ドイツの某鉄道の車両故障の悲劇(上)

とある日曜日(って今日なんですが)。またぞろダブリン出張で空港へ向かう私。


毎度のことながらハノーヴァーからダブリンまで直行便がないから、どこかを経由するハメになる。今回はとりわけ無駄な行程。


行きはミュンヘン経由。帰りはコペンハーゲン経由。地図の上でなぞるとこの形、なんていうか知らんが、➤みたいな形になっている。だいたい、北西にあるダブリンに向かうのにまず南東に飛ぶというのはまさに方向違い。だけど、まあ、これでもダブリンまで着くし。


とりあえず、1時間前に空港に着くように列車に乗る。1時間のパターンダイヤだから、この一つ前の列車の前は2時間前に到着することになる。それはいくらなんでも早過ぎるかなと。この判断は、今回に関して言えば間違いだった。


うちの近所の何もない無人駅から30分強でハノーヴァーの中央駅に着く。そこから30分弱S-Bahn(近郊列車)に乗るといういつものパターン。なお、中央駅ではやはり30分ほど乗換えの時間があるから都合90分ほどの旅程。往復の列車代を考えると車で行ってもいいのだが、新車なので、まだ空港に1週間放置したいとは思えなかったりする。


定刻通りにやってきたディーゼル車に乗ると…日曜日の朝だというのにホリデーシーズンだからかめっちゃ混んでいる。ようやく荷物で2席専有しているおばちゃんを見つけ、隣を空けてもらう。


次の駅でも沢山の人が乗ってきて列車は通路まで人で埋まる。それでも列車は力強く出発した。…したのだが。


次の通過駅あたりで全力でブレーキが掛かる。日本だったら「緊急停車です。おつかまりください」という自動アナウンスが間違いなくかかったと思う。かくして立っている人はおっとっととなりつつも列車は止まる。なんだ。信号停車か?


数分後。ディーゼルエンジンが止まり車内に静寂が訪れる。…もしかして、これ、まずいパターンか?


ようやく車内放送がかかるが、なんとも要領を得ないもの。車両が故障のようなことを言っていたが、いつ運転が再開されるかなどはまったく伝えられず。


しばらくするとエンジンが再びかかる。おっ、運転再開かと思いきや…まったく動く気配はない。おそらく空調のためにエンジンを掛けただけだと思う。


さらに数分後、アナウンス。「代替バスがどーこー」言い始める。それに合わせて気の早い人は立ち上がる…いやいやいや、待ってよ。ここ、駅じゃないよ。代替バスってどーすんのよ。そもそもそんなにすぐに代替バスって手配できるのよ?…と思っていたら、やはり「しばらくお待ちください」と再びアナウンスがかかる。


更に数分後、後続の、でも途中で分岐してハノーヴァーに向かわない別のディーゼル車が停まったままの私達の列車を対向の線路から追い越していく。そういえば誰かが言ってたな。こっちの列車は「上下線」という概念じゃなくて線路が2本あるっていう発想。だからこのようにどっちかの線路がふさがっていても別の線路を使って追い越していく…という芸当ができるらしい(この辺りは、コメント欄に詳しい方が登場するのを期待して待ちましょう)。


そして、更には、次発の各駅停車(私達が乗っているのは種別では「急行」)までもが追い越してゆく。ええ。それははないんじゃないか?


結局列車がそこに停車してから40分後、何がなんだかよくわからないまま、列車から降ろされる。はい、駅でもなんでもない場所で。


そこにホームがないのは当然だが、ハシゴのようなものも用意されていなかった。よっこいしょと降りてください…と。

(よっこいしょ…と列車から線路へ。嵩上げされたホームがないとこんなに列車の床って高いんだなと驚いた)。

(降りた遮断機を無視して踏切を横断する乗客。私は昔読んだ三河島事故の記事を思い出して左右を相当注意深く確認して横断しましたが、そんな神経質な奴は他にはいなかった。ちなみにドアをあける前には「安全確認ができていないのでまだドアは開けられません」とアナウンスしていたので、ドアが開けられたということあ安全は担保されていたんだと思うが)

(駅のホームから。後ろに見えるのは故障車両)


各駅停車のみが停まる無人駅はすぐ後ろにあった。実を言うと、私の自宅事務所の床材、今停まっている場所のすぐ脇のホームセンターで買ったので実は自分がどこにいるかはだいたいわかっていたが、なんだ、駅までこんなに近かったのか。みんなが駅に向かうのでとりあえず駅に向かう。


で、みんな情報がなく右往左往してる。代替バスなるものは影も形も見えないし、ハノーヴァー方向のホームの先には私達の乗った列車が停まったままなので、二面二線式のホームのハノーヴァー側は使えなそう。さて、どっちのホームで待てばいいのかすらはっきりとしない。


私はといえば…ヒコーキの出発時刻まであと70分。この先どうなるか駅の時刻表とにらめっこしつつ考えてみる。


まず、数分後に来た方向とは逆方向の各駅停車が来る。そして、更に数分後には、進行方向と同じ、でもすぐに分岐してハノーヴァーに向かわない列車が来る。


そして、時刻表にはないが、その10分後くらいに次のハノーヴァー行き急行列車が通過する(60分に1本のパターンダイヤ化している)。


さて、あなたならどーされますか?


そもそもここは無人駅。駅員などいない。なので日本だったらよくある「少ない情報に憤り駅員に詰め寄る乗客も見られた」ってのは無理。ただみんな情報がないから右往左往するのみ。ずっとドイツ国鉄の運行情報をスマホで確認し続けているのだが、当該列車は「定時運行」と書かれているのみ。なんの役にも立ちはしない。


まず最初に消える選択肢は、進行方向と同じ方向の、でもすぐに別方向、あさっての方向に向かう列車。これに乗ってもハノーヴァーには着かない。これに乗る選択肢はない。


で、かれこれ1時間この場所にとどまっていることになるから、60分でパターンダイヤとなっているこの区間、当然次の列車がやってくるはず。この状況だから、この無人駅にも臨時停車してお客を拾っていくと思われる。もし、仮に素知らぬ顔して通過なんかした日にゃ、騒動になりそうな気がする。


で、仮にその後続の列車に乗ったとする。その列車が仮にハノーヴァー中央駅に定刻通りについたとする。だとすると、それはヒコーキの離陸時刻の40分前。中央駅からはタクシーでどんなに急いでも20分。つまり、離陸時刻の20分前に到着…すれば御の字だが、そもそも、この無人駅に臨時停車して定刻通りに着くとは思えないし、この駅でまず間違えなく一悶着ある。


というのも、この日記の一番最初のくだり、ご記憶でしょうか。「日曜日の朝だというのにホリデーシーズンだからかめっちゃ混んでいる」。そう、後続の列車にはたぶん乗れない人が出る。そんなことをしているうちにだんだん到着時刻は遅れる。仮に定刻通りに中央駅に着かないとどんなにタクシーを飛ばしても無理。つまり、冷静に判断するとこの案もダメっぽいのだ。


仮にヒコーキの出発時刻に間に合わないとする。残念ながら私の航空券は下から数えたほうが安い航空券(それでもハイシーズン、往復で3万円以上払っている)。乗り遅れたからと次のヒコーキに振り替えてくれるとは思いづらい。しかも、ミュンヘンからダブリンは一日一便しかないから、振替だけじゃなく、経由地変更となる。可能性で言えば、フランクフルト経由になる。


いくら航空会社の金色のカードを持っているからといってそんなことをしてくれるかは疑問だし、何より「君ぃ、ボクは上級顧客だよ。規則など知ったことじゃないからさっさと次の便に振り替えたまえ」なんて威張るような上級顧客リストの代わりにブラックリストに載るようなアホタレにはなりたくないと思っているし、小心者の私にそんなことはできるとも思えない。そして、仮にそうしてくれようとしても、ヒコーキが満席だったらどーにもならない。


じゃあ、反対側の列車に乗ったらどーなるよ。逆方向に進んでもなんにもならない気もする。


さて、私の考えた方法は。長くなったので次回に続く。