散るアイルランド

今日の日記、今まであえて避けてきた経済ネタです。なぜ避けてきたかというと、このネタを知ったかして書くと、自分の知識がないことがバレてしまうからです。が、アイルランドの経済がことここまでひどくなるにつけ、どうやらこのネタを避けることはできないようで。


私、大きな声では…いや、小さな声でも…言いたくないのですが某トコロテン大学の経済学部卒で、経済学士…らしいです。が、経済のことなんてなーーーーーーんも知りませんっ。なので、この記事も実はあちこちのサイトを「大いに参考に」しております(誰だっ、「盗作」とか言ってるやつ)。


それらのサイトの日本語のサイトはこの記事の最後に列挙しておきますのでご参考まで。いまどきの大学生とか、こんな感じであちこちのサイトを切り文的に利用してレポート書いてんのかな…なんて思いつつ書いてます。


また、皆様からのおそらくたくさんあるであろう特に細かい数字などの間違い訂正、参考になるサイトの紹介、皆様のご意見などもお待ちしております。リンクを投稿される際は、http://の最初の”h”をはしょらないとスパム投稿としてはねられますのでご注意くださいませ。という前提の上で本文へ。


日本では、民主党の党首さんが疑惑への疑問へ答えることなく党首を辞めるようになったそうで。どっちが政権をとるかとらないかとかの話ばっかしで、日本という国をいったいどうしたいのかが見えてこないことがすごく気になります。


いまさら私があれこれいう必要はないですよね。財政赤字は先進国で最悪の水準の838兆円(2007年末)で増える一方、頼みの年金は破綻の可能性大(だから払わんという人多数)、こんなときに権力争いしてる場合か!とか思うんですけど、やはりどこか「何とかなるさ」という思いが権力者にせよ国民にせよどっかにあるんじゃないかという気がします。


ただ、今、現在、私の目の前でひとつの国が破綻しようとしているのを見ると、ものすごーく背中が寒くなる思いがするのです。どうやら、アイルランドは破滅への道を突っ走っているようです。後述しますが、これを「破滅」と見るか、「元に戻る」と見るかは意見の分かれるところ。


私自身がわかってないこともあるので、書きながら整理するという意味もこめて、話をものすごーく基本的なところから始めます。


アイルランドって、12世紀から800年近くにわたり、イギリスの植民地下にありました。ありていに言って、ビンボーでなーんもない国で、19世紀にはジャガイモが4年間にわたり獲れなくなったことから飢え死に、さらにはアメリカやオーストラリアを中心とする移民で人口の2割だかが減ってしまったなんてとんでもない歴史すらある国。


こういうことを書くと怒られるかもしれんけど、土地が肥沃なわけでもない、何の産業があるわけでもない場所で、さらには植民地として搾取され続けていたわけだからそりゃそーゆーことにもなるわな。


かくして、1949年に独立してからも、欧州内の片隅にある最貧国のひとつとしてビンボー街道まっしぐら。実際、80年代のアイルランドでは1万ポンド(130万円)あればダブリンに家が買えたらしい(同僚から聞いた話。ゆえに、「出典」は明記できません)。


そんな最貧国に変化が現れたのは90年代。テレ東の愛の貧乏脱出大作戦が取材に来たから…ではもちろんなく、80年代のもうどうしようもない最貧状態からの脱出を目指したから。この80年代というのはひどかった。なんと完全失業率は2割ほど。国民の1割が国外に出稼ぎに出ていたような状況。


こりゃあいかんと政府のお偉いさんがIDA(アイルランド政府産業開発庁)という組織を作って企業を誘致。税制の優遇により、ガイシ企業をばんばん誘致したわけ。その効果はてきめん。何せ、第一公用語はゲール語と言いながらもその実ほとんどの国民が英語しか話せないという状況は、ヨーロッパに足がかりを得たいヨーロッパ外の企業、特にアメリカあたりには実に理想的な状態。


さらに、一部で法人税を10年に限り無税にするなどの破格の優遇政策に加えて、人件費が破格に安い(そりゃそうだ、ビンボーな国だったんだから)ということから、1000社以上の企業を誘致に成功。この中には、日本の企業もいくつか含まれている。今どーなったんだろう。情報求む。


かくして、アイルランドにバブルとしかいえない状況が現出。これ、「ケルティックタイガー」と呼ばれる現象。このころアイルランドに来た私。その空前の好景気は、アイルランドから出て行った移民を呼び戻し、さらには中国人やポーランド人をはじめとする外国人労働者が大量流入。


さらに、ユーロに参加したことで金利が下がり、かくしてこんな低金利なら家を買おうと不動産ブームが発生。毎年二桁の割合で住宅の価格が上昇。日本のバブルを目の当たりにした私にはどー見てもバブルにしか思えない状況だった。みんなが買うなら私も買うと、同僚や知人も金があろうとなかろうと家を買い、当然のように家賃もうなぎのぼり。


かくして無理して家を買ったり、車を買ったりとアイルランド人の借金もうなぎのぼり。アイルランドの一世帯あたりの平均の借金額は36,500ユーロ(475万円)。が、月夜はいつまでも続かない。例のサブプライム問題を代表とする世界的な景気後退がアイルランドをまともに直撃。家の値段は二桁に近い下落ぶり(だって毎年二桁の伸びを示してたんだもんね)。


当然の帰結として銀行は経営危機に。去年の暮れに政府はアイルランドの大手銀行六行に55億ユーロ(7150億円)の公的資金注入を発表。ところがその中の銀行のひとつのスキャンダルが発覚したばかりで大問題に。


ご存知のとおり、日本も現在景気後退期の真っ只中。15兆円という気の遠くなるような財政負担を含む補正予算が議論されてます。これ、よーするに「景気が悪いから公共事業などで雇用や事業を創出して景気を上向かせよう」ってことですよね。短期的には景気対策になるかもしれないけど長期的には財政赤字がさらに悪化する結果になります。早い話が、今すぐの対策を優先して次世代にツケを残す政策が果たしていい政策なのかどうかは私のようなアホタレにはわかりません。


が、ひとつ確実にいえることは、アイルランドは日本とはまったく別の方法でこの危機を乗り切ろうとしてます。つまり、緊縮財政と増税。長期的には借金を増やさないという意味ではいい政策なのかもしれませんが、短期的にはぼこぼこに殴られたパンチドランカーのボクサーにアッパーパンチをいれるようなもんです。


具体的には付加価値税(日本の消費税みたいなもん)を0.5%増税。それから所得の1%(高所得者はもっと)に特別税を創設。で、つい数週間前にそれじゃあ足りんとこの特別税を2%(同)に増税。1-4月分についてもさかのぼって徴収するというオマケつき。さらには教育や福祉の切り下げなども盛り込まれている。


今年の初めには、アイルランドの代表的な製品といってもいいウォーターフォードクリスタル社がイギリスの親会社が破綻したことで破綻。まあこれくらいならまだしも、Limerickという町にあったDellの工場が閉鎖、ポーランドへの移転を発表。これによりLimerickの町の失業率は25%まで上がると言われている。

実はDellはアイルランド内の外国企業としては2番目の規模で、アイルランドのGDPの5%が吹っ飛ぶ計算に(おいおい)。これって、豊田市からトヨタが撤退するってくらいのニュースになるんだと思う。この小さな国では。私には4人にひとりが失業者…っていう状況が想像できない。治安などが今以上に悪くなることは想像に難くない。


かくして、いろんなうわさが流れ始める。いわく、「アイルランドはIMFに支援を求めるんじゃないか」とか「アイルランドはユーロから離脱するんじゃないか」とか。このへんちょっと自信がないんだけど、IMFに支援を求めるって、一般家庭で言えば生活保護を申し込むような感じなのだろうか。もちろん生活保護が本当なときにそれを申し込むことは決して悪いことじゃあないんだろうけど、それは自分の家がもうにっちもさっちもいかなくなっていることを内外に認めるようなもんでやはりできれば避けたいのではないだろうか。


で、二つ目のユーロ離脱についてはもっととんでもない話。すでに経済が破綻したことが誰の目にも明らかなアイスランドとアイルランドの違いはユーロを使っていたかどうかが重要な分かれ目だったと思う。ユーロを使っているので吹けば飛ぶような弱小通貨を使っている国よりも通貨は安定する。ところが、反面、自国の通貨の価値を下げるというウルトラ業が使えない。


現在のアイルランドの国際競争力が低下した最大の理由は賃金。何せ、低賃金だったのが魅力だったのにいつの間にかアイルランドはルクセンブルグに次ぐヨーロッパーの中でも2番目に賃金の高い国になってしまった。東欧諸国の6-7倍。そりゃDellもポーランドに行きたくもなるわな。


じゃあ賃金を下げればいい…ってことになるけど、もし賃金を下げるとなると政治家が総スカンを食らうことは目に見えている。そこで、通貨の価値を下げちゃうわけ。例えば今まで1ドル100円だったのが200円になると、今までアメリカで100ドルだった製品が50ドルになる(輸送費とか関税とかを無視したもろ単純計算ですけど)。で、日本でこの製品を作る人がもらっていた賃金は変わらない。ただし、ドル建てで計算すると賃金は半額になっている。まさに数字のマジック。


しかし、世の中そんなに甘くない。人口規模とかから言ってしまうとアイルランドなんて言い方は悪いがイギリスの横についているおまけの島みたいなもん。なので生活のほとんどは輸入に頼っている。通貨の価値が下がると当然物価が恐ろしく上がる結果になる。そんな状態で給料が上がらないとなると、アイスランド同様の地獄絵図が見られることは想像に難くない。なので、このユーロ脱退は起こらない…とは思われるが、そもそもこーゆー噂が出ること自体がヤバいと言ってもいいかもしれない。


現在のアイルランドはとんでもない額の財政赤字(対GDPで10%超、これEUの既定では3%に抑えなければいけない)があり、今年の経済成長率は-8%(日本は0.6%)。4月に発表された増税策は、どうも、80年代の暗黒時代に戻る幕開けじゃあないかと言う人もいる。


最初にね、アイルランドは破滅への道を突っ走っていると書きましたけど、バブルのころアイルランドにバブルに乗ってやってきた私としては、明らかに破滅の道を突っ走ってます。しかし、暗黒の80年代とそれ以前を知る、40代からそれ以上の人にとっては所詮は「元に戻る」だけとも言える。逆にかわいそうなのは、今10代とかでこれから社会に出ようとする世代。おいしいバブルというパーティーに参加できずにその後片付けだけをやらされることになる。


日本でも一時期わが世の春を謳歌した有名な音楽プロデューサーが栄華の時代が忘れられずに詐欺事件を起こした…なんてことがつい最近あったけど、考えてみたらアイルランドも同じかも。もうアイルランドの月夜は終わったんだからと昔のつつましい暮らしに戻ればいいんだろうけど、人間って一度贅沢を覚えるとそれを忘れるって容易じゃないわけで。さてさて、どうなりますやら。


以下のサイトを「大いに参考に」しました(ただし日本語のみ)。


日本の財政赤字について
アイルランドについてのWiki
ジャガイモ飢饉についてのWiki
アイルランド経済についてのWiki(情報は古い)
続出するIMF支援要請-国家財政を揺るがす金融恐慌
法定最低賃金は国により大きな格差(.pdf)
アイルランド経済:宴は完全に終わった
深刻な不況と財政赤字に苦しむアイルランド