恐怖の燃油サーチャージ

まずはこちらのニュースからどうぞ。


燃油サーチャージ:ANA、7~9月期に最大8千円値上げ
 全日本空輸(ANA)は16日、国際線運賃に上乗せする燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)を7~9月期に最大8000円値上げすると発表した。基準にした2~4月の航空燃料の市場価格が1バレル当たり126ドルに上昇したため。その後さらに上昇し、現在は150ドルを超えている。日本航空(JAL)も値上げする見込みだ。


 ANAの路線別の付加運賃(片道)は、欧米線が8000円増の2万8000円、ハワイ・タイ・インド線が6000円増の2万円、中国線が2000円増の8500円など。


 これまで座席を使わない2歳未満の幼児も付加運賃がかかっていたが、今回から対象外にする。【位川一郎】


(出典:毎日ウェブ)。

 
このニュース、素直に読むとたとえば日本とヨーロッパを単純往復した時に
「燃料サーチャージ」として運賃等とは別に往復56000円がかかる
…ってことになりますね。…って、軽く流すわけにはいきません。全日空のサイトによると、事前型割引運賃の「旅割」で6月の羽田=沖縄間は片道14000円。つまり、この燃油サーチャージだけで東京=沖縄が2往復出来てしまうという計算になります。


もっと言えば、100円ショップなら、おそらく棚の端から端まで買っても無理であろう560品目の大人買い、スーパーの50円の寿司なら、軽く100人分にはなるであろう1120個の寿司が購入可能であります。そんなとんでもない大金が燃油サーチャージとして運賃とは別に消えてゆくというのだから改めて驚かされます。こうなると、日本で
「今年の夏の旅行は海外はやめて沖縄にしよう」
って人が続出しても驚くには値しないですね。


そもそもこの燃料サーチャージの値上げはすでに予告済みのものでした。全日空のサイトによると、「改定時点における直近3ヶ月間のシンガポールケロシン市況価格の平均を用いる」とのことで、今回の市場価格が120ドルから130ドルの間だったので「予告通り」値上げしますよ…ってことですね。その辺は全日空のこのページが詳しいです。


で、上のリンクページをよくよく見ると、最大でも燃料価格は1バレル120ドルから130ドルまでとされています。つまり、それ以上はさすがの航空会社にして予測されてないわけ。なのに、上の新聞記事によると、「その後さらに上昇し、現在は150ドルを超えている」とのこと。上のリンク先の表をよく見ると、1バレルが10ドル上がるたびに4000円の値上げとなっているから、150ドル超で計算すると次回の予測される値上げ幅は…


8万円(片道4万円かける2)


わーい、末広がりの8万円だ!なんて喜んでる場合じゃない。8万円あれば、下手すると日本からヨーロッパの往復航空券が買えてしまいます。つまり、このことから導き出される結論は


もし、アイルランド在住の方が日本に帰省される予定がある、あるいは日本に在住の方が海外旅行をされる予定がある…というのであれば、できるだけ早く航空券を手配したほうが得になるであろう…と言えるかと思います。その根拠:



米ゴールドマン、08年下半期の原油価格予測を141ドルに大幅引き上げ
2008年 05月 17日 05:34 JST


[ロンドン 16日 ロイター] ゴールドマン・サックス(GS.N: 株価, 企業情報, レポート)は16日、2008年下半期の原油価格について、供給がひっ迫するとして予想を大幅に引き上げた。


 エネルギー市場に活発に投資するゴールドマンは、下半期の米原油価格CLc1が平均1バレル=141ドルになると予測。前回予測は107ドルだった。09年は平均148ドルとしている。


 ゴールドマンはリサーチ・ノートのなかで「供給ひっ迫は今後も原油価格を押し上げる主なきっかけになる」とし、短期的見通しは引き続き強気とした。


 バイオ燃料などの代替燃料が登場しているが、原油供給の伸びは2005年の1.8%程度から1%に減速しており、ゴールドマンの08年の世界の国内総生産(GDP)伸び率予測である3.8%を下回っていると指摘。この不均衡を考慮すると、長期原油価格は引き続き上昇するはずだとしている。


 ゴールドマンの09年予測は、ロイター調査の対象である30以上の機関のなかで最も強気な見通しとなっている。

出典:ロイター


ただ、この辺は実際のところ博打の要素が強くて、GSが予測する通り原油価格が上がるかどうかは神のみぞが知る。私のような浅学の徒にはわかりません。しかし、私は賭けに出て、今年飛ぶ予定のあるフライトは実は日本行きも含めてクリスマスまでほぼ全部手配済みです。


実際ね、この石油サーチャージはホントに馬鹿馬鹿しい次元にまで至っているんですよ。たとえば、私がすでに予約している11月のダブリン(フランクフルト経由)ハノーヴァー行きのルフトハンザの運賃は(あ、事前予約なのでかなり安いんです。これでも)


運賃(4区間で)29ユーロ+諸税170ユーロ=計199ユーロ


…って、運賃そのものが5000円しないのに、全体では3万円を超えるってのはいったいどーなってんだよ?(言わずもがな、燃料サーチャージです)だいたいがくされRyanairでもないのに、運賃29ユーロって1区間7ユーロちょい(1200円)の計算になるじゃん。ありえねえよ。ちなみに、この値段は件のRyanairへの対抗価格だとか。要出典ですが。


航空会社はリスクヘッジと言って先物買いでできる限り燃料高騰などのリスクを減らそうと努力しているらしいです。実はね、ここで要注目なのは…そう、くされRyanair。


この会社、「燃料サーチャージは絶対に徴収しない」と公言してます。で、この会社、4月1日付で1バレル68ドルのリスクヘッジが無効になり、どうもえらいことになっているらしいです。

あくまで「燃油サーチャージは徴収しない」と言っている以上、考えられる対応としては(1)運賃やその他を上げるか(2)会社が損失を出すしか考えられないわけで。もちろん損失は出したくない。かと言って、今まで「税込5ユーロセール」とか莫迦なことをやってきてたから、下手に運賃を上がれば当然搭乗率は下がる。搭乗率が下がると株価も下がる…というわけで、ジゴージトクといえばそれまでですが、この会社、難しいかじ取りを迫られそうです。知ったことじゃないけど(とか言いつつ、実は年末までにくされRyanairで5-6回飛ぶ予定が入っているのですが…)。