続:大雪の中ドイツを目指す。ヒースロー乗り換え編

12月24日。曇り。気温マイナス10度。まー、よりによってこんな日にヒコーキに乗ろうなんて考えた時点で私はアホですよね。

クリスマスって日本人の私たちが考えるよりも重要みたいです。まあ、日本でもお正月には帰省して家族で過ごすというのは大事なことだと考えていると思うけど、ヨーロッパでのクリスマスに対する考えは、そんなもんじゃない。ましてや、クリスマスを一人で過ごすなんてことは考えられないらしい。そんなわけで、あちこちから「もし飛べなかったらうちにおいで」という本当にありがたい申し出をいただきました。ぶっちゃけ、クリスマスなんてどーでもいいんだけどねえ。

知ってました?ドイツ(の全部かどうかは全世帯を調べたわけじゃないので定かじゃないけど)ってね、クリスマスプレゼントをクリスマスイブに開けるんですよね。サンタさんがイブの夜に煙突からやってくるという話とどう整合性を取っているのか私にはさっぱりわかりませんが、とにかくそーゆー話らしい。

で、イブの夜はとびっきりのごちそうのソーセージとビールが出るのよ(ネタではありません)。これが午後6時。そのあとにプレゼントの交換。ま、これに間に合うためには、ヒコーキが遅延なく離陸して、乗換えがスムーズに進んで、接続便が定刻に到着することが必須。

ここ数日ヨーロッパを襲った寒波は異常。ロンドンの悪名高いヒースロー空港は閉鎖され、再開後もしばらくは二つある滑走路のひとつしか使えずに大混乱。その大混乱が収まってきたと思ったら、今度は大雪がダブリン空港をピンポイントで襲撃。断続的に空港は閉鎖され、クリスマスを家族と過ごそうとする人たちの足が大混乱に。

私が飛ぶ前日の23日も、延べ二回、午前9時半から午後1時。午後6時間から翌朝まで滑走路が閉鎖され、かわいそうに多くの人がクリスマス前の帰省が無理に。それ以外にも、今週はたびたび数時間にわたり空港が閉鎖され、ダイヤは乱れ、ヒサンなことになっている。

状況を悪くしていることは、アイルランドの空港って25日は閉鎖されるのよね。天気とかそーゆー次元の問題じゃなくて、クリスマスだから。なので、24日に飛べなければ、クリスマスを家族と過ごすことは叶わなくなるわけ。で、もともとこの週のフライトはほぼ満席だから、23日、あるいは他の日に不幸にしてフライトがキャンセルされた人の多くは、その時点でゲームオーバー。こと23日は絶望的。

これでわかった。クリスマスに帰省する予定のある人は数日の余裕を持たないとダメ。24日に飛んで、しかも、遅れがちょっと出たらクリスマスディナーに間に合わないなんてのは計画として不合格…なんだけど、その事実に気がついたときにはすでに時すでに遅し。もう飛ぶしかない。

というわけで、8時40分のフライトに間に合うために7時半に空港に到着(ってか、そんな状況ならもっと早く着くようにしろよ)。ニュースで見た空港はもう大混乱の極み…だったのだが…

…ニュースで見たよりは空いている気がする。

それでも搭乗受付の列はカウンターをぐるっと1周してさらに別のカウンターのほうに伸びて…と、まあ、わけのわからん状況になっている。あ、書いてて気がついた。報道されてたエアリンガスあたりの発券カウンターがどんな修羅場になっていたか見てくればよかった。

保安検査場も混んでそうなので、そのまま保安検査場に進むと

…ほとんど誰もいない。

これはホントに肩透かしだった。これなら通常の日のほうがよっぽど保安検査通過に時間がかかる。ということは、カウンターあたりに大行列していたのみんながみんな飛べるわけではないということなのだろうか。

どっちにしても、まだ時間はありそうなので、ラウンジへ。

…ラウンジも平和そのもの。いつもよりもむしろ空いているくらい。なにがなんだかわからなくなってきたぞ。

不思議なことにラウンジの受付に誰もいない。そのまま入り込んでノートパソコンで作業開始。8時半の出発時間になったころ、受付の電話が鳴る。誰も出ない。数分後また鳴る電話。

すごい嫌な予感がしたのだ。通常このラウンジでは出発のアナウンスがある。搭乗口から内線で連絡があり、その連絡ののちに搭乗口に行けばいい具合で搭乗できるようになっている。が、数ヶ月前、待てど暮らせどラウンジに呼び出しのアナウンスがないので気になってゲートに行ってみたら、もう搭乗が終了するところだった!…こんなことがあったので、このさっきから鳴り続けている電話が気になって仕方がない。今日だけはヒコーキに乗り遅れたくない。しょうがないから、呼び出しはないけど搭乗口へ行ってみた。

当然搭乗の気配すらなかった。

結局搭乗が開始されたのは定刻から1時間遅れの9時半。機材はA320。もちろん完全満席。ちなみに30分後に臨時便を設定していたようなので、まあ、bmiもなんとかクリスマス前に帰省客を捌こうとしていたのだろうと思う。

9時50分。本来であればこのヒコーキはヒースローに到着しているべき時刻。搭乗は終わったものの、乗務員からの説明は一切なし。しばらくすると、ようやく機長から、「機体の除氷作業のためあと40分ほどかかります」とのアナウンス。つまり、この時点で2時間の遅れは確定。機内のあちこちからのため息。

そう、除氷作業。これがここ数日の遅れの諸悪の根源らしい。よくは知らんけど、気温が一定以下になると機長の判断なのか、そーゆー決まりなのか機体に特殊な液体をかけて、付着した氷の除去および氷の付着の防止をする。まあ、実際に過去に何度も氷の付着が原因で事故って起きているから、これの重要性について文句をいうつもりはない。

ところが、ダブリン空港はどうもマイナス10度という気温は想定外なのか、どうもこの除氷作業をする人、あるいは機械が絶対的に足りなくて、ここ数日の遅れにつながっているらしい。ダブリン空港の管理会社いわく、この除氷作業は各航空会社で手配するべきものらしく、航空会社によって遅れ具合が違っていたらしい。

なんだかんだでヒコーキがプッシュバックされたのは定刻からほぼ3時間遅れの11時半ちょい前。ちなみに接続のヒコーキがヒースローを出るのは11時35分。…間に合うはずがない。最初からわかっていたけど展開は完全に私の予想通り。

ほどなく離陸。機内から沸きあがる拍手。…たまに着陸すると拍手するやつはいるけど、離陸時は初めてじゃないかな。気持ちはわかる。実際、昨日だって搭乗して数時間待たされた挙句にキャンセルとかになったかわいそうな人が相当いたらしいし。そういう意味では、ヒコーキが滑走路を蹴って舞い上がったことは本当にすばらしい…たとえ3時間遅れでも。

それからきっかし1時間後の12時半にヒースローに着陸…ってほとんど雪なんて溶けてしまってるじゃん。あのニュースの騒動は何だったの?

機内の乗客は早く降りようともう気もそぞろ。中にはまだ誘導路にいるのに荷物棚を開けて荷物を取り出して怒られているアホな客もいる。そこに機長からアナウンス。

「到着のゲートの準備ができておりません。…クリスマスで人が足りないようです。お急ぎのところ恐れ入りますが、ご着席のままお待ちください」

この機長、正直とほめるべきか、ふざけるなと怒るべきか、クリスマスだか人手がいなくてさらに降機が遅れるんだと。その言葉通り、ヒコーキがゲートに着いて降機できたのは20分後。

それからbmiの搭乗手続きカウンターへ。そこで言われたこと。

「申し訳ありませんが、こちらでは手続きができかねますので、あちらのカスタマーサービスのカウンターに行っていただけますか。」

…そこにはどよーんと淀んで疲れきった行列が。

並んで30分後くらい経ったころ、カウンターにいる係りとは別の人が列までやってきて、「どうされましたか」と御用聞きにやってきた。わかりました、そちらのいすにおかけになってお待ちください…と言われてカウンター脇のいすに座る。

それから待てど暮らせどその係りが戻ってこないのだ。ただ、おかげで、カウンターでのやり取りを盗み聞きできた。まあ、昨日からダブリンに行こうとカウンターに張り付いている人とか、ベルファストでもダブリンでもどこでもいいからとにかくアイルランド(島)に連れて行ってくれと泣きついている人とかさまざま。

しばらくして、私と同じく、ダブリンからやってきて、接続便を逃した連中がやってきた。どうも、係の人、「悪天候は私らの責任じゃない(だから知らない)」と言いたいらしい。しかも「遅れるのがわかっていたから、その旨乗客に連絡するようにダブリンの責任者に伝えておきました」などとほざいている。もちろん乗客からは「聞いてねえよ」と反撃。さらに、列の後ろの乗客からは「到着後に地上職員がお世話します」と言っていたよと参戦。

それから数分、かわいそうな地上職員を5-6人の乗客が取り囲んで集中砲撃を受けていた。結局この人たち、「個別にスーパーバイザーがお話を伺います」ということで話がまとまった。そのあとどーなったかは私は知らないが、bmiはルフトハンザに買収されたくせに、カスタマーサービスのレベルはルフトハンザのそれよりはるかにひどいと思う。

実際、ルフトハンザのカスタマーサービスのカウンターで長い時間並んでいると、水なんかが何気なく配られたりする。たかが水ながらされど水。長い間並ばされて怒っている乗客の沸騰した怒りに冷や水をぶっかける効果はあると思う(それで怒りの温度がどのくらい下がるかはその人次第だが)。対してbmiのカウンターではただひたすら忍の一字で耐えるのみ。しかも並んだ挙句に「悪天候は私たちの責任じゃありません」とか言われたら「じゃあ、俺の責任なのかよ」とキレるのはある意味当然の帰結といえる。

で、他に座っている数人の乗客のところには係が戻ってきた。

係:「お客様は運がいいです!明日のXX行きにお席がご用意できました!」

実は、すべての客に接頭辞的に「お客様は運がいい」(“You are very lucky”)と言っているのだ。そういうことで、(今日ではない)「明日のヒコーキ」にしか乗れない(つまり、クリスマスに間に合わない)ことに対して、最初から言い逃れに入っているよう。お客も単純に本当に運がいいと思い込むのか、文句を言う人はおらず、そのまま立ち去っていく。

俺、悪いけど「お客様は運がいいです!明日のヒコーキです」なんていわれたらキレるよ。仮に午後6時半のHannover行きのヒコーキが満席でも、現在午後2時半。時刻表は調べてないけど、フランクフルト経由にするとか、ハンブルグに飛ぶとか(Hannoverまで新幹線で1時間程度)、まだできることはあるはずだ。

1時間近く待たされて、まだ係が戻ってこないので、カウンターにいるスーパーバイザーに話しかけると…

係:「え?あれ、Snigelさん、ちょっと待ってくださいね。あれ、もう次のHannover行きにリストされてますよ。え、ずっとお待ちだった?すいませんね、はい、いま搭乗券を発行しますね。はいどうぞ」

…俺のこと完全に忘れてただろう。

怒ってもしょーがないし、どうせ次のヒコーキまであと4時間もあるんだからとそのまま保安検査を抜けて待合室へ。

空いてるし。

あのー、空港に寝泊りしているような人たちはどこに行っちゃったんですか?もう問題は解決されたのですか?

結局、午後6時半発のHannover行きは定刻どおりに運行。こうやって写真を乗っけて思うけど、なんでbmiは千金の価値のあるヒースローのスロットを使ってこんなハエみたいなヒコーキを運行してるんだろう。まあ、それはそうと、とびっきりのソーセージとビールのはずだった、私のクリスマスのイブのご馳走はこれだー。

チキンサンドイッチ
白ワイン

むなしいのう…だけど、今回の寒波で、万単位の人がクリスマス休暇の計画が台無しになって目的地にすらたどり着けなかったんだから、文句は言っちゃいけないよね。きっと。

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