歯医者ははうまっち

私がお世話になっている歯医者さん、なぜかBrayにあります。市内から南へ30キロほど、海沿いのいい感じの街です。ただ、ここってもはやウィックロー郡、つまりダブリンじゃないのよ。遠いのよ。市内からだとDART(列車)で40分ほどかかる。


なんぜそんな遠くまで行くかというと、アイルランドで友人から勧められて初めて行った歯医者さんがここで、信頼できる方だったのでそれから定期的に労を厭わずBrayまで行っているのだ。思えばこの歯医者さんの助言で歯の矯正もしたし、その流れで4本の歯も抜いてもらった。


前回この歯医者さんに行ったのは1年ほど前。なので「定期健診に来てください」というハガキが来たので、電話で予約を取る。


歯医者さんに行くということは、立派な早退、または遅刻の理由になるんだけど、根がマジメな私は(そこっ、なぜ笑う)なるべく会社の勤務時間に影響しないようにと午後5時に予約を取る。で、4時に会社を出てM50(高速道路)ですっ飛ばせば、おおかた30分じゃ無理だけど40分もあればBrayまで着くだろうと踏んだわけ。


ところが。世の中そんなに甘くない。会社一の雑用係を自認する私、大会議室でのマイクの設定まで私の仕事です。で、この日は社長による希望者参加によるとあることの説明会がありまして、それが4時から。他にできる人がいないので私はしょうがなくこの説明会に参加。説明会が終わったのはほぼ4時半。…間に合わねえよ。


社長からマイクをひったくって、そのまま車に乗る。エンジンかけて思い出した。ガソリンがない。そうだった。この前からガソリン入れないとと思っていたのだが、いよいよタンクは空。このまま高速に乗ると途中でガス欠起こすかも。かと言って高速に乗る前にガソリンスタンドに行くために迂回してたら絶対に間に合わなくなる。ええい、ガス欠したらそのときはそのとき。このまま行っちまえ。


高速に乗るまでの道はけっこう混んでいるとにらんでいたのだが、運よく空いていた。そのまま高速に乗る。150キロほどのスピードで…と行きたかったが、混んでいてかつ雨模様だったので制限速度以上では飛ばせず、Brayへ。燃料の針はどう見ても空を指していて、警告灯はつきっぱなし(これはだいぶ前からなんだけど)。高速を降りた時点で4時55分。そこから少なくとも5分はかかるがこのままではホントにガス欠すると高速の出口にあったガソリンスタンドに飛び込む。そして、縦列駐車で歯医者さんの前に車を停めたのは5時5分。遅刻。


…が、ご賢察の通り、アイルランドで5分の遅刻は遅刻にはみなされない模様。15分ほどの待ち時間を経て治療室へ。


日本では、いや、少なくとも私が行っていた日本の歯医者では、大きな治療室に患者が何人も診療台に座らされて、歯科医が診療代を次から次へと忙しそうに回るというのが一般的だった。なんとなく、「アケミさーんご指名で4番テーブルへ」ってな感じの世界を思い出すんだけど。それに対しこの歯科では診療室に入っている患者は一人だけ。いちおう効率を上げるために別の診療室には別の患者が待っているときはあるけど、それでも歯科医がその二つの部屋を忙しそうにいったり来たりはしない。これを「効率が悪い」と考えるか、「一人ひとりの患者を丁寧に診ている」と考えるかはあなた次第。


幸いにして虫歯も何も見つからず、お掃除のみで終了。受付に行くと、ある養子にサインするよう求められる。それは社会福祉局の用紙で、そうだった、ここが5年以上税金を払い続けるとか一定の条件を満たせばいくらか払ってくれるんだった。それにサインすると…


受付:「はい。おつかれさま」
私:「あれ?会計は?」
受付:「社会福祉局に請求するからいいのよ」


あれ?タダ?


どうも現状では、定期健診とお掃除は無料のようです。ただし、受付嬢の言葉を借りると「いつまで続くかわからないけどね」だそーです。ま、相当な金額の税金を払い続けているんだから、これくらいの利益の享受があってもいいよね。