風邪ひけば、姪っ子が悪い

夏風邪は莫迦がひくというのはよく知られているとおりですが、嫁と二人して風邪を引きました。鼻水が止まらない。頭が重い。…典型的な風邪です。


悪いのは、姪っ子です。


そして、姪っ子の両親が家を買ったのが悪い。


はい…風邪ひけば、じゃなかった、風吹けば…の論理ですが、どーゆーことか説明させてください。


そう、嫁の姉がですね、家を買ったんです。ダンナと一緒に。隣町に。長めの散歩のつもりならうちから歩ける距離です。


私は家など買ったことがないのでよくはわからんのですが、どーも家を買うというのは大変なことらしい。家を買うためにはたいがいの場合銀行からお金を借りなくちゃいけない。その後だって、新築ならまだしも中古ならある程度手入れをしないといけない。さらには、家具を揃えて…と、やることはキリがないほどあるわけです。


で、嫁姉、忙しさにかまけて私達の階下に住む義両親宅を託児所としてフル活用してまして。まあ、それ自体よくある話。孫が可愛くてたまらないおばあちゃんと見事に利害が一致しているわけで。


ところが、お守りというのは当然に疲れる。なので、仕事のない日は私の嫁が代打として面倒を見たり、ヒマがあれば私も代打の代打として一緒に遊んだりしているわけです。


ちょっと語弊がある言い方かもしれませんが、コドモって汚いのよね。ヨダレでベタベタした手とかで平気で触ってくるでしょ。


で、その姪っ子が風邪をひいたと。そのヨダレベタベタな手にヨダレだけじゃなく鼻水までついちゃいまして、そんな手で私たちの顔とかをペチペチ触られた日には、当然風邪は伝染りますわな。


そりゃただの夏風邪、別に寝こむほどじゃないけど鼻水がジュルジュルになって頭は重くて辛い辛い。私は風邪を伝染されて以来自分の部屋に逃げ込んだのでさほどの悪化はしなかったが、嫁はその状態で姪っ子のお守りをするハメになり、風邪が一気に悪化。急遽私が食事当番になり数日御飯を作ることに。


そして、嫁が薬を買ってこいというので薬局へ。


こっちの薬局って、未だに薬局なの。「は?」という方、ほら、日本みたいに「ドラッグストア」化してないの。日本はさ、「ティッシュペーパー、トイレットペーパーなどの紙類、洗濯用洗剤、柔軟剤、食料品、ベビー用品や一部のネームバリューのある医薬品・ドリンク剤・サプリメントなどを場合によっては原価を下回る形で安売りして集客し、原価の2倍から5倍で販売できる医薬品や化粧品、雑貨を販売し、利益を稼」ぐ…というやり方(かぎかっこ内はWikiの丸写し)で薬局は、マツキヨみたいなスーパーともつかない店に変貌してしまい、町の薬局っていうのはほとんどみなくなったじゃないですか。


ところがドイツでは、未だに古き好き昭和の時代に日本で見られたような薬局が未だに健在。ドラッグストア的な店は確かにあるんだけど、実はそこでは薬は売っていない。処方箋が必要な薬かどうかにかかわらず、薬は薬局へで買うというのがドイツの常識。私は古きよき「薬局」の薬剤師さんに市販薬を売ってもらい家に戻る。


日本に二人で行ってた時に、嫁がやっぱり鼻風邪を引いたかなんかで日本の「ドラッグストア」にお連れ申したことがあった。で、薬剤師と話をして正しい薬を選びたいと。…んな、風邪引いたなら、ルルだかパブロンだか飲んでりゃいいだろ…と私は思うのだが、もうこのあたりの発想からお互い話が噛み合っていない。


というわけで、ドラッグストアへ。そのドラッグストアは中に調剤薬局が入ってまして、あ、ここなら薬剤師さんと話ができるわ、ちょうどいいやと薬剤師さんに話しかけました。ところが…


薬剤師さん:「こちらで承りますのでどうぞ」


と、調剤薬局の外の市販薬を売っている棚の前に案内される。そして、他の店員さんに話しかけている。その間に棚に目を走らせると


「只今の時間、薬剤師は不在です」


と書かれたPOPが貼ってある。


いまいち理解できなかったのだが、どうもこの調剤薬局はあくまでドラッグストアの一角を間借りしている別の店という扱いらしい。調剤薬局で扱うのは処方箋薬のみなので、こちらに案内されたと。


で、私たちの接客をしてくださったのは、パートのおばちゃんと思しき人。そのおばちゃん、嫁の質問に困り果ててしまう。ちょうどその時嫁はドイツで処方された別の薬を飲んでいたのね。それと飲み合わせても問題のないものを探している…という難問をおばちゃんにぶつけやがった。


私だってその薬がなんの薬かは知ってるけど、中に入っているものが何かなんか知らんぞ。私のそっち系の知識など、デンターTとかいう歯磨き粉にはグリチルリチン酸ジカリウムが配合されているくらい(しかもただのCMの受け売り)。


結局、困り果てたおばちゃんが勧めてくれたのは龍角散。なるほど、漢方薬なら飲み合わせも何もないわな。


で、レジに龍角散を持って行ったら、レジ打ちをしてくれたのはそのおばちゃんだった。店の外にでて嫁はしみじみと言った。


「私、ドイツの薬局が恋しいわ。日本の薬局ってスーパーマーケットと何も変わらない」


…言いたいことはわからんでもない。