【ドイツの新居改装計画1】ワードローブ購入記(上)

12月の終わりのある日。うちから50キロほど離れた人口25万人ほどのそこそこの都会、Braunschweig(ブラウンシュヴァイク)に向かって車を走らせる私と助手席にはCさん(たぶんこれから頻繁に出てくる私の相方の謎のドイツ人)。向かったのは、IKEA…の隣にあるPortaという家具屋さん。IKEAもPortaも家具屋さんなのだが、集客力向上を狙ってかライバル心を出してかは定かではないが、大型の家具店が軒を並べている。なんでも、Cさん、新しいワードローブが必要なんだと。


もう、鋭い読者さんはご賢察かもしれないけど、10月に車でドイツに来た時、引っ越しも兼ねていたのね。車は服やコンピューターなど満載。書いてなかったけど、ルームミラーも使えないような状態で、結構運転するのが怖かった。普段、意識せずにルームミラーとか、あるは後部の窓から後方確認とかしてるのよねん。それができないとすごく怖いという事実に初めて気がついた。トラックとかいったいどーやって運転しているのだろうと思う。


まあ、それはそうと…


私の家財道具が増える→部屋が手狭になる→じゃあ、寝室を広い部屋にしよう→家を改装しよう→そうだ、ワードローブを買おう


…なんかさあ、どう考えても途中に論理の飛躍があるのだが、本人はそんなことに気がついていない模様。


なんてってってイナカなのだ。そりゃあもうイナカなのだ。私の今の「書斎」の窓から見える風景は


…野原。太平洋ひとりぼっち状態。


こんなわけだから、家は広い。一部屋日本的に言えば、軽く10畳の広さのある部屋が物置として放置されていたので、この部屋を新しい寝室にしようと。別に、それ自体構いませんよ。だけどさあ、「いいよ」と言った瞬間に「部屋の改装」まで認めたことになってしまい、壁紙や床を貼り直し、ついでに(なにがついでなのだかよくわからんが)ワードローブも新調しようと。


で、折よく、クリスマス直後でセールの真っ最中。セール期間なら買ってもいいかな…とか甘いことを考えた私は間違いなくアホタレだった。


話はPortaに戻る。まあ、ワードローブとひとことで申しましてもいろいろございまして。そんな中で、数棹(数え方、「棹」で良いのかしら)を見て気がついた。基本的に、一枚の扉が50センチ、つまり、下の写真では扉が6枚あるから横幅3メートルなわけね。で、見本として展示されているワードローブの基本は5枚扉から6枚扉か。つまり、2.5か3メートルなわけね。


で、ふと気がつくとVisio持ってたのね。使ったことなかったけど。で、Visioで部屋の平面図を描いてみた。

(祝:初のVisioを使った図…ってめっちゃどーでもいい情報)


というわけで、ワードローブを置きたい壁面の長さは3.6メートル。私としてはさあ、3.5メートルのワードローブを置いて、変な隙間を埋めたいわけ。だけど、3.5メートルっていう寸法のもの、ないのよねえ。


あとはさあ、最近の流行なのかは定かじゃないけど、スライドドア式のワードローブが多いんだわ。これ、二人で、開閉時の音や、あとは、経年劣化でドアが壊れるんじゃないかというまったく根拠の無い心配から却下。


そーれにしても、こんなワードローブが4000ユーロとかするんですねえ。ニトリならきっともっと安いだろうなあ。ぶつぶつ。


いや、それを言うなら、お隣のIKEAに行けばいい。実際に行った。IKEAのワードローブはPortaのそれの1/4の値段。1000ユーロしない。だけど、御存知の通り、IKEAの家具は自分で組み立てなければいけない。そりゃ靴箱とか本箱くらいなら作るけど、ワードローブとなると、けっこう面倒な気がする。さらに、どーやって持って帰るのかという問題がある。高さが2メートルを超えるワードローブ、たとえバラバラでも乗用車には乗らない。


バンの貸し出しとかあるらしいけど、店に行って、バンを借りて、返して、そして、車で自宅に戻るとなると、けっこうな距離を走ることになって面倒だし、手続きだって面倒な気がする。待て待て、アイルランドのぺらっぺらの冗談みたいな免許証でバンを貸してくれるかどうかすら怪しい(Cさんにバンを運転することをお願いするくらいなら、自分でリアカー引いて帰るわ…とかひどいことを言ってみる)。配達はけっこう高いらしいし。うーん。


すごくおまけ。Portaで何気なく売っていたベッド。こ、これは…なんか、日本の特定の宿泊施設で似たようなものが見られたり見られなかったりするようなしないような、いや、それは昭和の話なのか自信があるようなないような感じだが、とりあえず、よくは思い出せない。そういえば、ぐるんぐるんするような装置はついていなかった模様。…ん、何言ってんだ、俺…。しっかしまあ、こんなもんが2400ユーロ(軽く30万円超)するってんだから、笑っちゃうよね。


そんなこんなで決め手にかけるまま帰宅。すると、そこに、まあ、なんというか、タイミングを見計らったかのように近所の家具家さんがチラシを投げ込んでいる。


(テキトー訳)今年最後の感謝を込めて、大特価謝恩セール。


で、切り取り線が幾つかついてて、「この券をお持ちの先着150名様にスパークリングワインをプレゼント」「この券をお持ちのお客様に、お茶とケーキをサービス」とかなんとか書いてる。…どーでもいいわ。


ところが、そう思わない人がすぐ隣りにいた。


Cさん:「明日、行きましょうよ」
私:「明日、日曜日だぜ?」


そう、敬虔なカトリックの国のはずのアイルランドが10年ほど前にやめてしまったことをドイツでは未だにやっているのだ。それは、日曜日の休業。基本、ドイツでは店はガソリンスタンドとか駅構内とかの一部の例外をのぞいて日曜日はお休み。…なんだけど、よくは知らんが、年に数回の例外を設けることが出来らしいのね。その例外をこの近所の家具屋さんは、クリスマス後のセール期の日曜日に「スパークリングワインとケーキ」という餌をつけて釣りに来たわけ。そんなわかりやすい釣り針に食いつくCさん。さすがだわ。


翌日曜日。チラシの引換券をきれいにはさみで切り取って(私ならそのまま持ってく)、近所の家具屋さんへ。…近所と言ってもとんでもないイナカの話です。車で20分とかかかります。それでも近所です。


この店、IKEAに比べたら売り場面積は…さあ、1/100もないんじゃないかな。それでもいちおう結構な数のワードローブを展示してるのよねん(その努力は認めたい)。なんか知らんけど、お茶とケーキとスパークリングワインを(ボトルではなくグラスで)いただく私。別に大したケーキでもないし、どーでもいい感満載だったのだが、ドイツ人の皆様はそうは思わないのか、けっこうな数のお客さんがお茶とケーキをもぐもぐやっている。…ここは喫茶店か…ってか、お前ら、ヒマだろ。


うーん、このワードローブ、いいんでね?というのがあったので聞いてみると、別に展示品を売るわけじゃないので、カスタマイズも可能だとのこと。カスタマイズしてもかなり割引されているのでお得だと(←と売る人は必ず言うんだよねえ)。わかった。じゃあ、もう一度部屋のサイズ測りなおして明日来るねと、担当者の名刺をもらって戻る。帰り際に、しっかりスパークリングワインのボトルをいただいてきたことは言うまでもない。


うちに戻って、部屋の寸法を測っていると、やってきたのはCさん父。技術畑でやって来た人らしいのだが、もう定年退職して悠々自適の日々…と書けば響きはいいが、要するに時間が有り余っている。二世帯住宅の1階に住んでいるのだが、私がドタバタやっているのを聞きつけてやってきた。嬉しそうな顔して言うのだ。


父:「なに?部屋の広さを測る?私に任せなさいっ」


もうこうなるとC父を止めることの出来る人は誰も居ない。私が手伝おうとしても足手まといになることは経験上わかっているので放置。忘れるほどの時間が経ってC父が出てきた。私のと比べて


父:「ここが1センチも違っている。甘いなっ」


…私だって本気で測ったわけじゃないんだし、そもそも部屋の中が物置状態だったんだから、無理だよ。もう1センチくらいいいじゃん…。


そののち、C母まで出てきてお茶となる。明日はなぜかC母がついてくることになる。うん。確かに高い買い物になりそうだし、第三者の意見があるとありがたいかも。…と思っていると、C父がもう、全身全霊で「ボクも連れて行って」と言っているのだ。ところが、ここに住んでいないC姉を含めて、男1、女3の家族のここ、とにかく父の立場が弱いのだ。そう、女性陣がすぐに結託するのね。


私は、Cさんの袖を引っ張って…


私:「どーすんの、おとん、あからさまに来たがってるぜ」
Cさん:「ダメ、パパが来たら、まとまる話もまとまらなくなるわ」


…とむげもない。確かにその通りだし、だいたいがたかがワードローブ1棹を買うのにいい年した大人の両親がついてくるというのもあまりに仰々しい。…が、しかし…。


私:「お前、よく考えろよ。もし、連れて行かないで変なの買って帰ったらどうなると思う?死ぬまでブツブツ言い続けるよ。あのおとんは。連れて行ったほうが長い目で見れば正解だと思うぞ」


というわけで、C父も参加することに。


続く(次回完結)。