立ち止まった素描絵

水曜日の午後。ふと思い出して、電話をする。


私:「Snigelと申しますー。すいませーん。Seanと予約したいんですけど」
相手:「あー、Snigelさん、あけましておめでとー」


行きつけの美容室への電話。5年だか通うと、美容室に電話をしても、あっという間に話が通じる。もう、私の理想的な形。だってさあ、美容室で「どのようにされたいですか」って聞かれるの、嫌いなの。日本語ですら、なにをどう言っていいかさっぱりわからない。なので、一人の美容師さんとツーカーの仲になってる現在、実に楽。


Sean:「いつもの?」
私:「いつもの」


これで会話完了。もちろん、雑談とかするよ。だけど、めんどくさい髪についての質問がないってのは本当にありがたい。


おっと、話が前後したけど、さっきの電話の続き。


私:「いつでもいいけど、Sean、夕方、空いてる?」
相手:「あら、明日の午後7時にキャンセル出てるわね」
私:「え?7時。あ、木曜日ですもんね。じゃあそれで」


翌日。


午後4時に帰宅した私は、さっと夕飯の支度をして5時に家を出て、5時半頃、車をさっと市内の駐車場に停めて、向かったのは献血ルーム。美容室の予約までの時間つぶしに献血をしようという、偉いんだか、莫迦なんだかよくわからない計画を立てる。とはいえ、移動時間も考えると90分での献血は結構忙しいから、急ぎ足で献血ルームへ。

(参考画像。この日の夕飯。なんちゃってドイツ式)


献血ルームの受付。


「Snigelさん、前回の献血からまだ3ヶ月経ってないですよ。今日は無理です」


えっ?


そうだったのか。勝手に2ヶ月くらいと思い込んでたよ。


とぼとぼと献血ルームをあとにした私。当たり前の事実に気がついた。7時まで1時間半ほど時間を潰さなければいけない。


そうだ、パブに行こう!と思ったがよく考えたら車で街に来ている。飲酒運転するわけにいかないから却下。じゃあ、買い物…と思うが、先週末に買い物してさんざん散財してるから買い物という気分でもない。かくして、街中をてくてく買い物というか、散歩を始める。ホントに久しぶり。


自慢にならないけど、街になんて、めったに来ない。前回街に来たのはいつだろう…って遠い目をして思い出さなければいけないレベル。しかも、用事を済ませたら、さっさと帰るから、無駄に街をぶらついたりしないわけ。自分でも驚いたが、感覚が鈍ってるの。以前だったら、Grafton Streetにある店の場所、眼を閉じててもわかるほどの自信があったけど、Clarksの場所を通り過ぎたり、いつの間にかオープンしてたディズニーストアの存在に驚いたりしているうちに、St Stephen’s Green Shopping Centreに到着。って、ここに車を停めたんだから、1時間ちょいで戻ってきたことになる。


なんて言うんだろ、自分でもびっくりするくらい、心がときめかないというか、なんというか。ただぼーっと本当に時間潰しだけのために街をさまよった感じ。昔はGrafton Streetを歩いていてもこんな感情を持つことはなかった。自分でも「なぜ」かが説明できないんだけど、不思議な感覚だった。


6時45分になり、もうこれ以上時間潰しはできないという状態になり、美容室へ。受付のMarkは私を見ると、あからさまに怪訝そうな顔をする。


Mark:「予約…です…か?」
私:「へっ?」


どうしたことか、私の予約、なかったらしい。って、2週間前とかに予約したのなら、1週間間違えたのかなとか自信がなくなるけど、昨日の話。確かに覚えている。午後7時に予約したよ。って、まさかと思いますけど、この1時間半、無意味に時間つぶししたの?ってか、駐車料金6ユーロはドブに捨てたの?


そんなことを思っていたら、Seanが


「予約入ってないからいいよ」


と言ってくれた。…だよね、予約がキャンセルされたんだったよね。


以上、オチも何もない、日常の光景の素描でした。