私は見た!ドイツでの政治家の買収行為を。

本日はバレンタインデー。そして現在午後7時。Cさんはといえば「女子会」とやらでお出かけ。おかげでこっちはのんびり日記の更新ができる。ああ、ロマンチックですねえ(棒読み)。


ただね、私が散々日本のバレンタインデーについて教えこんでいたので朝食の席で…


…チョコレートもらえました。


なんだろう、この義理チョコのような感じ。なんか小学校の時にチョコを貰えないかわいそうな私を不憫に思い婆さんがスーパーで「チョコ一つ選びいや。買うちゃるでー」と言われた時のことを何故か思い出した。まあ、それが朝の話。


それから二人で街に買い出しに行く。…と言っても車で数分のところにある街の中心のスーパー。そこに着くと、スーパーの前の通りを挟んで両側に真冬なのにパラソルが立ってて、どちら側にも数人の人がいる。しかも、その中の一人のおっちゃんが、車を運転する私ににこやかに笑いかけてくるのだ。なんだなんだなんだ?


助手席のCさんが言うのだ。


Cさん:「あ、マークスだ」
私:「誰?」
Cさん:「マークス。ここの現市長。明日再選に向けての選挙なの」


なるほど、明日選挙の投票日だから日本的に言えば辻立ちしてるのね。


よくよく見ると、パラソルにはドイツの某政党の名前が書いてある。通りを挟んで反対側のパラソルは、どうも対立候補が辻立ちしているらしい。街の中心のスーパーの前に両方が陣取って…ああ、そうか、ここくらいしか人が集まるところはないもんなあ。


Cさん、暇なのかアホなのか、スーパーの駐車場に私が車を停めるやいなや、スーパーには向かわずにマークスの方に歩いて行く。


Cさん:「マークス、げんきー?」


…知り合いかよ。


よくよく聞けば、現市長のマークスさん、Cさんのお姉さんの同級生だかなんだかでまったく知らないわけではないと。しかも、数日前にうちに戸別訪問してきたらしい(日本と違い違法ではない模様)。階下のCさんの両親と話をしただけらしいが。まあ、その程度なら、いくら片田舎の話でもこっちはマークスを知っていても、むこうはCさんのことを認識していない可能性は高いが、Cさんは「いや、マークスは私のことを知っている」と言い張る。…まあ、どっちだろうと関係ないけどね。


マークスはいきなり票の買収行為に出る。Cさんにこれを渡すのだ。


…グミ(一口食べきりサイズ)。


さらには…


市長:「あ、ペンもあるけどいる?」


…どっかの国ではうちわが公職選挙法違反とかわけのわからん話になってたけど、どうもドイツではグミもペンも買収には当たらないらしい。まあ、当たってたらこんな堂々とはやらんわな。


それで、市長と数分立ち話。こんなことを言うと怒られそうだが市長…というよりはただのオッサン。ジーンズ姿だし、もちろんXX党公認市長候補マークスとか書かれたタスキをしているわけでもない。


数分後、スーパーに向かうかと思いきや、Cさん、物好きなのか暇なのか、今度は通りを挟んだ対立候補の方に行くのだ。


対立候補は「ちょっと席を外している」とやらでいなかったが、支持者が熱心に支持を訴え始める。いわく、「現市長はバスターミナルをきれいに作りなおしたけどバス路線の改変をしていないから町内の地区同士のつながりがなくなっている」(よーするに予算の配分がおかしい)とかなんとか。私に言わせれば、「批判するなら対案持ってこいや」と思ったが、そんなドイツ語の能力があるわけもなく。もっと正直に言えば、うちに帰ってその候補の意見のチラシを見て初めて理解した模様。


そんなことを話していたら、別の支持者がスーパーから出てきた。なぜかバラの花束抱えて。このオッサンはあんまり綺麗じゃないピンクのバラを抱えてなんばしょっとね…と思っていたら、そのうちの1本をCさんに渡すのだ。


「今日はバレンタインデーだからねー」


…これもグミやペンと同様に認められる買収行為なんでしょうか。正直さ、グミやペンならいいけど、バラはやめてよ…だって私、バレンタインデーなのになーんもCさんにしてないんだから。


ようやくスーパーに向かい買い物をしてうちに戻る。投票日は明日らしいです。当然私には選挙権はありませんから知ったことじゃないですけどね。


…あ、当然って書いたけど、実は「当然」とは言い切れない部分もある。というのも、アイルランドでは地方選挙に限って日本人の私にも選挙権があったらしいのだ。「らしい」というのは、選挙の数カ月前になると毎回「選挙人登録申込書」みたいなのが毎回自宅に届いていたのだ。それを見ると、外国人であっても地方選挙には投票できるようなことを書いていた。


もっとも、一度も登録しなかったし、自宅に候補者がやってきて支持を求めることもなかったから完全に無視。それなのに、ドイツに来て、選挙権がない状態でこうやって選挙を見るというのはちょっと不思議な気分でした。