DELLに見るトホホなマニュアル対応

うちの会社のコンピュータ、サーバーも含めてほぼ100%DELL社製です。実はうちの会社とDELLの間に特約があって、市価から見るとかなり魅力的な値段で購入していたりするのです。


私、DELLのコンピュータを高く評価してました。コンピュータ本体をバラバラにして見るとわかります(フツーしないだろうけど)。部品の取り外しがユニットごとに簡単にできたりとかケーブル類がきれいにまとめられていたりなど、かなり「頭のいい」作りになっているのです。考えてみると、この会社のウリは「オーダーメイド」。そのためにはレゴのように簡単に組めるようになっていることが必須なのかもしれません。


ところが、どうもこの会社のコンピュータ、壊れやすいんじゃないのかな…という疑いを持ち始めてます。


5年くらい前に大量購入したモデル、これが最近相次いて壊れ始めてます。しかも、不思議なことに同じように壊れるんですよ。


症状:電源を入れると冷却ファンがおっそろしい勢いで回り始める。で、OS(ウィンドウズ)の立ち上げができない。セーフモードでの起動も失敗する。


いろいろ試したのですが、どうやってもダメ。そりゃそうだ、調べたらマザーボード自体に欠陥があるんだから。実はこの記事を読む前に無理やりOSから入れなおしたら復活したのが数台(論理的には全く説明がつかないのだが直ったんだからしょうがない)。


そんでもって、これは先々週のこと。推定年収100k(1650万円)超のシステムディベロッパーの長が私のところにやってきた。あ、言うまでもないことですが、私、この人の年収の半分どころか…空しくなるから削除。なんでも2年落ちのDELLのコンピュータの電源が立ち上がらなくなったとのこと。なるほど、電源のボタンがオレンジ色に点滅してるけど電源すら入らない。急遽、同じタイプの別のコンピュータを持ってきて、そこに彼のハードディスクを移植してその場を切り抜ける。


で、これは月曜日。夜勤をしているコールセンターの同僚からメールが入る。


「コンピュータの電源が入らなくなった」


調べてみると、全く同じタイプのコンピュータが全く同じ症状。コールセンターはホットデスク(「自分の机」を持たずに空いている机を使うシステム)なのでこのコンピュータを撤去。


そして、昨日。よりによって私のはす向かいに座っているこれまたシステムディベロッパーの同僚が


「コンピュータの電源が入らなくなった!」


と言い出す。まさかと思ったが、そのまさか。まったく同じコンピュータが全く同じ症状で壊れてしまった!

死して屍拾うものなし(意味不明)


というわけで、私の机のもとに集められた同じコンピュータの屍たち。…って、お前ら、死ぬにはまだ早いぞ。


DELLのコンピュータには「サービスタグ」という便利なものがついてます。これを入力すれば、DELLのサイトで適切なドライバがダウンロードできたりとか、修理などの保証が受けられます。これをもとに調べてみると、何のことはない、この3台は実は3年の保証期間内。ならばメーカーに引き取ってもらうのが筋でしょう。


というわけで、DELLのテクニカルサポートに電話…しようとしたのだが、サイト上にあるはずの電話番号が見つからない。面倒くさがりの私はDELLのうちの会社の担当者から電話番号を聞き出して電話。


DELLは実はダブリン郊外のBrayという町にかなり大きな事務所を構えてます。聞いたところここにコールセンターもあるそうな。が、ここでさばききれなかった電話は自動的にインドに転送されるそうな。教えられたテクニカルサポートに電話。


(イギリスアクセントでのテープ):「DELLのテクニカルサポートにお電話くださりありがとうございます。サービスタグをお手元にご用意ください。サービスタグの場所がわからない方は1をダイヤルしてください」


すでにサービスタグをメモってある準備のいい私は(当社比)そのまま待つと…聞き慣れない呼び出し音(いやな予感)が数回した後…


(もろにインドアクセントで):「7dk%3(#”fghdfs#0)」


はひ?


いや、これを言うとさ、英語を外国語として話す自分自身の存在を否定することになるから言いたくないんだけど、でもウソは書けないから正直に書く。インド人の英語はさっぱりわからない。


ネィテイブじゃない人の英語がわからない…というわけじゃあない。たとえばドイツ人とかの英語はホントにわかりやすい。インド人の英語が致命的にわからないのはやたらと早口で話すという点に尽きるのではないかと私は勝手に思っている。かく言う私もことイギリスとかに行って相手が私の言っていることが分かってないかも…という時は気をつけてゆっくり話す。すると、相手もわかってくれる。このことから言えることは、早口で話すことはけっして流暢であるとはならないような気がするんだけどどう思われますか?


おっと、話がそれた。ともあれ、聞き返してわかった。こういっていた。


(もろにインドアクセントで):「受付です。サービスタグを教えちょくれ」


なぜ日本語に翻訳したら大分弁なのかは謎だが話を続ける。


私:「FoxtrotのF、JulietのJ…」


あ、このスペルアウトの方法、拙著、「旅の指さし会話帳(51)アイルランド」の88ページに詳述してますので買って読んでださい(宣伝)。


で、電話が転送される。


(もろにインドアクセントで):「7dk%3(#”fghdfs#0)」


…もういいや、話が進まないから相手が何を言っているかわからないことは無視する。以下何度も聞き返したことは省略して…


サポセン:「サービスタグを教えちょくれ」
私:「てか、さっき、スイッチボード(交換手)の人に言ったけど…」
サポセン:「聞いちょらんで」


…何のためのスイッチボードなんだ?


以下、私の名前を聞き、会社名、電話番号、メアドなどを次々と聞いてくる。もうあからさまに分かることは質問が完全にマニュアル化しているということ。日本のファミレスで煙草をくわえている客に「いらっしゃいませデニーズへようこそ。お客様、おタバコはお吸いになりますか?」と聞くようにもう、完全にマニュアル化されているのだ。唯一の問題点としては相手が何を言っているかわからないという点。


実は同僚からすでに聞かされていた。「DELLのサポセンは完全にマニュアル化されているから聞き流していいよ」って。「『XXをしてくれ』って言われたらそれをしているフリをすればいいから」…って(それもどうかと思うのが)。


かくして、サポセンの「トラブルシューティング」というなの質問攻めが始まる。


サポセン:「電源以外のコードを全部抜いちょくれ」
私:(ホントに抜いて)「はい抜きましたよ。電源は相変わらず入りません」
サポセン:「マザーボードからハードディスクのケーブルを抜いてみちくれんかえ」
私:(ホントに抜いて)「はい抜きましたよ。電源は相変わらず入りません」
サポセン:「7dk%3(#”fghdfs#0)」
(何度聞きなおしても何を言っているかわからないのでもうテキトーに)
私:「はい言われたようにやりましたよ(ホントは鼻くそほじくってた)。電源は相変わらず入りません」
サポセン:「明日ん9時から5時のあいだ、そこにおるかえ?」
私:「はいいますよ(ホントは午前8時から4時だけど知ったことかい)」
サポセン:「それではそちらに集配業者が行くけんがでコンピュータを引き渡しちょくれ」


たぶんそう言ったんだと思う。


サポセン:「そしたらなあ、こんあとメールとかでアンケートとかしちから協力しちくるっかえ?」
私:「はいはい(聞いてない)」
サポセン:「それからDELLのサービスに満足しちくれよっかえ?」


「あんたが何言ってるかわからん以外は満足してるよ」とかなり本気で言いたかったがじっと我慢する。ごく正直に書くと、今週月曜日の午後に注文したオーダーメイドの10台のコンピュータは今日(木曜日)に届くという驚くべきスピードでのいい仕事をしてくれているし、うちの会社の担当者、定期的にうちの会社に来てくれているし私のどんな無理難題にも応じてくれている。他にもモニターだとか電話だとかいろんな会社と取引をしているが、DELLの私の信用はトップクラス。


私:「はいはい。満足してますよー」


疲れ果てて電話を切ると、30分以上が経過。せめてもの救いは3台すべてに同じトラブルシューティングを繰り返さなかったことか。それをやられてたらたぶん…いや絶対私はキレていたと思う。


それにしても相手の言っていることがわかるわからない以前に行きすぎたマニュアルってどうよと思う。前にも書いたかもしれないけど日本に行った時にブックオフに行ってぞっとした。おそらく高校生かそのあたりのレジ係がほとんどロボットのように同じような対応をしていたのだ。両手を組んで30度の角度でお辞儀。それからポイントカードはあるかだのもう、見事なまでにマニュアル化された対応をされたのだ。別の店員も全く同じ。そりゃマニュアル化することで均一化されたサービスを提供できるし、社員教育だって楽なのかもしれないけど、私に言わせると不気味。こと、アイルランドではあまりマニュアル化されたサービスというものにお目にかからないのだ。いい意味で泥臭いのかもしれない。と言っても実はKFCとかであ、マニュアル化されているな…と思うことがあるから、もしかすると、マニュアルという魔の手はこの国にも伸び始めているのかもしれない。