ドイツのアニマルシェルターを見に行く


表題にアニマルシェルターと書いたけど、アニマルレスキューのほうがいいのかな。どっちにしてもそれは英語で、ドイツ語ではTierheimっていうんだけどさ。

 

ドイツ語はわからなくてもカタカナ英語の方はたぶんなんとなくでも通じたよね。この言葉がどれだけ日本で普及しているか定かじゃないけど、動物の保護をしているところ。北に迷い犬がいれば保護し、南に里親の必要な猫がいれば探す。西にうさぎがいれば、うさぎだって受け入れる。東の亀だってどんと来い。そんな場所。

 

何をしに行ったのかはおおよそご賢察の通り。前の飼い猫がいなくなって一年。そろそろ新しい子をお迎えしようと。半年くらい前にはシャム猫が来る話もあったけど結局潰れたしね。

 

もう相当昔の話らしいのだが、嫁は一度近所の(イナカで言う近所…うちから軽く30キロは離れている)アニマルシェルターを訪れているらしい。日本の保健所を想像してもらえればわかると思うけど、なんとも落ち込む場所だったと。

 

別に闇雲に訪れたわけじゃない。事前に電話で問い合わせをして、子猫がいるらしい上の場所とは別の近所の(やっぱり別の方角に軽く30キロほど離れた)アニマルシェルターに予約をして出かけた次第。

 

そこは、街からいい程度に離れた場所にあった。

 

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門を開けると外の犬舎にいる犬が一頭ばうばう鳴く。ああ、なんか嫌な感じだわ。

 

(人間の)病院の写真…と言ってもたぶん信じてくれるのでは?

(人間の)病院の写真…と言ってもたぶん信じてくれるのでは?

 

ところが、建物の中に入ると、ちょっと感じる獣臭さは確かにあるが、そりゃ動物がぞろぞろいるんだから当然。むしろ動物がぞろぞろいるはずにも拘らず人間の病院のように清潔に保たれている。

 

土曜日ということもあってか係の人の数は少なく、しばらく待ったのち、「離れ」の建物に案内される。

 

ここで子猫は検疫中とやらで、私たちが建物の中に入ることは許されなかった。そのかわり、窓越しに子猫が4頭収まったケージを窓際まで持ってきてくれた。

 

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…ふむ。

 

なんというのか。子犬や子猫を見た時にありがちな、「うわーかわいい」から始まって、「もう決めた。この子達連れて帰ろう」的な高揚感というか、興奮が湧いてこない。かわいいよ。確かに。だって子猫だもの。だけど、なんというのか、コレジャナイ感がそこはかとなく感じられるのよ。

 

とりあえず検疫中だし触るなと言われていたのでじっと見ていたら、気が強い一頭がシャーーーーーーと私を威嚇する。…もしかして、こいつら半野良猫かなんかですかね。

 

この後、事務所で話し合いとなりまして…。以下、長くなるので箇条書き。

 

  • この四頭の子猫、オス3のメス1。
  • 子猫を引き取る場合は必ず二頭ペアになる。一頭だと子猫が寂しがるから。
  • 猫は個体識別用のチップ、予防接種などをしてから引き渡す。そのかわり、一頭につき€80徴収する。
  • 里親になる場合は、シェルターの係員が家庭訪問をして、里親にふさわしいかどうか確認する。

 

…一つ一つ突っ込んでいくとキリがないので端折るけど、言い方は悪いが、人間と言うならともかく、犬猫でも里親にふさわしいかどうか家庭訪問するの。ある意味すごいな。

 

個人的にはあの「シャーーーー」が気になってしょうがない。あの子がうちに落ち着いて懐いてくれる日は来るのだろうか。

 

前にも書いたか、私の人生、日本の実家にいた時は必ず犬が多い時は三頭とかうちにいました。なので、明日から犬を飼え…言われてもたぶん困らない。というか、家に犬がいてほしいと思う完全に犬派の人間です。なので、猫っていまいち飼い方がわからないし、犬のように懐いてくれないのが残念。

 

その話し合いの後に、それでは「成猫もご覧になりますか」と案内される。

 

そこには、日本的に言えば10畳くらいの部屋が6つとかあり、各々の部屋は、檻になってはいるものの、部屋と同じくらいの広さのある外に繋がっている。そこに各部屋数頭の猫が住んでいるわけ。

 

部屋に入るなり、一頭の猫が擦り寄ってきた。

 

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あら、かわいいし、やっぱり愛嬌のある猫はいいね。係の人もギルバート(猫の名前らしい)はいい子よと絶賛。

 

そして係の人は…

 

「あれ、エミリーがいないわね。あ、ここかしら」

 

と毛布の掛かったバスケットをめくると、確かにそこには別の黒白の猫が寝ていた。

 

実はこの子はエミリーとは別の子。

実はこの子はエミリーとは別の子。

 

「この子もいい子なんだけど、打ち解けるまでがけっこう大変なのよ。シャイなのよ」とは係氏の弁。私は愛嬌のある猫と遊んでいたので、その猫には見向きもせず。そのシャイな性格が祟ってか、すでに数ヶ月シェルターで暮らしているとか。

 

出会って数秒ですっかり仲良くなったギルバート。

出会って数秒ですっかり仲良くなったギルバート。

 

 

さらに、別の部屋へも案内される。

 

「この子は耳が聴こえないんですよ。お宅は大通りに近いですか」

 

…そう。アニマルシェルターの係の人、「猫は外飼い」という前提で話しているのだ。どうもこのあたりの人たちの常識では「猫は外で飼うもの」らしい。確かにイナカだからというのはあるけど、私はどーしても違和感を感じてしまう。前の猫だってトラクターにはねられて死んでしまったにも拘らず、義父に言わせると「外に出ない猫など何が楽しみで生きるのか」。一理あるんだけど、いくらでも反論の余地もあるよね。もう歩み寄りの可能性がほとんどない価値観の違いだから話し合うだけ無駄。

 

それでは検討します…というわけで、お礼を言いつつアニマルシェルターを後にする。

 

それから二人であーでもないこーでもないと始まる。

 

私としては子猫派…なんだけど、どーしても「シャー」が気になる。本当に仲良くなれるのかいささかの不安がある。

 

そして、2週間ほど待つとさらに別の方角に今度は50キロほど離れた別のシェルターでも里親を探している子猫が出てくるらしい。こちらも現在検疫期間中とやら。私はこれを待つことを主張。

 

一方で嫁は、成猫もいいのではないかと。だったら私はあの愛嬌のあるギルバートがいい。一方で嫁は、シャイで不人気なエミリーがいいと言い出す。なんでわざわざ不人気猫に目をつけますかね。変な人。

 

はっ…とここで気がついた。数年来の疑問が氷解した。なぜ私が結婚できたかわかった気がした。

 

私としては、長いつきあいになるんだからそんなにすぐ決めなくてもいいじゃないか、2週間後に別のシェルターを見てからでも遅くないじゃないかと嫁をなだめにかかる。だがその努力も数日後には…

 

「うん、やっぱり、成猫を引き取ろう」

 

…それならば…と、私は折衷案を出す。あの愛嬌のあるギルバートを引き取ろうと。エミリーはすでに年配…という問題もありまして。かくして、嫁も了承。シェルターに電話。数分後…

 

「もうすでに引き取り先は見つかったって」

 

話は振り出しに戻る。ふむ、来週別のシェルターに行ってみよう。