この点では慶賀に堪えないアイルランドの景気悪化

5月の給与明細を見て気がついたこと。給料は確実に減りました。いや、給料自体は減ってない。手取りでの額が減ったのです。


この前の日記「散るアイルランド」に書いたとおり、アイルランドは未曾有の不景気に襲われて、この不景気を緊縮財政と増税で乗り切ろうとしています。で、問題は増税。一番目のつくところでは、1月から実施された(今までとは別枠の)「所得税」が1%から2%に増税。


1から2とか聞くとたいしたことないように聞こえるけど、今まだなかったものが1になり、さらに4ヶ月で倍になったんだからたまらない。いまいち感覚がつかめんと言う人のために日本円で書くと、例えば年収500万円の人に、突然1月から4167円の税金が余計にかかるようになり、それが5月から倍の8333円に上がったという話。


別のたとえを出すと、毎月税前40万円くらいもらっていた人、大雑把に手取りが30万円だったとして、そこから1万円引かれたらけっこう痛いよね。さらに、健康保険などでも増税が実行されたらしく、さらにそれ以上の金額が引かれてしまったわけですな。当然可処分所得は少なくなり、モノが売れない。景気がさらに悪くなると言う悪循環に陥ってます。


モノが売れないという点で、例えば、一度だけ行ったことのあるKildareにあるアウトレット村、ここから今年になってから私宛のダイレクトメールが半端じゃない数届いています。今月だけで2度。一度は2000ユーロだかが引かれる割引券に、その次は、ハガキ持参で一律2割引セール。考えてみると、価格にうるさくなった消費者が向かうのはディスカウントショップなわけで、そのディスカウントショップがこうやって必死こいてダイレクトメールをばら撒かなければいけないあたりに、この国の景気の悪さを感じたりするわけです。


ただ、物事には必ず二面性があり、この景気後退にもきっといい点があるはず。実は、前回の日記を書いた後で「そうだ、家賃の交渉をしよう!」と思い立ったわけ。…ってかさ、周囲から家賃の交渉をすれば下がるよって言われてたんだけど、なんかめんどくさかったり、忙しかったりで放置したままだったのだ。


で、調べたはおなじみdaft.ie。うちの近所のアパートの家賃も軒並み下がっている。同じアパートは月1000-1200ユーロでの家賃。ちなみに現在の家賃は月1200ユーロなり。80㎡の日本的に言えば2LDKのマンションの家賃が月に1200ユーロとは高い。こと、街まで月ほども遠い郊外の話としては。


さらに調べていくと、なんと、同じ建物内に2LDKが900ユーロで空き家になっている。こりゃ確かに1200ユーロを払うなんてアホだぞ。


というわけで、管理会社にメールを書いてみた。


「拝啓。家賃が高いんで引っ越したいんですけど、どなたに言えばいいんですか。何せ、同じ建物内で2LDKの部屋が900ユーロで貸しに出てるんで」


…ホントは引っ越す気なんてないんですよ。だけど、こう書けば少しは慌てるかなあと思ったわけ。


効果覿面。数時間後に電話がかかってきた。


「ちょっと待って。家賃なら交渉に乗るから。大家と相談するから」


で、それから1時間もしないうちに…


「900ユーロでいい。しかも来月から900ユーロでいいから出て行かないでっ」


おいおい、たったひとつのEメールで家賃が一気に300ユーロ下がったよ。実に慶賀に堪えない話ではあるんだけど、それだけアイルランドの家事情が変わっている、そしてそれだけ経済が悪化しているわけで、空恐ろしい話でもある。もし、アイルランドで借家住まいで最近家賃交渉をしていないと言う人はぜひ試してみましょう。私の周りにも家賃が下がったという人、けっこういますぞ。


このページの旧サイトに「ダブリン住宅事情」をまとめたページがあります。そこを読んでもらうといかに状況が変わったかがわかっていただけると思います。