男子寮ボイラー故障事件(上)

ある日の夕方。ひでかすが言うのだ。


ひでかす:「お湯がなくなった。ブーストして」


…何したの?冬場ならともかく夏場でお湯がなくなるなんてありえないのだが。


まずはうちの給湯の方法、つまりは電気温水器から説明しないといけないな。日本でもある深夜電力料金、こっちにもあって、昼間の半額以下の値段の深夜電力料金のうちにお湯を沸かしておこうという。


ところが、特に冬場になると夜になるとお湯が足りなくなることがある。そんな時に「ブースト機能」ってのがあって、よーするに追加でお湯が沸かせるのね。


翌日になると、やっぱりお湯が足りなくなる。これは何かがおかしい。とりあえず、ブースト機能を使うとお湯は沸く。ということは、タイマーが壊れたのかしら。


どっちにしたって、困った状況には違いない。大家に電話。…と言っても大家じゃない。大家が使っている管理会社の担当者。


留守電。


数時間後。


留守電。


ふむ。夏休みでどっかに行ってるのかな。と、管理会社に直接電話。


「おかけになった電話番号は、現在使われておりません」


…なんですと?


翌々日(なぜ翌日ではないかというと、仕事が忙しくてまったくそれどころではなかった)。もう知り合いの水道業者に直接電話することにする。なぜそんな知り合いがいるかというと、なんのこたーない、会社に出入りしている会社。で、会社内の便利屋さん的な部門で仕事をしている私、こーゆー人たちともけっこう知り合いになるのよねん。


水道業者:「あー、ちょうど(私の務める会社の)別のビルにいるから、10時半頃そっち行くわ」
私:「よろしくー」


ここでふと私は思いついた。そうだ。アパートの管理会社に連絡したら、大家に直接連絡できるのではないだろうか。ややこしいけど、今まで連絡しようとしていたのは、大家が契約している、このアパートの管理会社。それとは別に、このアパート全体を管理している会社がある。そこなら、大家の電話番号くらい知っているだろうと踏んだわけ。


元より、防犯カメラ付きの駐車場から車が盗まれ、しかも、防犯カメラの画像を警察に提出したのかどうかもうやむやにするような使えない会社、期待などしてなかった。まあ、予想通り、大家の電話番号はその場では教えてくれなかったが、折り返しにするとのこと。かかってくることなど期待していなかったが、数分後に本当に折り返してきた。大家の電話番号を入手。かくして、このアパートに住み始めてはや5年、初めて大家に直接電話する。


私:「というわけなんです。直接電話して申し訳なかったんですが、管理会社も担当者も連絡がつかずに困り果てておりまして」
大家:「あの会社、もうなりましたよ。担当者の方は、きちんとそちらにも連絡をして引き継ぐっていう約束になっておりましたが」


…大家さん、そんなことがアイルランドで本当に起こると本気でお思いですか?…あ、あなたもアイルランド人でしたね。ごにょごにょ。


大家:「わかりました。私の知り合いの水道業者を呼びます」
私:「えええ、それ、困ります。もう、実は業者を呼んでしまってまして」
大家:「じゃあ、そっちでいいですよ」


このへんのいい加減さももちろんアイルランド。


この日の私もまた忙しかった。おかしな理由で。数週間前に会社内でよくは分からないが社内で私が表彰されたの。で、その過去に表彰された数人とともに写真撮影に応じてほしいと。なんでも、あとでグループ(アイルランドではない大元の本社)レベルで使うとか何とか…。いつものことながら、人の話を聞いてないのでよくわかってない。で、この写真の撮影のために、会社の「本館」へ(私は本館から数百メートル離れた「別館」で仕事をしている)。本館の指定された場所に行くと…ぶっ、なんか、本格的な機材をセットしたプロっぽい写真屋さんがいるよ(「プロっぽい」とは実に失礼で、本当にプロの方でした)。


で、写真撮影後、別館に戻ろうとしていると、水道業者のバンが後ろからやって来る。そのままバンに乗りうちに帰る。家と会社が徒歩数分という便利なロケーションがなせるとんでもない技。


私の部屋の奥にあるバスルームの更に奥にあるボイラー室。過去には上の階からの水漏れ事故などいろいろ騒動が起きている場所。


私:「…というわけで、タイマーでは動くんですけど、お湯がすぐに無くなるんですよね―」

うちのボイラーの図

(マウスオーバーで解説画像。PC以外で動くかどーかは知らん)


すると水道業者の兄ちゃんはわかりやすく(でもダブリンのすごい訛りで)教えてくれた。なんでも、このタンクの上2/3は水のタンク。一軒家では屋根裏にあるのがフツーなんだそうな。で、下の1/3が更に半分に分かれていて、両方ともお湯のタンクで、深夜電力で沸かす時はこの療法のタンクにお湯を沸かすんだけど、「ブースト機能」を使う時は半分しか沸かさない。だからなくなるのも早いんだそうな。納得。


結局、私が疑った「タイマー説」は間違ってて、タイマーそのものはきちんと作動しているらしい。が、タンクについている「エレメント」が作動していない疑いが強いとのこと。ん?エレメントって何?日本でも「オイルエレメント」とか聞くけど、自分の中で、どんなものか理解してないぞ。エレメントは上の写真でオレンジ色の丸でかこんだものらしいです。


業者:「とりあえず、今日一日様子を見て、この下の『エレメント』が作動しているかどうか明日の朝報告して。お湯を湧かしている時、音がするから」
私:「はーい」


そこで私は思いつくのだ。面倒回避策。


私:「悪ぃけど、大家に状況説明してくれる?」
業者:「いいよー」


大家に電話をし、水道業者に変わる旨を伝えケータイを渡す。そう、こうしておけば、あとあと料金がどうだこうだと問題にならないでしょ。アイルランドで学んだ生活の知恵。


翌朝。


…お湯が、ぜんぜん、ない。


(続く)


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