【2016年桜舞う日本新婚旅行4】橘倉酒造訪問記

翌日は、まず上野駅へ。そこから乗ったのは北陸新幹線。向かったのは…佐久平。ここに友人が住んでいるので遊びに行った次第。ええ、東北、北陸方面に行くのに東京駅から新幹線に乗るなんてダメです。やっぱり東北・北陸方面への玄関口は上野駅なんです(注:意見には個人差があります)。

(上野駅)


今回の旅の目的は「日本の桜を満喫すること」なのだ。桜が満開になる頃を狙って航空券を押さえた。私の予定では旅の途中のどこかで満開の桜に出会えるはず。

(へっぽこ写真だけど、まあ、私は撮り鉄さんじゃないので諦めてください)


E7系新幹線で佐久平へ。いやE7だったのかW7だったのかマニアさんじゃないから自信がない。これが後ほどネタになる。


佐久平駅。とりあえず平和な地方の新幹線駅。


…お昼時だったので向かったのは、丸亀製麺。全国津津浦浦に支店があるのは知っていたが、「所詮立食いうどん程度の店でしょ」と心のどこかで思っていて行ったことがなかった。ただ、うちの変な嫁がうどんが好きということ、それからまだ時差ボケが残っていそうだからあまり重いものは食べたくない…という私達のたっての希望でうどん屋さんに行きたいと言った結果、友人が選んだのがここ。だいたいが信州長野に行ってそばではなくうどんというのがすでにおかしい。


すまない。丸亀製麺さん。私はあなたのことを誤解していた。茹でたてのうどん、おいしいじゃないか。

(ものすごい量に見えますが、実はものすごく上げ底でした)


腹ごしらえの後、佐久市にある橘倉(きつくら)酒造さんへ。酒造見学です…まあ、黄桜酒造じゃないし、桜とは関係ない。友人が過去に外国人の友人を酒造見学にお連れしてたいそう喜ばれたらしいので、二匹目のドジョウを狙った友人の推奨。


到着。


…ここかい。


いや、橘倉酒造さんを莫迦にしているわけでは決してない。私が勝手に別のイメージを抱いていただけなのよ。学生時代にさ、バイトでツアコンのようなことをしていたことがあって、何度かビール工場の見学に行ったことがあったのね。


ビール工場は生産量も多いから当然広大な敷地に近代的な機械が並んでいるわけで、勝手にそれに近いものを想像していたわけ。そこに現れたのがこれだったのでちょっと想像と違ったというか…よくよく考えれば◯分の地元にあった酒造元さんも、外から見た限りではこんな感じだったような。


中に入ると、なんでも普段の酒造見学は社長さん自らやってくださるらしいのだが、所要のため、別の方お二人が担当してくださるという。
そんなこんなで中へ。


この説明をしてくださった方、普段は見学ツアーの案内などはしない、酒造の責任者の方だという。なので、正直なところ立て板に水の説明…という状況には程遠かった。が、その朴訥な人柄に私は好感を持つ。嫁がいろいろ質問を飛ばすのだが、それに一生懸命答えてくださった。


「あまりお酒の匂いがしない…と言っていますが、こんなもんなんですか?」
「醸造は毎年10月から3月までで、今はやってないんですよね」


…えっ?


実に実に間抜けである。(黄桜酒造のようなよほどの大手でない限り)日本酒は冬の間のみに生産するものらしい。夏子の酒でも読んで予習してから来ればよかった。


説明を伺って気がついたのだが、この日本酒づくりというのは理にかなっている。というのも、歴史的にここで働いている人は農家の人が多く、冬の間に新潟などを含めて出稼ぎに来ていたらしいのだ。夏の間は米を生産して、冬の間はその米を日本酒にするというのは実に無駄がない。


その見学が終わり、今度は蔵へ。…なんのことだかよくわかっていなかったのだが、中に入って合点がいった。


どうもこの蔵、地元の名家らしく、過去に国会議員さんを複数輩出したような家柄らしい。かくして、蔵には福沢諭吉直筆の掛け軸などが所蔵されている(写真は自重します)。そこを見ていけ…という趣向らしい。


この蔵を案内してくださった方が実に楽しい方だった。いきなり聞かれた。


「今日は、どちらから?東京ですか?新幹線に乗られました?We will soon make a brief stop at Sakudaira.」


…嫁が外国人なのを見て、嬉しそうに新幹線の英語アナウンスを始めるお兄さん。


「ボク、鉄道が大好きなんですよ。今日乗られた新幹線はJR西日本のでしたか。東日本のでしたか。」
( ゚д゚)ポカーン。
「もし、このメロディを聞かれたのなら西のです」


と嬉しそうにスマホを取り出して、自分で録音したらしい車内アナウンスを聞かせてくださる。


「聞いてない?じゃあ東のですね」


あるいは人によってはドン引きされるかもしれないこの人。私はこの人懐っこさが大いに気に入った。


このお兄さん、蔵の所蔵品についての知識は残念ながら乏しかった。


「これ、なんて書いてるんですかね」
「ここに書いてあるはず…あれ、書いてませんね。わかりません。ははは」


橘倉酒造さんがこの日記に気がつかれたら出入り禁止になりそうなのだが、正直なところ蔵の所蔵品などどーでもいい。猫に小判、豚に真珠、価値の分からない人にはただの古いものに過ぎないのだ。


「たぶん、これ、開運お宝鑑定団に出したらすごいものばかりなんでしょうね」
「ええ。中島先生がこれは間違いなくなんとかで、最低100万はします、いい仕事をしていますねえ…なんて言われるんでしょうね」(モノマネをしながら)
「ところで、とても大切なことを一つお尋ねしてよろしいですかね」


…所蔵品のどんな難しいことを聞かれるかと軽く身構えるお兄さん。私はわざと一呼吸を置いて…


「明後日、金沢に新幹線で金沢に行くんですが、どの席が『あたり席』ですかね」


…わざとボケてみたのだが、このボケにもこのお兄さん、ちゃんとついてきてくれた。いわく、ハズレ席はないとのこと。


そんなこんなで、お忙しい中、酒造見学をさせてくださったお礼も兼ねて諭吉さん分のお酒を買い、東京まで送ってもらう(気泡緩衝材「プチプチ」できれいに梱包されておりました)。


…橘倉酒造さま。まあ、こんなページをご覧になられることはないと思いますが、もしご覧になられたのならその節は大変にありがとうございました。ファンになりましたよ。