【実用メモ】アイルランドのグリーンカードについて

よしなごと掲示板からの質問のコピー。回答が長くなったのでこっちに公開。よしなごと掲示板、最近利用が少ないので、皆様のご利用をお待ちいたしております(ってか、なんかリニューアルなり考えんといかんと愚考中)。なお、回答はほかの人にも役に立つように、ご質問者様だけではなくより一般化した回答になっておりますのでご了承くださいませ。さらに、いつものことですが、内容には細心の注意を払っているつもりですが、間違い等があっても責任は持てませぬ。あしからず。間違いその他の指摘・内容の補足等をコメント欄にてお願いします。


(コピーここから)
色々と調べ始めたばかりなので、とんちんかんなことを聞いたらすみません。
外務省に問いあわせたり、アイルランド大使館に問い合わせたりしたのですが、はっきりとわからなかったので、こちらに参りました。
ネットで特定労働許可というものがあると知ったのですが、今、ITの仕事をしていて、経験的とスキルはよほど特殊な分野でなければ問題がないと思います。
そちらで仕事を探す場合、特定労働許可
というのは、仕事を見つけてから降りるのでしょうか?
それとも、仕事を探す前に申請すれば降りるのでしょうか?
仕事をそちらで探す場合の一般的な流れなどありましたら、教えて頂けますか?
あと、家族で移住した場合に、永住権というもの自体がないという場合、子どもの学校などの費用はどうなるのでしょうか?
他の国に永住も考えていて、オーストラリアなどは、永住権があると子どもは現地の子と同じ費用で教育を受けられるとなります。
なかなかそういうことが書いてある資料を見つけることができないので、もしご存知の方がいたら、教えて頂けますか?
長文になり失礼しました。
読んでくださり、ありがとうございます。
(コピーここまで)


特定労働許可証、いわゆるグリーンカードですが、(おそらくすでにたどり着かれていると思いますが)このページがいちばん詳しく、かつ、必要な情報にもリンクされており、更新もされています。もしそうされていないなら、まずご一読を。


ここに同じ内容を翻訳してもただの劣化コピーになるので、ちょっとここでは行間の内容を。


現在アイルランドは就労許可証(Work Permit)から特定労働許可証(Green Cards)への移行の最中です。なので、一部情報に混乱が見られると思います。これから、新規でアイルランドで合法的に働こうという場合は、会社内の移動ビザなどを除いて、就労許可証ではなく特定労働許可証の申請になります。以下、特定労働許可証はより通りのいいと思われるグリーンカードと表記します。


そもそもこの移行の裏にはアイルランドの経済の悪化があると思われます。アイルランドがバブルに沸いていたころ(つまり今から10年位前)、その労働力の不足から、それこそ職種や給料にかかわりなく就労許可証は申請すれば時間はかかるけど(よほどのことがない限り)通る…という状態でした。だから私のような、技能も経験もないやつが就職できたのです。


が、景気がゆっくりと落ち着いてくるにしたがって、人が足りていない職種に限るとか、一定の給与をもらえる仕事じゃないとダメとか、まずは就労許可証のいらない人を新聞広告などで探さなければいけないとかぐだぐだ条件がつくようになってきました。これに従い、就労許可証を申請しても却下されるということが増えてきました。


で、2年前から新規でアイルランドで働きたいという人は、グリーンカードを申し込むように変わったようです(ワーキングホリデー等はここでは省きます)。ただ、この「グリーンカード」という語句に騙されて、オーストラリア等ほかの国と同じような状況を考えないほうが安全です。このグリーンカードはこと、申請についてはあくまで従来の就労許可証の改訂版と考えたほうが間違いないと思われます。


上のリンク先に書いてあるとおり、グリーンカードの申請は年収6万ユーロ(おおよそ800万円)を超える仕事であればどの職種でも可能なのですが、それ以外の年収3万ユーロ(400万円)以上の職種だと、申請できる職種はおそらく比較的に人が足りないと思われる分野を細かく指定されており、かなり限られてきます。かつ「これらの資格があり『そのうえで』実務経験があること」(”or”ではなく”and”)となっているので、さらに条件は厳しくなります。ちなみに、3万ユーロ以下の仕事では申請すら受け付けてくれません。


じゃあ、指定の分野で資格があり、かつ実務経験がある人はどーなると言う話になると思いますが、ここからがさらに厳しいです。このグリーンカードを申し込むためには、まず仕事を見つけないといけません。仕事が見つかって初めてこのグリーンカードを申し込めるのです。


現在の景気の冷え込みから考えると、日本(またはアイルランド外)にいてそこから履歴書をばら撒いても、「履歴書受け取りました。何かあれば連絡します」っていうテンプレメールが返ってくれば運がいいほうで、おそらくなしのつぶてになると思われます。


現実的には観光ビザで来ている間の長くて3ヶ月以内に探すということになりますが、現在空港の入国審査も厳しさを増しており、帰りの航空券の日付ぴったしまでしか滞在権をもらえなかったということもあるようですし、とんでもないストレスの中で、時間との戦いということになりそうです。


アイルランド人ですら就職(転職)に苦労している、失業率は数年前の倍となる二桁に到達したという現在、アイルランド人を差し置いて外国人に仕事を与えるという企業はなかなか見つからないと思います。もうひとつ確実にいえることは、アイルランドにも「コネ」が確実に存在します。コネがない外国人は明らかに不利です。


そして、晴れて仕事が見つかったとしても、グリーンカードが却下される可能性があります。どのくらいの資格とか実務経験があると却下されないのか、この辺は私にはさっぱりわかりません。この辺の博打的な要素というか不確実性も、企業がグリーンカードを必要とする人間を雇用しようとするときに二の足を踏む理由になりそうです。


あともうひとつ、仕事を探す場合は、直接会社に履歴書をばら撒くという方法と、リクルートエージェントを通すという方法があります。求職者側からの利用は無料です(雇用主側が成功報酬として1か月分くらいの手数料を払うのが普通)。ただし、このエージェンシー業も景気の悪化のせいでかなり厳しいようで、私の勤める会社にも何か求人はないかと新規でばんばん電話がかかってきています。そして、冷たくあしらわれています。


ともあれ、仕事探しは一般にはリクルートエージェントを通すことが多いような気がします。実際に仕事探しのサイトmonster.ieなんかに行ってみると、リクルートエージェントからの広告が多いことに気がつかれると思います。


ここで問題になるのはいわゆる「派遣業」。日本と同様最近のアイルランドでは「まずは派遣として採用してよければ本採用」というパターンが多く見受けられます。が、グリーンカードではこの方法は使えません。派遣での採用ではグリーンカードの申請はできないのです。


確かに直接採用でも通常6ヶ月の仮採用期間があるのですが、企業からこの仮採用期間後の本採用、つまり長期の採用(2年かそれ以上)という前提でないとグリーンカードの申請はできません。なので、これがさらに条件を厳しくすると思います。なお、仕事探しについてはアイルランドdeワーキングホリデー―カンペキ!マニュアル決定版
なんかも確かに、ワーホリとは話が違いますがある程度参考になるかと思います(と何気なく宣伝)。


お尋ねの学校についてですが、公立の学校は無料です。が、寄付金名目で金がかかることがあるようです。この辺はちょっと自信がありません。私立はもちろん有料です。


なお、このグリーンカードを晴れて手に入れることができた場合は、その後希望すればアイルランドへの永住の道が今までより比較的簡単に開かれます。どうもこのシステム、技能のある人をふるいにかけて、ふるいに残った人を厚遇するという思惑があからさまに見えますね。


まとめとして、アイルランドはヨーロッパの中でも最も景気の落ち込みが激しく、ここで今、合法的に仕事に就ける外国人は、よほどの実力の主か、よほどの強運の持ち主か、はたまたその両方だと思われます。じっくり検討なさってみてください。もし本気で仕事探しをされるならうまくいくことをお祈りしております。