ですね。金曜日の午後ですし」

…ほんじゃ、新幹線に振り替えてもらおうかと思ったら…

係:「お客様はすでに新幹線への振替となっております。ちょっと待ってくださいね。今、搭乗券(乗車券?)を発行しますから」

と言って、出してくれたのがこれ。

…見た感じ、フツーの搭乗券にしか見えない。だけど、「鉄道、レンタカーに有効」と書いてある。…ん?レンタカー?これ次回試してみよう(昼間からラウンジでビールを飲んだ私、飲酒運転になるのでこの選択肢はなかったというオチです)。

係:「あ、お客様は、1等車でのご案内になりますね」

…といいつつ、2等車と書いてあるところをボールペンで1と書き直す。…って、これって有効なのかよ。わしが勝手に書き直したという保証はないのかよ。

私:「ええと、新幹線なら、XX駅のほうがいいんだけど」
係:「それでしたら、鉄道の駅のカウンターで申し出ていただけますか」

はいはい。

かくして、大雪のときですら起こらなかった新幹線での振替となった私。新幹線の駅のカウンターでXX駅への振替を頼むと、

係:「ヒコーキからの振替のお客様の経路変更は承っていないんですよ。ただ、お客様の場合、Hannoverより手前で降車となりますので…そうですねえ…」

と言いつつ、後ろのお局さんにお伺いを立てる。結果

係:「まあ、車掌に申し出てみてください。たぶん大丈夫ですよ

…ここ、アイルランド国鉄のカウンターでしたっけ。なんだその「たぶん大丈夫」って。

(フランクフルト空港駅。本文とはあんまりカンケーがない)。
ご親切にも乗り換えの時刻をプリントアウトしてくれたのを見ると、フランクフルト中央駅でぴったし1時間の乗り換え時間。ということは、0分で乗換えができれば、前の列車に乗れるってことじゃん(ドイツ国鉄、きれいなパターンダイヤになっていることが多い)。

フランクフルト中央駅に降り立ったことのある方なら、この計画がどんなに無謀かすぐにわかっていただけると思う。20番線以上あるすべての列車が折り返しになる行き止まり駅(地下の近郊列車駅を除く)。ただ、列車の一番前から飛び降りてホームに走れば、なんとかなるかもしれない。やってみよう。

やってみましたよ。フランクフルト駅に到着の列車の最前部に乗ってホーム到着と同時に走ってみましたよ。

すでに接続の列車はホームにいませんでしたとさ。

とことん運に見放された男、フランクフルト中央駅で脱力する。

そういえば、空港駅の係のお姉さんが、「中央駅ではラウンジをお使いいただけますよ」と言っていたので、行ってみた。

…椅子が並んでいるだけ。

食事があるわけでも、インターネットへの接続環境があるわけでもない(例の電話会社の公衆無線アクセスがあったがもちろん有料)。強いて言えば、新聞のコーナーと(ドイツの地元紙のみ)、飲み物のコーナー。こちら、コーヒー紅茶に、ソフトドリンク。まあ、ファミレスのドリンクバーを思い浮かべていただければそのまんまの風景(氷はなし)。こりゃ、ドイツ3大がっかりに数えていいな。ちなみに、一等車の乗客でない場合は、10ユーロにてこの施設を利用することができるらしいです

…結構です。

せめて窓から行きかう列車を見ようかと思ったが、列車の動きが少ないので見ていて楽しくない。しかも、窓際の席は人気でいつも埋まっている。

ほぼ1時間後、私が乗るICE(新幹線)が入線してきたのでホームに移動。ラッキーなことに14両編成の一等車は、コンコースに近い側だったので歩かずに済む。予約されていなかったテーブル席に着席。

ドイツ国鉄の場合、日本と違って指定席車両と自由席車両という区分ではなく、列車は二等車か一等車にしか分かれていない。各座席に、その席が予約されている区間が明記されているので、予約されている席でもその区間でなければ座っても問題なし。

ドイツ国鉄のICEの場合、二等車でも十分快適です。シートはコンパートメント(6人用の部屋)でないオープンサロンの場合2-2列の配列。日本の新幹線が2-3、下手をすると3-3のシート配列なのに比べると、二等車でも十分広々していることがわかってもらえると思う。それに対して、一等車はシートは1-2配列。今、何かと話題の東北新幹線のグランクラスと同じ。

ただし、シートピッチ(シートの間隔)やシートそのものの快適さは見た感じではグランクラスのほうがはるかに勝ってましたが。とはいえ、私には十分すぎる足元の広さとシートの快適さ。…まあ、強いて文句を言えば、テーブルの足が邪魔なんだけどね。

一等車と二等車の違いは、係の人が注文を食堂車から座席まで届けてくれること。500mlのビール、4.2ユーロなり。ドイツの酒屋で75セントで売っているものだから6倍近い値段がついている計算になる。ぼったくり価格で、ドイツ人には評判が悪いのだが、アイルランドのパブでこれを飲むと5.5から6ユーロするのよねん。それを考えるとかまわず注文してしまう。

ビールを飲んで、この日記を書いていると車掌さんが検札にやってきた。あー、めんどくせー、事情説明しなければいけないのかなあと思ってたら、例のルフトハンザが発行してくれた航空券と言うか乗車券の半券を持って去っていった。質問などなし。

いつもヒコーキで35分のところをICEで2時間半かけて移動。おそらくこの時間なら、空港までの移動とか空港での待ち時間を考えると新幹線のほうが圧倒的に優位なんだろうけど、ヒコーキが一日5便とかあるところからわかるとおり、ヒコーキにも一定の需要があるらしい。おそらく私のような乗り換え客がほとんどなのではないかという気がする。

ともあれ、本来の予定時刻に遅れること5時間。ようやく目的地に着いた。ここもダブリン同様強風が吹き荒れてまして。駅前の黄色いポストの前に黄色い郵便局の車が止まり、郵便物の回収にやってきた。ポストの裏を開けた瞬間、一通の封書が風に舞って飛んでいった。

どーするのかなーと思ってみていたら、回収のおじさん、本気でダッシュして郵便物を拾いに行きましたとさ。アイルランドだったら、きっと”Shit happens”で終わってしまうのではないかという気もしましたが、何の根拠もありません。いや、別に12月に日本から送ってもらった郵便物が未だに行方不明なこととかにあてつけてるわけじゃありませんから。

追記:行方不明の郵便、着きました。EMSで日本からアイルランドまで7週間…ナメてますな。