バッグを求めて三千里(その1)

11月の初めから2週間ほど日本に行きます。ありていに言って帰省というやつです。前回帰省したのが去年の5月、つまり1年半も前のことなのでかなり久しぶりです。帰省自体間違いなく楽しみなのですが、毎回4-50万円もの金が飛んでいくのが痛いといえば痛い。

えええ?とお思いの方もいらっしゃるでしょうが、往復のヒコーキ運賃が15万円前後、それから国内線が3万円。さらに、日本へ行くときと日本から戻ってくるときの両方向でのお土産が数万円、洋服や書籍などを含む「買い出し」を含めた雑費が20万円(毎回それくらいの金額を両替していきますが、たいがい使い切ってきてしまいます)。


と、まあ、切り詰める気になれば、ある程度は切り詰めることができるかもしれませんが、それでもけっこうな金額がかかることはわかっていただけるかと。


そんな中で、一番悩むのがお土産。…ってかもはやほとんど考えることを拒否してしまっています。面倒くさいから、みーんな食べ物・飲み物で済ませてしまいます。



定番中の定番、ショートブレッドビスケットにチョコレート。待て、それってスコットランド産にスイス産じゃあないのか。どの辺がアイルランド土産なのか…などという至極まっとうなツッコミは不要です。



おやじを含めた酒飲みには酒。ウィスキー。こちらも、アイリッシュウィスキーじゃあなくてスコッチなのが引っ掛かる方もいらっしゃるかもしれませんが、いいんです。飲めば何でも同じです(暴論)。



じゃあ、アイルランド関係は何にもないかといえば、急に値段は下がりますが、こちら、ティーバック。安くて人気が高い。


…と、まあ、まだ出発は2週間も先なのに実は買い物をすでに始めてしまっている私ですが、約1名、お土産を指定してくる困ったちゃんがいるのです。その人は、30ン年前に私を産んでくれた、ある意味一生頭の上がらない人でして、この方、香水を買ってきてと頼んだり、いろいろ頼んできます。いや、香水は楽です。空港の免税店に行けばいいんだから。しかし、今回は無理難題を吹っ掛けてきました。


ハンドバック買ってきて(はあと)。


おかん、かーちゃん、ママ、おふくろ、おっかあ、世には様々な呼び方がありますが、誰が何と言おうと母親、あるいは両親、ちょっとすそ野を広げれば家族は大事にすべきだと思います。こと、長男のくせして家業も継がずに、ヨーロッパ大陸の反対側の端でやりたいようにやっているという事実にいかに厚顔無恥な私でも若干の引け目を感じています。なので、年に一度程度の帰省のときくらい、親の要望を聞きたい…と思ったわけ。で、おかんに聞いてみると…


おかん:「Longchamp, Corch, Furla, Patrick Coxがいい」


…ブランド指定かい!しかも、ブランドなど興味のない私、Corchくらいしか知らんぞ。


慌てて、ネット上で調査を開始。まず、Patrick Coxはアイルランドでの取扱店はなさそう。FurlaはDundrum Town Centre(ショッピングセンター)に店舗あり。CorchはBrown Thomasあたりで売ってそうで、Longchampはわりかしどこででも手に入りそう。


ただねえ、アイルランドでブランド品を買おうってのはもう根本的に間違っているといえる。だってさ、たとえば街中で100人の女性をテキトーに選んでみたときに、ブランド品を身につけている人の数を東京とミラノ、そしてダブリンで比べてみたらダブリンはそりゃもう東京の1/10とかの割合で少ないのではないだろうか。パリやロンドンで見かけるブランドの直営店もダブリンではまったくというほど見かけない。要するに需要がないところに供給はないというだけの話ですな。


が、うちのおかんにとっては息子はミラノやパリもあるヨーロッパに住んでいる。だから、バッグも手に入るに違いない…と思っているフシがある。


いろいろ悩んだ果てに気がついた。


そうだ、ドイツで買おう。


実は先週末にドイツで友人の結婚式がありまして、金曜日の夕方にダブリンを出て日曜日の夜に帰ってくるという小忙しいスケジュールでドイツに行ってきました。乗り換えのフランクフルト空港で何か見つかるんじゃないかと踏んだわけ。


ネット上で下見をしてみると、あるある、Longchampを扱っている店が。乗り換え時間はぴったし1時間。ちなみに、フランクフルトでのルフトハンザでの最低の乗り換え時間は1時間(これを切ると乗り継ぎの航空券を買うことができない)。つまり、通常なら買い物なんてできる時間がないわけ。


で、先週の金曜日、運よく定刻にダブリンからフランクフルトまでのヒコーキは着きまして、さらに到着したのは次のヒコーキの搭乗口のすぐ近所。入国審査を受けて保安検査場を抜けなければいけないものの、15分くらいの時間は取れそうだ。


かくして、急いでLongchampを扱っている店に到着。店に着いたが、あ、ダメだこりゃ。うちのおかんいわく、


おかん:「革製がいい。少なくとも両端は革じゃないとダメ」


いろいろうるさい人だな。もしかして、オレをいじめて楽しんでる?(被害妄想)


ところが、この店にあるLongchampはどれも布製。値段は100ユーロ前後と割安なのだがそれゆえ安っぽいといえば安っぽい。


熱心に見ていると暇そうな店員のおばさんがやってきた。


私:「ロングチャンプのバッグを探してるんだけど」
店員:「ノーノーノー、フランス語ではロンチャンって読むのよ。Pは発音しないのよ(真偽不明)」
私:「それでね、こんなのを探してるんだけど」


…と言いながら私はカバンの中からカウンターでメモを取り出す。サイズから材質に至るまで事細かに書いたメモ。


店員:「…これをすべて満たすバッグはここにはないわねえ。これなんてどう?ずーっと待ってたデザインでようやく入手して、今買わないと2度と手に入らない逸品よ」


…ウソつけ。この妖怪口先オババ。


ヒコーキの時間も迫っていたので逃げるように退散。


ヒコーキに乗って気がついた。


あ゛、MP3プレーヤー忘れてきた。


そう、店のカウンターでリュックサックからメモを開いたときにヘッドフォンとMP3プレーヤーが入った小さなカバンを取り出して慌てていたのでそのまま忘れてきた次第。


皆様からのご提案をお待ちしつつ続く。