あの坂を登れば…カフェがある(完結編)

幻のカフェを求めての完結編です。


3回めの挑戦。三度森に入ります。今回は、カフェに確実に行かせていただきます。このあたり、ケータイの電波が届いてない(それくらいイナカ)。なので、GPSで現在位置はわかっても、地図上でどこにいるかは全くわからない。…なんだけど、分かれ道と思われるところでケータイ開いてみたら、あら、奇跡的に電波が入っている(山の稜線上だったからかもしれない)。ただ…


地図が指し示す方向に、道は…ない。


下草の生い茂る真夏という最悪の季節に来ているだけかもしれませんが、地図上にしっかり表記されている森の中の道のたいがいがこの惨状。ここを進み始めるアホな私。いや、どーみてもカフェに行く感じじゃない…。


ちょうどここに倒木があって自転車を抱えていたら


ガサッ


いや、一瞬だけど心臓が止まったわ。わきの茂みからすごい音がしたの。確かに森のクマさんとかはいないよ。だけどさ、イノシシとかはフツーにいる森です。イノシシとご対面したら自転車で一目散に逃げるけど、自転車は倒木に引っかかってるし、そうじゃなくても生い茂る草のせいでまともに自転車に乗れる状態じゃない。もっとも仮に舗装された道だったとしてもイノシシから逃げられるほどペダルを早く漕げるかどうか…。


そこから出てきたのは…


鹿。


あらかわいい。


こっちを気にはしているものの、まったく逃げる気なし。こっちはこっちで逃げないのをいいことに撮影会を開始。


ちなみになんですけどね、この森、猟は認められています。ただし、ドイツのことです。認められているのは繁殖期前の12月から2月とかだけで、しかも、牡鹿だけの猟が認められているらしいです。つまり、現在は禁猟期間。Cさん父いわく、鹿もそのへんの事情はわかっているとか(鹿に聞いたのかと問い詰めてみたい心境だったが…)。


ブル道を降りると…


ようやくまともな林道に出てきました。あれ?おかしいと思ってGPSを見ると、ぜんぜん違う道に出てきてきたらしい。具体的には、山の稜線にそってある道をたどってカフェに行こうとしてたのに、中腹の平行する道まで降りてきちゃった次第。確かに、ブル道を駆け下りてきたのは明らかに変だった。


なんかこうやって写真を撮ると、森の中で健康的なサイクリングをしてるっぽい。

(逆向きに撮影)


バリケードに出てきた。…ということは…


やったー。森を突っ切るまともな道に辿り着いた。ここまでくれば、カフェまでもうすぐです。


まともな道からカフェへは500メートルほどの取り付け路を走ります。そして、苦節1時間超。3度めの正直ようやく


…カフェが…見えた…。


ビールビールビール…と頭のなかで繰り返される単調な、でも甘美なリフレイン(注:大人の事情でもちろん、ノンアルコールビールです…と書いておかないといけないわけですが)。たださあ、なんか、おかしい。


(ホホホ訳)
お客様各位:
当店は閉店いたしました。
XXファミリー


なんですと?


た、確かに前にこのカフェに来たのはもう4-5年前(しかも車で)。それ以来ごぶさただったよ。だけど、閉店したなんて聞いてないぞ?ただ、掲示板の紙の文字のにじみ具合からして、ここ最近に閉店されたんじゃあなさそう。


あとで、Cさん父に聞いてみると


父:「知らなかったの?もう何年も前に閉店したよ。あそこ25万ユーロ(ざっと三千万円)で売りに出てるよ」


どなたか倉本聰さんの「優しい時間」に触発されて、森の中で喫茶店を開きたいとか思っている方、ドイツでいかがでしょうか。週末は結婚式などでけっこう賑わっていたらしいです。うん。近所にいい感じの森の中のチャペルもあるし、うまく日本人観光客を…じゃなかった誘導して、旅行代理店と組んで「ドイツの豊かな森での手作りの結婚式」とかやれば、案外商売が軌道に乗るかもしれませんよ。ただ、平日は間違いなく閑古鳥です。


閑話休題。カフェがとうの昔に閉店していたことに気がつき戦意喪失した私は、そのまま森を突っ切るまともな道をトボトボ戻ったことは言うまでもない。ペダルを漕ぐ気力など微塵も残っていなかったが、幸いずっと下り坂だったので気がついたら隣村まで戻ってきていた。


まあ、ここからは完全に蛇足なんだけど、私が住んでいる村の過疎化もすごいですよ。そもそも村の中でお金を使える場所がほぼない。なにか必要なら隣町まで行く必要があるのですが、その隣町も怪しい。つい最近まで私が御用達だったレストランもついに閉店。もう週末に出かけられるところがなくなってしまった。それで、新たなレストランを開拓すべく町の中の別のレストランに行ったのだが…あ、この話は次の日記のネタにしよう。