【2022日本帰省-13】昭和のやくもに天地の理を知る


翌朝はのんびりと午前8時過ぎに宿を出る。良かった。昨日ぱらついていた雨も上がり青空が広がっている。今日は誰がなんと言おうとこの旅のハイライトです。昨日以上に列車に乗りっぱなしという人によっては至福の時間、別の人にとっては苦痛以外の何物でもない一日。

鳥取に宿を取った理由はただひとつ。砂丘なんかじゃない。砂丘は中学か高校生の頃行った。ただの大きな砂浜じゃないかと思った。…鳥取の人ごめん。

なんだかホームの有効長と実際に走っている列車の長さの違いがすごい。もうブルートレインも走ってないからおそらくホームの半分以上は全く使われていないんじゃないだろうか。こんなところでも地方の鉄道の落日ぶりを垣間見ちゃうのよね。厳しい現実。

それはともかく、鳥取に泊まったのはこちら、あめつちに乗るため。

こちら、あめつちはJR西日本が誇る観光列車。意外とお思いになられる方もいらっしゃるかもですが、私こういう特別な列車に乗るのは初めて。JR九州が例の水戸岡鋭治さんデザインの特別な列車をばんばん運行してるけど未だにゆふいんの森にすら乗ったことがない。それをいい出したら、こんなアホな旅をするのも初めて。

あめつちは中もすごい。

このようにお一人様用カウンター席、二人用テーブル席、4人用テーブル席が用意されていて、私のようなわびしいお一人様も、自分たちの世界に浸りたいバカップルのお二人も、ご家族総出の皆様も居場所があるようにできてます。たぶんこのうざいアクリル板は撤去されたんじゃないかな。これは2022年10月のお話です。

ホームは7両編成まで対応。それより長い列車はもう来ないと閉鎖されている。調べてないけど7両編成の列車も来ないんじゃないかなと思う。

出発前には駅員さんがお見送り。

ありがたい。ありがたいんだけどさ…問題が一つ。2両編成の車内にお客さんは15人くらいしか乗ってないので、小心者の私的にはなんか申し訳ない気分のほうが勝っちゃうのだ。基本的に週末限定で運行のはずなのに、このど平日の月曜日も運行していた。ありがたかったのだが…なんでやねんという思いは拭えない。

よく見ると後藤総合車両所と書いてある。

さらには発車後数分で車両基地横(正式名称を後藤総合車両所鳥取支所というらしい)を通過したのだが、ここでもお見送りが…ホント申し訳ない。一瞬のことだったので写真は撮りそこねた。

マニアさんが見るとこれでグリーン車とわかるらしい。

このあめつちは議論の余地なく乗り得列車。というのも種別が普通列車なのだ。全席グリーン席。つまり、特急料金要らずで普通車グリーン料金を払えばこの列車に乗れる。具体的には鳥取から米子まで所要2時間で1000円。ちょいとそこのお兄さん、この豪華列車に(運賃プラス)1000円で乗れるんですよ。これを乗り得列車と言わずなんという。

ちなみに私は友人にお願いして指定券を買ってもらっていたのだが、この席が大当たりだった。

なんか窓の割り振りが変でしょ。中央がドアで左右の小さいのがもと戸袋の窓とすれば説明がつく。

この列車、もともとは例の昭和の気動車を大改造したものらしいのね(昨日さんざん乗ってたやつ)。なので、窓は昭和の二枚窓のまま。つまり、窓枠が視界を邪魔するはずなのだが、この席に限っては一枚窓。なぜかというとこの席はもともと乗降扉があったのをぶっ潰したから。なので眺めは最高に良かった。

人によっては窓枠が見事に目線と重なると思う。

発車後頂いたのは…おみくじ。いなばのしろうさぎに引っ掛けたお話が書いてあった。もちろんいいことしか書いてない。せっかく旅に出て不吉なことを書かれたおみくじもらうとかありえないもんね。

2時間ほどの旅程だったのだが、要所要所で観光案内や風景を愛でるための徐行運転などがあって飽きない。アテンドさんも近すぎず遠すぎずの距離を保ってくださるのがありがたい。

気になったのは要所要所でBGMとして流れていた列車『あめつち』のテーマソング。これがなんというか、メロディがなんか私の好みと…違うんだよなぁ。口ずさみたくなる感じでもないし(難しい…意見には個人差がありますっ)。気になる人は全編試聴できます

調子に乗っていた私はお弁当を事前に注文しておいた(予約していないと買えない)。

アベ鳥取堂謹製お弁当。その名もあめつち御膳

2100円はかなり強気なお値段。だけどこんな観光列車に乗ったんだから…とお財布の紐が緩んでいた。グリーン料金と合わせて3000円と思うとこの特別な2時間は安いと思うなぁ。ちなみにアベ鳥取堂さんってかに寿司で有名らしいですね。

2両編成の鳥取方車両には売店もありコーヒーなども注文できます。お土産の定番クリアホルダーなどを購入。

途中で変な列車とすれ違った。

途中で変な駅に運転停車した。この駅だったか記憶が定かじゃないけど、鳥取駅を30分遅れで出発した特急にも追い越された。速く移動したい人のための列車ではない。種別は普通列車だし。

途中でディズニーランドの最寄り駅を通過した(私が知っているときはここからバスだったもんっ…っていつの話をしてんだ)。

こうして2時間ほどの思い出に残る旅を終え米子に到着。ここでのりかえ。ちなみにあめつちはこのまま出雲市駅まで運行される。このあと現れる宍道湖を右手に眺めながらの車窓からの風景は素晴らしいらしく、本当はそっちのほうがおすすめらしいのだが…今からやりたいこととの兼ね合いでどうしてもそれを許さなかったのよね。全部乗り通すと4時間かかるのでさすがに…という気もするから、おそらく米子で大半の客が入れ替えになるのだと思う。

米子駅はゲゲゲの鬼太郎推し。長すぎるホームをうまく再利用してると言えるかも。

境港行きの列車もゲゲゲの鬼太郎の特別塗装。乗ってません。乗ったら今日の旅程が崩壊します。

のりかえの特急電車「やくも」が昭和臭をあたりに撒き散らしながらやってきました。これって私が子供のころ日豊線で石を投げたら当たるほど走ってた電車じゃん。平成を挟んでこれが珍しくなる時代になったんだなあ…としみじみするよ(調べたらやくもは381系でにちにんは485系なんだって。違いは…どうせ誰も気にしてないから端折る。気になる人はこの辺を読んできてちょ)。

この昭和の薫りがぷんぷんする381系列車の賞味期限は迫ってまして、もう2024年度中には後継列車の運用が始まるらしい。たぶん私がこの昭和を感じるのはこれが最後の機会。

♪自由 自由 ひどい言葉ね♪

なんでも当時の塗色にしたリバイバル編成が存在するらしいのだが、これに乗るはどうしても旅程が合わなかった。どうしてもというなら、もう1泊増やして旅程を完全に組み直し…は流石にやりすぎなので諦めた。なので私は時刻表と(紙じゃなくてNavitimeだけど)にらめっこしてこのリバイバル編成を一瞬眺める計画を立てた。

その計画のために途中駅の生山で下車することに。特急券は車内で車掌さんより購入。

途中駅にて。あ、イコカ使えるんだ。

ここで問題は解決しません宣言。

ってその注意書きがすごいな。

生山で下車。ちなみにしょうやまと読むらしいです。失礼ながら初めて聞く駅名。

ここがまた閑静な…昔は栄えていたんだろうなぁという駅でして。降りる前から車掌さんのアナウンスがすごい。

「生山での停車時間はわずかです」

なるほど。この駅で降りたのは私だけだった。確証はないけどたぶん乗った人もいなかった気がする。

運転席は高くて気分良さそうよね。

その僅かな時間ながらも発車間際のやくもを撮影してみた。いや待って、後ろの岩山といいとんでもない秘境駅の趣なんですけど。

あーあ、行っちゃった。なんか取り残されたようでちょっと不安になる。

駅前の様子。

…ね、昔は栄えていたんだろうなぁ感がある。そして今は特急電車なのに私以外の乗り降りがない駅。

立派なタクシー乗り場はあるけど待機しているタクシーはいない。

名前がすごい…。

でも、オッサンからレンタカーを借りることはできる。

上を走るのはなぜかこのあたりだけ開通している地域高規格道路。

ここで12分ほどの待ち合わせでこの後に来た各駅停車に乗り換える。ちなみに生山駅の時刻表を見ていただければわかるけど、こんな緩急接続しているのは一日に一度だけ。よくもまあこんなもんを見つけるよ…と自分でも思う。万が一にも次の列車が来なかったりしたらこの中国山地の只中に取り残されるという設定になっている。

見よ。この一日1度のみの奇跡の接続。画像はNavitimeより拝借したものを加工。

お店もあったけど、一度入ったら小心者の私はなにか買わずに外に出ることができそうにないので利用を断念。

おひまな方は、なぜか心がざわつくJR西日本の列車接近メロディでもお聞きください。幸いこうして後続の各駅停車はちゃんとやってきた。

お隣の上石見(かみいわみ)駅で反対方向(岡山方面)から来る特急電車とすれ違いのため数分停車。ここで岡山方面からやってきたのが国鉄色のやくも。

…撮り鉄にはなれそうもないですな(なる気もないけど)。こうしてやくもに乗車し、ついでに国鉄色のやくもを見ることもできました。これをやるためにわざわざ生山で特急を降りたというのはやはりアホのすることですな。

ちなみに、やくもが止まらずにすれ違うのはわかってたから連写モードにしてみたのね。下手な鉄砲も数撃ちゃ一枚くらい良い写真になるだろうと。その結果が上。大失敗したのでGIFにしてごまかすことに。これなら最初から動画にしておいたほうが正解でしたな。

この日のお話は後半へ続く。