【ドイツまで車で行ってみた1】いきなり試合終了?

いやはや、いきなり試合終了となるところでした。


今週、5時半まで仕事しなければいけない週だったの。で、ダブリンからフェリーの出るRosslareまでは車で2時間ちょっとかかる。フェリーの出航時間が午後9時半で、出港1時間前までに港についていなければいけないらしい。つまり、午後6時には会社を出ないと間に合わない。そして金曜日だし道が混むことも考慮に入れておくと結構ぎりぎりということになる。


まあ、神は、いるんです。同僚が、自分のシフトと交換して、私は午後4時に終わっていいって。わーい、それなら、4時間半あるから、のんびり高速道路なしでRosslareまで行けるぞっと。


1ヶ月も会社に出勤しない最終日。そんな定時に仕事が終わるはずがない。終わった(というか、「終わらせた」のは午後4時半。まあ、まだ時間はある…と余裕をかませて家を出ようとしたのは午後5時過ぎ。車のエンジンをかけようとした。あれ?ギアがP(パーキング)に入ってない?あ、ちゃんと入ってるじゃん。あれ?エンジンがかからない。セルモーターは回るけどエンジンが点火しない。なんか警告表示は全部ついてる感じだな。


本当に冗談のような話です。これから2000キロのドイツへの大旅行が始まるってその瞬間に今までただの一度も問題の起こったことのないにんじん号(私の車の愛称です)、一世一代の大旅行の前に動かなくなるか?


ああ、これは試合終了だなと思った。だって、今から、AA(日本で言えばJAF)呼んだって、30分とかで修理ができるとは思わない。確か、フェリーは幾らかの変更費用を払えば変更できたな。今度の出港は日曜日なのかな?日曜日に出たら着くのは火曜日かあ。いきなり語学学校の最初の2日を逃すくらいなら、いっそのこと、開始を4週間後にできるか聞いてみるか(この語学学校、毎週スタートというわけにはいかない)。って、その場合、語学学校は変更に応じてくれるんだろうか?…と、いろんな考えが頭のなかをぐるぐるする。繰り返す。こんなことって、ありか?


まあ、最後まで粘ってみようとAA(日本で言えばJAF)に電話しようとするが…財布の中に会員証が入ってない。見送りに来てくれていたひでかすを車に残し、アパートに戻る。急いでいる時に限って会員証が出てこないのはお約束。もう閉まっている時間と思いつつ、行きつけの修理工場に電話しようとするが、こっちも電話番号が出てこない。さっきプラグを抜いたコンピューターの電源を入れて調べようとしたら…ようやくAAの会員証が見つかる。


AAに電話。回線が混み合っていてなかなかオペレーターが出てこない。待ってる時間も惜しいので、地下駐車場に戻る。自動音声が「お待たせして申し訳ありません」を繰り返す中、電波の状態が悪いエレベーターを避けて階段で地下駐車場へ。階段を降りる間にも時間は無情に過ぎるが、電話がオペレーターにつながる気配はない。


地下駐車場に戻ると、ひでかすがセルを回している。おいおい、あんまり無理すると、バッテリー上がるよ。


きゅるきゅるきゅる


きゅるきゅるきゅる


ぶおーん


…あれ、エンジンかかったぞ?


電話の向こう:「AAレスキューサービスです」


あ、電話も繋がった。


エンジンはかかったとはいえ、この状態で2000キロの旅に出るなんて無茶すぎる。夜中のフランスでエンジンが動かなくなったりしたら…俺、どうしたらいいの?


というわけで、エンジンがかかったことは伏せてAAに来てもらおうとするが、早くとも1時間経たないとレスキューは来てくれないとのこと。はい、1時間待ったら試合終了です。エンジンがかかったことをいいことに、ひでかすを置いて近所の修理工場に行ってみる。この時点で午後5時半を回っている。下手したら、金曜日だし、もう閉まってる可能性もあるな。


私の行きつけの工場は案の定閉まっていたが、そこから目と鼻の先の大規模な修理工場はまだ開いていた。エンジンを切った途端にとんでもないことに気がついた。


車の鍵、ひでかすが持っている。そう。最近の車、インテリキーとかいうのが結構出回ってる。キーをイグニッションに入れなくてもいいやつ。あれのおかげで、キーをひでかすに持たせたまま出発するという芸当が可能だったわけ。


ということは、もはやエンジン、かかりません。別の意味で。今から電話して、ひでかすが仮にタクシーで駆けつけてくれたとしても20分はかかる。この1分1秒を争う時の20分は致命的。こうして、自殺点で試合終了…とはならなかった。


今までの人生、運だけで生きてきたと豪語する私、今回、ドイツで万が一鍵をなくしては大変と、合鍵を持参していたのだ。それでエンジンを掛けることに成功…って、あれ、何の苦労もなくエンジンがかかったぞ。


工場の兄ちゃんに窮状を説明すると、バッテリーの残量を調べ始める。…いやいや、セルは回るんだからバッテリーじゃないでしょう。


ひでかすが言っていたのは、点火プラグの異常。その疑問をぶつけてみるが、


整備士:「それだったら、こんなエンジン音じゃないよ」


…うん、確かに、エンジン音、いつもどおり滑らか。


最近の車ってすごいのね。なんかさ、タブレット状の機械を車にとりつけてなんかしてる。


整備士:「この車のエンジン、1.4?1.6?」
私:「あ、これ、日本からの輸入車で、こっちには設定のない1.5なんです」


そう、私のにんじん号(世間一般でいうところの日産ノート)、こっちではディーゼルでは1.5の設定があるらしいが、ガソリンにはない。まあ、余談だけど。


このタブレットでの診断の結果、車にはなんの問題もないという。納得行かない。じゃあ、結局何が問題だったの?


次の整備士さんの一言が決め手になった。


整備士:「もしかして、ここの鍵の表示が出てませんでしたか?」


一生懸命思い出そうとするが思い出せない。あのエンジンがかからなかったシーンを回想してみる。


(回想)車のエンジンをかけようとした。あれ?ギアがP(パーキング)に入ってない?あ、ちゃんと入ってるじゃん。あれ?エンジンがかからない。セルモーターは回るけどエンジンが点火しない。なんか警告表示は全部ついてる感じだな。


ピンときた。それだ。


ギアがPに入ってないとなぜだか知らないが錯覚して、ほんの一瞬イグニッションをアクセサリとスタートの中間位置あたりで止めたのだ。それがどう影響するのか私にはさっぱりわからないが、どうも結果イモビ(イモビライザー=盗難防止装置)が誤作動したのではないかと。そう思えば合点がいく。ということは、だよ、おそらく一度きりの現象だから、心配には及ばない…という結論になるような。


結局コンピューターによる診断でもなんの問題もなしという結果が出た。空気圧も確認してもらい、いくらか聞いてみたら


整備士:「あ、上司がただでいいって」


…アイルランドって国はホントにたまに優しい顔を見せてくれるんですよねえ。でも、まあ、それに甘えてはいけないと整備士さんの明日のお昼代名目で10ユーロ握らせてアパートに戻る。ひでかすから鍵を取り返して再出発。時刻は午後6時を回っている。フェリーの乗船締め切りまであと2時間ちょい。Google大先生による推定所要時間も2時間ちょい。急げっ。


というわけで、まさかの試合終了フラグが立った後に試合続行となる。行くぞ、ドイツ。車載動画(1)に続く…のですが、車載動画の編集、たぶんアイルランドに戻るまで無理です。11月まで気長にお待ちください。次回からは到着後のお話です。