お客様の中にボランティアはいらっしゃいませんか?

ダブリンにいます。ええっと、先々週はブリュッセルにいて、先週はチューリッヒにいて、今週はダブリン…と、いろんな日程が重なって今月はほとんど家にいない日々です。


チューリッヒには遊びに行ったんです。1週間ほど。買って1年経つのにまだ8000キロも走っていないそらまめ号(日産ノート)のメーターを1000キロ以上回してきました。この話、ネタに困ったら日記にします。


その翌々日。今度はダブリンへ。こともあろうにチューリッヒ経由で。…本当に偶然なんですが、珍しくチューリッヒ経由の航空券を買ったのです。その時点ではチューリッヒに遊びに行く計画は立っておらず、こんな莫迦なことになるなど予想もしてませんでした。


ハノーファー空港で同僚から頼まれていたジャックダニエルを買い、搭乗。


ハノーファーからチューリッヒまではスイス航空の便名がついているもののヘルなんとか航空(ヘルヴェティック・エアウェイズ)のフォッカー100での運行。2016年に20年以上前に倒産したフォッカー社ののヒコーキに乗るとは、物持ちがいいというか…。ただ、リアエンジンのヒコーキの前から3列目に座ったので、まあびっくりするくらい静かでした。そういえば、MD80シリーズもこんな感じだったなあ。

(ワインとアイスクリームの食べ合わせがどうこう言わなくてよろしい。)


まあ、LCC扱いだろうから機内サービスもないだろうくらいに思っていたら、エコノミークラスのサービスは…なんとアイスクリーム。


しかもさ、カチカチに凍ってるのよ。なんかコドモの時に新幹線で買ったアイスクリームを思い出した。あれもこんな感じでカチカチでしばらく心を焦らされながら待たされたなあ…と懐かしい思いに浸りました。そう、アイスクリーム大好き人間としては、このアイスクリームの「おあずけ」状態がなんとも言えずいいなと思うのです。…はい、すごくどーでもいい話ですね。


まあ、これだけなら日記のネタにはならなかった。話はこれからです。


チューリッヒに到着。乗り換え時間は1時間10分。出国審査もあるので忙しいかと思いきや若干早着したこともあってラウンジで一休みするヒマすらあった。


搭乗口へ。もうすでに搭乗は開始されていた。おとなしく列に並んでいると、世にも甘美な案内放送が。


「本日ダブリン行きのフライトはオーバーブッキングしております。一名様のボランティアを探しております。明日の朝のフライトに変更していただける方は、ホテルと夕食代と、275スイスフラン(250ユーロ、3万円)の協力金をお支払いします」


おいしい。これはおいしい。スチャラカ社員の私、ちょっとくらい会社に遅れてもいいやと思い列から離れると、搭乗口でアナウンスをしていたお兄さんと目があって、お兄さんは英語での案内を途中でやめてしまった。


私:「明日の何時にダブリンに着くんですか」
係:「朝の10時半ですねー」
私:「ええっと、たとえば、フランクフルト経由とかにしてもっと早く着くようにすとかは?」
係:「…それはできかねますねえ。これがベストなオファーです」


…話しながら気がついた。あれ、今日は土曜日。明日は日曜日。つまり、月曜日に出社さえできれば、別に明日の何時に着いたっていいわけじゃん。これ、めっちゃおいしい話じゃない?


このさ、フレキシブルトラベラーってさ、何度も申し込んだけどうまく行ったこと、今までただの一度もなかったのよね。さて、どーなりますやら。


私:「わかりました。これ、私の搭乗券です」


と、スマホを渡す。


係:「Snigel様…で…え?あれ?」
私:「どうかしました?」
係:「いえ、お客様、ビジネスクラスにアップグレード予定になっておりまして…」


マジかよ。また最低クラスの運賃しか払ってないのに、他社ゴールドメンバーというだけで、アップグレード予定だったの?まあ、ちょっとした機内食をいただく代わりに、非常口座席を失うのはどっちがいいか、意見の分かれそうななところではあるが。


ただ、ここ、覚えておいてくださいね。私の運賃、「エコノミーライト」という運賃で、預託荷物は有料なんです。事前に払えば15ユーロ、空港で払うと35ユーロも取られます。なので、私は機内持込できるスーツケースのみでの旅です。…とフラグを立てつつ話を続けます。


私:「あら、そうだったんですか。別にいいですよ。明日のフライトで」
係:「お客様、荷物はお預けですか?」
私:「いいえー、このスーツケースだけですよぉ。良い客でしょ?」


…もし預託荷物があった場合、私の荷物を下ろす必要が出てきて、出発が10分は遅れます。そーゆー意味では間違いなく物分りはいいわ、預託荷物はないわ、良い客だと自分で思う。まあ、だからって言うな…とも思うけどね。


以後、会話形式で書くと冗長になるので、まとめると、とりあえず他のお客様の搭乗が終わってから話をすすめる(もし予約をしているのに来ない客がいれば、もちろん私は乗れるわけで)。明日のフライトは午前9時10分発、協力金は275スイスフラン、ホテルと夕食は手配する等々。


搭乗完了。どうやら私は乗れないらしい。わーいわーい(満席でヒコーキに乗れないことを小躍りして喜んでいるというのもかなりのアホタレだが)。


係:「それでは15分ほどこちらでお待ちいただけますか」


と係の兄さんは消えてしまった。誰もいない搭乗口でぼーっと待つこと10分。搭乗口で仕事をしていた別のお姉さんが戻ってきてくれた。


係:「それではSnigel様、参りましょう」


とさっき通ったばかりの出国審査を逆戻りしてスイスに再入国。今週何回目だ?スイスに入国するの?これは余談だけど、先週から今週にかけてのチューリッヒに滞在中、チューリッヒのあまりの物価の高さに夕食はわざわざドイツに戻って食事をしてたりしたのね。だって、車で30分も走れば物価が半分になるんだもん。んなわけで、多分、7-8回はスイスに入国したんじゃないかな。


この間にいろんな話をした。まず、もしホテルを辞退したら車で20分ほどの距離にあるつい一昨日まで泊まっていた友人宅までの往復のタクシー代を出してくれるか聞いてみた。問題なしとのこと。…ところが、友人、電話に出やしねえ。残念。


ちなみに車で20分というのには自信がある。だって、最終日の朝、出張に出る友人を空港までそらまめ号で送ったんだもん。


さらに、荷物。ここで問題になるのは免税店で買ったジャックダニエル。翌朝の出発となると、100ミリリットル以上の液体の持ち込みは禁止されているから、スーツケースに入れて預けるしかなくなる。で、さっきの「エコノミーライト運賃」とやらが問題になるのよ。これで、預託荷物料金35ユーロを取られたら、俺、文句言うよ。


係:「お話は承りましたSnigel様。そうしますと、翌朝、搭乗手続きカウンターの右手にスーパーバイザーのカウンターがございますので、そちらにお申し付けください。」


そして、乗り換えカウンターへ。この方が、実に親切丁寧な方でして…


係:「それではSnigel様、私が手続きをしてまいりますのでこちらにおかけになってお待ち下さい」


待つこと数分。


係:「お待たせ致しました。Snigel様、それでは恐れ入りますがこちらにサインをお願いできますか」


はいはい。サイン。そして、275フラン分のカードを頂きました。ありがとうございます。ふと思えば、これを先にもらっておけば、物価のくそ高いチューリッヒでの支払いの足しになったのにな。


係:「それでは私はこちらで失礼致します。Snigel様、本日はご協力いただきまして本当にありがとうございました。そちらを右手にお進みいただけますと外に出まして、ホテルのシャトルバス乗り場がございます」


さっきから、Snigel様をしつこく何回も書いてるけど、実際この方、必ず会話の中に私の名前を挟まれた。ドイツ語圏でこーゆー方、たまにいらっしゃるんですよね。


言われたとおりに外に出ると、シャトルバス乗り場はあった。待つこと数分でバス…というかミニバンがやってきた。それに乗るとものの5分ほどでヒルトンホテルに到着。


すでに夕食の時間になっていたので、夕飯…。正直抜いてもいいくらいだったのだが、せっかくバウチャーを頂いたので行きましょう。


…と思った私がアホタレだった。夕食のバウチャーの額は20フラン。夕食はたいがいのものが20フラン以上する。そう、それに飲み物を頼んだ日にはもう自腹。別に自腹でも良いんだけど、ホテルのどーでもいい料理がさ、スイスの激高物価にホテル価格という倍率ドン、更に倍状態の中で、せっかく稼いだ275フランをこんなことに使ったらもったいない気がする…というわけで、セコく、安いパスタとビールで耐える。


翌朝、6時に起きて、朝食をいただきシャトルバスで空港へ。


搭乗手続きカウンターを見回すと…なるほど、一つのカウンターが「スーパーバイザー」と書いてあるわ。だが、そこには誰も居ない。そのとなりのカウンターのおじさんに話しかける。


私:「というわけで、このスーツケースを預けたいんですけど…」
係:「35フランです」


…あなた、私の話、聞いてました?同じ会社の社員さんでもレベルの差ってあるみたいです。


係:「私に言われても困りますよ。これは規則ですから。文句があるなら、スーパーバイザーに言ってください」


え?あんたスーパーバイザーじゃないの?


係:「スーパーバイザーは通路を挟んで反対側におります」


そっちは、ビジネスクラス用の搭乗手続きカウンター。なるほど、ここにも「スーパーバイザー」と書かれた場所があり、おばさまがでんと座ってらっしゃる。


私:「というわけで、このスーツケースを預けたいんですけど…」


一通り話したのだが、怪訝な顔をされている。なんか私の話を理解されていない様子。


私:「昨日は預け荷物はなかったんですけどね、免税店でアルコールを買ったので荷物を預けざるを得なくなったんですよねぇ」
係:「ああ、そういうことですか」


ここでようやく理解してくれた模様。ようやく無料で荷物を預けることに成功する。


そして、保安検査、出国検査を経て再びラウンジ、そして搭乗口へ。昨日ビジネスクラスにアップグレードされる予定だったからもしかしたら…と思ったが、エコノミークラスの席のままだった。スイス航空のビジネスクラスはレベルが高そうだったからちょっと見てみたかった気もする。…とはいえ、座ったエコノミークラスの席はほぼ満席にもかかわらずお隣は空席で足元の広い非常口座席だからいいんだけどね。